2016年12月31日

 三極時代における日本の外交戦略A

 ●米・ロとの二極外交で中国の野望を打ち砕く
 米・ロの接近によって、大きな影響をうけるのが中国だろう。
 ロシアとアメリカのプレゼンスが高まって、中国の地位が相対的に低下するからである。
 バランス・オブ・パワーの力学では1+1は3にも4にもなる。
 これに日本がくわわって、日・米・ロの「トライアングル外交」が成立すると中国の覇権主義にブレーキがかかろう。
 中国は、これまで、軍事力と経済力を武器に、侵略的な対外政策をすすめてきた。
 チベットやウイグル、南シナ海では、軍事力にモノをいわせ、中央アジアやアフリカなどでは経済で影響力を高めるという両刀使いの戦略を展開してきたのである。
 その背景にあったのが、拒否権をもった国連常任理事国の驕りと大国中国に歯向かえる国はないという思い上がりだったろう。
 核を保有する五大強国に戦争を仕掛ける国があるはずもなく、五大常任理事国がホット・ウオーに突入する可能性もゼロである。
「確証破壊」のメカニズムというよりも、核戦争のリスクを冒していいほどの戦争原因が存在しないからである。
 中国が無人の野を行くように勝手放題にふるまうのは、地球上から大規模な軍事衝突の可能性が消えたからで、中国の横暴は、バランス・オブ・パワーの破綻から生じたものだったといってよい。

 中国が軍拡に走るのは、現代の戦争は、実戦ではなく、軍事力比較によって勝敗が決するシミュレーション・ウオー(仮想戦争)だからである。
 この仮想戦争では、軍拡競争に後れをとって軍事的優位性を失えば、事実上の敗戦となる。
 日・米(1位・4位)と中・ロ(2位・3位)の軍事力は、日米側が優位にあるが、それでも、中ロ同盟は、日米同盟やNATOと世界版図を三分する大勢力である。
 米・ロ接近や日・ロの関係強化、日・米・ロのトライアングル外交によってこのバランス・オブ・パワーに変化が生じる。
 日・米・ロの調和路線が中国の覇権主義の抵抗となってくるからで、軍事力や経済力で他国の利益を蹂躙してきた中国流は、国家間の共同利益をもとめる新たなグローバリズムによって、今後、通用しなくなってくる。
 トランプの一国主義は国益主義≠ナ、今後、国益にもとづく国家的連携が新たな国際秩序となってゆくはずである。
 強国の論理や利益を地球規模におしひろげてゆく覇権主義≠ヘ、かつての帝国主義のように、過去のものになりつつあるのである。

 中国の日本にたいする敵対政策は覇権主義にもとづいている。
 覇権をもとめ、仮想敵をつくることによって、国家の求心力を保とうというわけで、中国政府は、これまで日本の戦争犯罪(南京虐殺・靖国問題)などを煽って、反日デモまで工作してきた。
 覇権主義のベースとなっているのが中華思想で、中国と平等な立場に立った外交が困難なのは、中国外交には、伝統的に、君臨と服従以外の選択肢がないからである。
 中国の圧力に屈服せず、経済・軍事の両面で拮抗し、実質的にアジア安保となっている日米安保条約を堅持している日本は、中国にとって、中華思想に馴染まない永遠の仮想敵なのである。
 日・米・ロの新しい外交が開かれても、日中外交にはいかなる展望も見えてこない。
 中国にたいする安易な接近や妥協が、日本外交の障害となる危険性を弁えておくべきだろう。
 中国の友好的な関係にあるのはロシアだけである。
 日米安保条約に対抗するのが中露善隣友好協力条約で、同条約は、事実上の防衛協定(第9条)にして軍事協定(第7条・第16条)である。
 ソ連崩壊後、ロシアと中国の力関係が逆転し、とりわけ経済では、十倍もの開きが生じているが、資源や技術などでは、中国がロシアに依存している。
 欧米から経済制裁をうけているロシアにとっても、中国は重要なパートナーで、中ロ同盟は、北大西洋条約機構(NATO)や日米安保条約に対抗しうるバランス・オブ・パワーバランスの役割をはたしている。
 そのロシアが、アメリカや日本に接近すれば、中国にとって、逆風となる。
 中国政府がしばしば口にする中国封じ込め≠ェ現実のものなってくるのである。

