2017年04月26日

 北朝鮮危機と米中の新時代A

 ●金正恩が日・米・中・韓に対抗できる理由
 フィリピン海でおこなわれていた海上自衛隊(護衛艦「あしがら」と「さみだれ」)との日米共同訓練を終えた原子力空母カール・ビンソンが、朝鮮半島に向けて北上を開始、先立って、戦略ミサイル原潜ミシガンが韓国の釜山に入港した。
 一方、北朝鮮は、同国東岸の元山市近郊で大規模な実弾演習をおこなった。
 北朝鮮人民軍総参謀部の「ソウルの火の海にする」という脅しを裏打ちする軍事デモストレーションで、ソウルを射程に収める旧ソ連製の改造型70ミリ自走砲などのロケット砲を千門近く所有する北朝鮮砲兵部隊は、最近、新たに1万発の砲弾を追加配備したという。
 これが金正恩の強気の根拠で、ソウル壊滅のリスクを冒して、米韓が攻めてくることはないと踏んでいるのである。
 事実、アメリカ歴代大統領が北朝鮮への軍事攻撃を控えてきたのは、中国にたいする配慮のほか「ソウルの火の海に」という恫喝に屈してのことで、韓国軍には、平譲まで到達するロケット砲が一門もないばかりか、地下壕で固めた北の重要拠点に手も足も出ない。
 韓国が、親北派の大統領候補(文在寅/ムン・ジェイン)を立てたのは難を逃れようという魂胆からで、北の脅威どころか、矛先を日本に転じて、従軍慰安婦問題をむしかえそうとしている。
 日本総領事館(釜山)の前に新たに建てられた慰安婦像にひざまずく文在寅の事実上の公約は「平譲訪問」と「THAAD(超高高度防衛ミサイル)配備の撤回」で、中国は、反日・親北派の文候補を熱烈に支持している。
 米・韓の足並みが揃わないなか、カール・ビンソンを中心とする第1打撃群が朝鮮半島や中・韓・朝がむきあう黄海へ接近するには中国の了解がなければならないが、万が一、トランプが独断で出撃を命じれば、中・朝関係が決定的に断裂する。

 都内で6者協議の代表者(日・米・韓)会合が開かれたほか、日本と中国の代表者(外務省金杉局長/武大偉・朝鮮半島問題特別代表)が北朝鮮への石油の禁輸措置を協議した。
 中国が石油供給を中止すれば、北朝鮮経済は短期間のうちに破綻するといわれているが、おおいに疑問である。
 国連安保理決議にもとづく経済制裁がつよまるほど、北朝鮮政府の資金力が高まって、一発で数十億円(中距離弾道ミサイル・ムスダンの国際的相場3000万ドル/約33億円)かかるサイルの発射実験をくり返し、ミサイルとは桁ちがいにカネがかかる核開発も順調にすすめられている。
 最近では、非政府系の経済活動が目に見えて向上し、飢餓死が絶えたどころか、トンジュ(金の主)と呼ばれる富裕層まで出現している。
 理由は「密輸と闇経済」で、中朝・中ロ貿易の大半が密輸である。
 北朝鮮は、国連加盟国192国のうち166国と国交をむすび、交易関係をもっているが、数字にあらわれるのは数パーセントで、大半が密輸や闇取引である。
 ちなみに北朝鮮の無煙炭の輸出は公的資料(年間1000万t)の同程度以上が密輸出され、同規模のスケールで密輸入がおこなわれている。
 ドル箱は、中国とロシア、日本で、ロシア(ウラジオストク)から北朝鮮の羅先港にもちこまれる原油(M100)は北朝鮮にとって原油にひとしい。
 ロシアのM100からガソリンや航空機のジェット燃料を抽出できる技術が完成しているからだが、黄海を往来する中朝の密輸貿易船と同様、これも経済制裁外である。
 偽ドルや麻薬の国外持ち出しや不法送金もおおっぴらで、日本からのパチンコ送金や朝銀を救済した公的資金導入(1兆3千億円)も金王朝の金庫に納まって、核開発の資金に化けた。

 1991年のソ連崩壊後、社会主義諸国からの支援が途絶して、配給制度をとっていた北朝鮮経済が崩壊した。
 97年に韓国に亡命した金正日の側近、黄長Y(ファン・ジャンヨプ)元朝鮮労働党書記によると配給停止によって「200万人以上の住民が餓死した」という。
 このとき、脱北した北朝鮮人の一部が、中国で食糧や物資を調達して、中朝国境で商売をはじめた。
 これが北朝鮮の闇市場で、現在、国内の経済活動の8割以上を占める規模にまでふくれあがっている。
 取り締まるどころか、金正恩体制が自力更生が奨励しているのは、国民を豊かにする政策を放棄できるからで、そうなれば、金正恩が国家予算をすべてすきなように使える。
 韓国から流れ込む資金(経済特別区収益や市民団体の支援など)や出稼ぎの上納金、在外北朝鮮公館から献納される「忠誠資金」、武器密輸などでえられた利益に加え、無煙炭などを輸出した代金がそっくり金正恩の金庫に入る。
 北朝鮮王朝を支えているのは、金日成時代は労働党員300万人といわれたが、現在は、軍や秘密警察などの権力機構を牛耳る中枢部とその周囲を固める数万人の幹部、平壌の高級住宅地に住むエリート集団ら合わせて十万人ほどといわれる。
 ミサイルを実験をくり返し、核開発をすすめているのは、約十万人の狂信的王国で、オウム真理教が国家になったようなものである。
 王国外にはじきだされた国民は、強制収容所と残虐な公開死刑に脅え、餓死を免れるため必死に経済活動をおこなっている。
 ちなみに亡命した黄長Yの一族3000人は強制収容所に収監され、多くが餓死したという。
 金正恩委員長は、後見人とされた張成沢(国防委員会副委員長)ら100人以上を側近や親族ともども公開処刑で粛清しているが、張成沢の場合、飢えた百匹の猟犬に食い殺させるという凄惨なものだった。
 北朝鮮では、公開処刑の見物が国民の義務で、残虐な公開処刑を見た国民のなかから善政をもとめる声などでてくるはずがない。
 原子力空母カール・ビンソンに随伴する巡洋艦や駆逐艦、攻撃型潜水艦からトマホークが発射された瞬間、米中関係に想定外の変化がおこる。
 逆にいえば、中国のOKがでなければ、カール・ビンソンは張子の虎なのである
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2017年04月20日

 北朝鮮危機と米中の新時代@

 ●ありえない米の北朝鮮攻撃
 朝日新聞が米の北朝鮮攻撃は「核戦争勃発」の危険性をはらむと報じた。
 北朝鮮国連代表部のキム・インリョン次席大使の「米国の北朝鮮侵略という無謀な動きが深刻な局面にたっした」「北朝鮮はどんな形態の戦闘にも応戦する準備ができている」という会見(国連本部)を引用したもので、北朝鮮の対米非難を借りて、原子力空母カール