 日本にとっては順風で、米・ロの協調路線が軌道に乗れば、日米安保の枠やアメリカの外交政策に縛られてきた対ロシア外交が、日本独自の戦略にもとづいておこなえるようになる。
 日ロ外交は、幕末開国から日米外交とともに重要な国家戦略で、日露戦争には勝ち、日米戦争には負けた。
 次回以降、日米・日ロ外交の戦略についてのべるが、要約していえば、中国とは距離をおき、一方、米・ロについては、互いに主権と国益に尊重しあえる関係を築き上げるべきことに尽きる。
 その大テーマへゆく前にふれておかなければならないのが、日本側の問題である。
 はたして日本は、アメリカやロシアと対等に外交をおこなえる条件を十分に整えているだろうか。
 否である。
 米占領下からスタートした戦後日本は、経済以外の分野において、独立国としての諸条件を欠いた属国構造をいまだひきずっている。
 憲法上の主権を有さず、国家反逆罪やスパイ防止法をもたない国が、主権の行使である自主外交をおこなえるはずがない。
 在日米軍と自衛隊が、軍事機密や軍事戦略、軍事システムを共有できないのも同じ理由で、同盟国として、重大な軍事機密を盗んでも窃盗罪しか問われないような国といっしょにたたかうわけにはいかないのである。
 外交は「戦闘をともなわない戦争」といわれるように、主権と国益をかけた壮絶な駆け引きで、きわめつけの現実主義である。
 これまで日本は、自主外交を放棄して、対米従属の外交に終始してきた。
 外務省が無能で、政治家が外交に不熱心だったばかりではない。
 外交とは他国と仲良くやることくらいの認識しかない日本には、アメリカのリードがなければ、一人前の国家としてふるまうことができないのである。
 主権を放棄した属国憲法を戴いてきたツケがいまになって重くのしかかっているのである。
 自主外交の戦略を構築する前に、主権国家としての条件を整えておくことが先決されるべきなのはいうまでもない。
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2016年12月22日

 三極時代における日本の外交戦略@

 ●米・ロ相手の二極外交で中国の野望を打ち砕け
 トランプが大統領になる2017年以降、アメリカとロシア、中国の3つの強国が世界版図の分け合う情勢になるだろう。
 この3強国は、アメリカが軍事国家、ロシアは資源国家、中国が覇権国家とそれぞれ特性が異なる。
 そこから3強国の駆け引きがいっそう複雑なものになっていく。
 カギを握るのが中東情勢だろう。
 イランとの歴史的合意(イラン核協議)によって、アメリカが、イランとの戦争を回避したのは、世界版図の上で大きな意味がある。
 イラクにつづいてイランを親米国家にできれば、中東を完全におさえることができ、アメリカは、ロシアや中国にたいして、圧倒的な優位に立てる。
 ロシアにたいしては原油価格、中国にたいしては原油供給の大元をおさえることができるからである。
 ロシアの原油は1バレル当たり50ドルが採算分岐点で、それ以下なら赤字で、一方、大幅に上回るとシェールオイルに太刀打ちできず、需要の頭打ちや原油高にともなうルーブル高というデメリットもでてくる。
 アメリカのシェールオイルや海洋油田も条件はほぼ同じなので、米ロ2国が組んで、石油価格を戦略的に低くおさえているOPEC(石油輸出国機構)に圧力をかけることが可能になる。
 ちなみに、サウジアラビアの石油はバレル当たり18ドルで採算が取れる。
 中国は世界5位の石油産出国だが、産出量の3倍近くも消費する世界2位の消費国でもあるので、ロシアや中東からの石油供給が止まると経済のみならず国民生活までが破綻する。
 ロシアや中東からの石油供給がストップすれば、中国は、ABCD包囲網によって石油の輸入をとめられた戦前の日本と同じ運命をたどることになるのである。

 アメリカとイランとの緊張関係が解けると、中東の反米国家は内乱中のシリア、国内が分断しているレバノンだけになる。
 中東はマスコミがつたえるような反米地帯ではなく、UAE、サウジ、オマーン、カタール、クウェート、トルコ、バーレーンには国内に米軍が駐留している。
 問題はシリアで、イランとイラクのほかロシアと中国などが現アサド政権を支援している。
 反政府軍を支援しているのは、欧米とイスラエル・カタール・サウジアラビアなどだが、アルカイダなどのイスラム過激派やイスラム国もくわわっているので、反テロ作戦を展開中のアメリカとしてはうかつにうごけない。
 ロシアや中国がシリアを支援するのは、イラン・イラクがらみの他、特殊な思惑や因縁もあるが、アメリカ(ネオコン=親イスラエル)を中心とする西側陣営との代理戦争という側面もあるだろう。
 ロシアも中国も中東をむざむざとアメリカの手に渡したくないのである。
 ちなみに、シリア内戦をめぐる中東諸国の対応がばらばらなのは、イスラム教圏内の内ゲバ≠ナ、アサド政権側がシーア派、反体制側がスンニ派である。
 
 アメリカとイラン、トランプとプーチンの接近によって、シリア内戦をめぐる欧米とロ・中の代理戦争という構図が崩れてくる。
 イランとの敵対関係がなくなると、アメリカは、イランの同盟国であるシリアを攻撃する大義名分を失うどころか、シリア国内のイスラム国(ISIL)勢力や反政府武装組織にたいして空爆を展開しているロシアのバックアップに回る可能性がでてくる。
 ロシアの空爆によって、イラク軍が手を焼いているイスラム国の勢いが衰えをみせてきたことから、米軍機がシリア空爆にくわわれば、イスラム国に壊滅に拍車がかかり、米・ロとも反イスラム過激派の世界世論を味方につけることができるだろう。
 サウジアラビアとイランの関係にも緩みがうまれつつある。
 8年ぶりの減産枠組みで合意して、ロシアなどの産油国をよろこばせたOPEC(2016年9月)では、盟主サウジが大幅に譲歩して、イランに限って増産をみとめた。
 サウジアラビア(多数派のスンニ派)とイラン(少数派のシーア派)の対立は宗教戦争で、中東は、宗派という分断線によって、地域全体が敵と味方に分かたれている。
 したがって、サウジとイランの関係が融和されると、中東全体の緊張が緩和されることになる。
 アメリカとロシアそしてイラン、イランとサウジのあいだでデタント(緊張緩和)がすすみ、米・ロによるイスラム過激派(イスラム国)制圧が現実すると、米・ロ・中の三極構造にも大きな変化があらわれる。

 覇権国家中国が浮き上がってくるのである。
 米・ロ接近以前、ロシアは、GDPで10倍近い開きがある中国にたいして劣勢で、2015年、中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)へみずから参加を表明したほどだ。
 中国は、近い将来、アメリカから世界ナンバーワン≠フ地位を奪うことを国家戦略としている。
 中国が尖閣列島や南シナ海、東シナ海へ野心をむき出しにしているのは資源確保(南シナ海は天然資源の宝庫)だけが目的ではない。
 中国海軍・空軍の作戦区域(対米国防ライン)の要衝だからで、潜水艦基地のある海南島は、西太平洋に進出できる南シナ海の深海部につながっている。
 中国の海洋戦略は「第一列島線(九州・沖縄・台湾・フィリピン・ボルネオ島)」を支配することで、米海軍(第7艦隊)に代わって、西太平洋とインド洋に制海権を打ち立てようというのである。
 アメリカとロシアの接近および日米・日ロの二元外交が、中国の国家戦略の妨害になるのはいうまでもない。
 オランダ・ハーグの仲裁裁判所から国際法上の根拠がないと認定(国連海洋法条約)された南シナ海(九段線)の主権宣言と基地建設が侵略行為とみなされて、中国は、国際社会から批判を浴びている。
 中国が、仲裁裁判所の判決を「紙切れ」といってのけたのは、世界で中国に逆らえる国はないという自信からだろうが、米・ロに日本がくわわった包囲網のなかでは、その傲慢も通用するまい。
 次回は、米・ロ・中3極構造の今後と日本外交のありかたを検討してみよう。
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2016年12月12日

トランプ大統領とアメリカ一国支配の終焉C

 ●時代のパラダイムから取り残される日本国憲法
 トランプは「バイアメリカン、ハイアアメリカ(アメリカ制品を買え、アメリカ人を雇え)」と叫ぶ。
 トランプの脱グローバリズムや一国主義は、そこからでてきたもので、トランプがみずから主義や思想を語ったことはいちどもない。
 アメリカは、依然として、グローバリズムにもとづいた覇権国家で、国益のためなら、経済・金融・貿易・為替の分野でいかなる政策もとるだろう。
 トランプの脱グローバリズム一国主義は、理念や価値観にもとづくものではなく、それが国益に適うからで、それ以上ではない。
 今後、世界の潮流になるのがグローバリズムと国益主義の合体である。
 中国の元安や国家が主導するロシアの経済政策が象徴するように、ロシアや中国の一国主義は、軍事力を強化しつつ国家が経済の後ろ盾にまわろうというきわめて現実的な戦略なのである。
 トランプが、アメリカ人の雇用を奪っている移民政策の見直しやTPPから離脱を宣言したのは自国の製造業をまもるためで、元安・円安に対抗する立場から輸入関税を上げるとも公言している。
 その一方で、国防費の上限撤廃を主張するトランプの一国主義は、ロシアや中国と同様、覇権主義と国家資本主義の二元的路線で、グローバリズムの終焉などと呼べる代物ではない。

 開国以来、孤立主義と国際主義のあいだをゆれうごいてきたアメリカが両方の機能を併せもつようになったのは、第二次大戦後である。
 日本やドイツとの戦争のためにつくりあげられた国家臨戦態勢=軍産複合体(MIC)≠ェ発展的にひきつがれて、現在のアメリカの国家構造になっているのである。
 アメリカは国家丸ごと軍産複合体で、国防総省(ペンタゴン)やCIA(中央情報局)と密着している。
 350万人以上の将兵を抱える軍部と国防総省、「デュポン」「ロッキード」「ダグラス」など3万5千社にのぼる傘下企業群、大学や研究室、政府機関やマスコミ、議会までが一体となった軍産複合体はアメリカ特有なもので、アメリカのパワーの源泉である。
 軍産複合体の市場は、世界の火種である中東と中国の拡張政策にさらされている極東で、湾岸戦争の折、サウジアラビアなどはアメリカから大量に兵器を購入し、日本も尖閣列島危機にからめて、オスプレイ17機(3600億円)の購入をきめている。
 トランプがNATOや極東からの米軍退却をちらつかせたのは、米軍の退却とひきかえに兵器を売りつけようというハラで、戦後、GHQから航空機の製造を禁じられた日本は、戦闘機などの重要な軍備をすべてアメリカから買ってきた。
 アメリカが米軍「F35」を凌駕するステルス戦闘機「心神」(三菱重工)の完成に不快感をしめしたのはそのためで、そこに対米関係と日本の自主防衛のむずかしさがある。

 日本人はアメリカの真のすがたを知らない。
 アメリカは、国家自体が軍産複合体というコングロマリットで、国家という一般的な概念ではとらえることができない。
 インドシナからの撤退やデタント(緊張緩和)による軍事費縮減をすすめたケネディ大統領の暗殺(アメリカ政府による真相の76年間封印)や資源外交や全方位外交をすすめた田中角栄の失脚工作(ロッキード事件)の背後に軍産複合体の存在があったのは明らかで、トランプの逆転当選にも、共和党=ネオコンをとおして軍産複合体による工作があったのは疑えない。
 イラク戦争やリビア侵攻を批判したばかりか、ロシア・中国との協調路線を唱え、軍産共同体の怒りを買ったトランプが、突如、国防費の上限撤廃を打ち出したのがその傍証で、軍産共同体の系列にあるマスコミも、以後、トランプ批判をぴたりと止めた。

 アメリカが謀略国家なのは、世界の常識だが、日本にはその認識がない。
 ロッキード事件では、朝日新聞や文藝春秋など日本中のマスコミがアメリカ発のガセ情報に踊らされ、国民は、希代の天才政治家角栄逮捕の報にこぞって喝采を送った。
 もっとも悲劇的なのは、連合国が日本の無力化を、GHQが日本の共産化をはかった占領政策の憲法が、いまだ最高法として君臨している事実である。
 世界が一国主義へむかうなか、国家主権と国体を否定した現憲法ほど有害にして障害になるものはない。
 ところが、現在、自主憲法制定のうごきはなきにひとしい。
 自主憲法制定派にとって、大きな痛手が自民党の変節である。
 自民党は、事実上、護憲派の一員で、改憲は、護憲的改憲にすぎない。
 護憲派が現憲法を金科玉条とするなら、自民党は9条と全文の削除、維新の党が地方自治権、公明党が環境権の上乗せで、改憲論はもっぱら護憲論の土俵のなかで議論されている。

 護憲的改憲派は、憲法96条の三分の二条項をもちだすが、自主憲法制定に必要なのは現憲法廃棄であって、げんに、昭和27年のサンフランシスコ講和条約でうけいれた東京裁判における戦犯判決を、翌28年の国会決議(戦犯処刑は法務死であって戦死者とみなす)でひっくり返している。
 国家主権と民主主義の原理において、国会決議に勝るものはなく、同決議は多数決が原則である。
 鳩山一郎や岸信介らの日本民主党と吉田茂が率いる自由党が合同(55年体制)して以来、自民党の党是は「新憲法制定」と「経済復興」だった。
 このとき鳩山一郎が、総議員の3分の2以上の確保を目指したのは、53年の時点(吉田自由党政権)で、保守全体で三分の二の議席にたっしていたからだった。
 三分の二条項は改憲手続きであって、憲法廃棄と新憲法制定は、国家決議の過半数で可能である。
 自民党が三分の二条項にこだわるのは、自主憲法制定の意思がなく、護憲の範囲内で条文の変更をおこなおうという敗北主義に陥っているからで、改憲を主張する自民党が自主憲法制定の最大の障害になっている。
 今後、世界は、国益という国家エゴと軍事力を背景にした力の論理によってはげしくゆれうごくことになる。
 それがグローバリズムと一国主義が並び立つ新時代のパラダイムである。
 現憲法は、国際主義という前世紀の遺物で、共産主義が人類の理想とされていた時代の妄想にすぎない。
 人類の理想やら恒久の平和やらと念仏を唱えて、世界から取り残される愚を犯してはならない。
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2016年12月07日

トランプ大統領とアメリカ一国支配の終焉B

 ●グローバリズムと一国主義の兼ね合い
 トランプ新大統領の登場によって、グローバリズムから、一国主義の時代に移ってゆくという論調が目立つ。
 大きなまちがいで、アメリカの世界戦略が変更されても、グローバリズムという世界の潮流に変化が生じるわけではない。
 大航海時代の海外侵略から大英帝国(グロブブリテン)の世界支配、列強による植民地政策、国際共産主義による革命国家の誕生、第二次大戦後の冷戦とアメリカ一極支配、ITによる地球規模の情報ネットワーク構築、大国による世界の分割支配など、グローバリズムは、形を変えながら、いまもなお世界史の主軸なのである。
 終焉したとされるグローバリズムは、他国の伝統や慣習、ルールや価値観と衝突したアメリカの世界戦略のことで、トランプ大統領の登場は、これまでのアメリカのそのやり方が破綻したことを意味している。
 グローバリズムが幕を下ろしたのではなく、文明や価値観、経済原理を他国におしつけてきたメリカ的なやり方が通用しなくなっただけの話である。
 大統領選挙で、トランプが製造業の復活と雇用問題を争点に絞ったのは賢明で、アメリカ人は、アメリカの活力を奪った新自由主義と自由貿易にうんざりしている。
 ニクソン・ショック(ドルと金の交換停止)とプレトン・ウッズ体制が破綻した1971年以降とりわけ1980年代にはいって、アメリカ経済は、投資効率の高い国際金融へ移行していった。
 背景にあったのが新自由主義で、金融の国際戦略をささえたのがグローバリズムだった。
 1991年にソビエト連邦が崩壊した後、圧倒的な軍事力を背景にアメリカが世界の画一化(アメリカニゼーション)をおしすすめ、基軸通貨ドルの下で世界を金融支配するにいたった。
 その結果、生じたのが「中間層の没落」とアメリカ製造業を沈滞させている「つくらざる経済」だった。
 金融経済では、資産が特権階級に独占される一方、製造業が空洞化するからである。

 グローバリズムには、政治的局面と経済的局面があって、前者が国家権力の世界化(グローバル化)なら後者が「ヒト・モノ・カネ」の流れを国際化するグローバリゼーションで、両者は、通常、一体化している。
 グローバリズムと対立的にとらえられている一国主義も、グローバリズムと相補的な関係にあって、国家は、すべて、国益主権と世界戦略の両方の志向を併せもっている。
 その極端なケースが戦争で、アメリカは、戦後、朝鮮戦争をはじめベトナム戦争、湾岸戦争、アフガニスタン戦争、イラク戦争、紛争までふくめると百件以上の戦争をひきおこし、現在はIS(イスラム国)やアルカイダらイスラム過激派と交戦状態にある。
 革命の輸出もグローバリズムで、米ソ冷戦は、共産主義と資本主義がにらみあったグローバリズムの衝突であった。
 グローバリズムの背後にあるのが一国主義とイデオロギー、経済である。
 ソ連邦が崩壊して、共産主義が滅び、イデオロギーの対立はなくなった。
 一国主義にもとづく軍事衝突も、軍事力の増強や高度化によって、不可能になった。
 冷戦時代のものだった相互確証破壊の論理がはたらき、どちら側も手を出すことができず、いったん開戦となれば、世界がまきこまれて、勝者なき戦争になるどころか、破壊がグローバル化されることになる。
 米ソ冷戦がアメリカの勝利となったのは、軍事力や資金力、地政学的条件や同盟関係などのシミュレーションによって、戦火を交える以前に勝敗が決したからである。
 ちなみに日本の防衛力は、軍事予算が日本の15倍のアメリカがふくまれているので、シミュレーション戦において、ロシアや中国を寄せつけない。
 戦後、日本が平和だったのは、相互確証破壊という安全弁を放棄した九条があったからではなく、日米安保条約があったからである。
 グローバリズムの衝突がおこりうるのは、経済分野だけである。
 そこに、TPP離脱とロシア・中国との対話路線を掲げたトランプの狙いがあったろう。
 次回は、経済戦争の主軸であるアメリカの軍産複合体とロシア・中国の国家経済のハザマで、日本がいかに国益と独立をまもっていくかについてのべよう。
posted by office YM at 07:16| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする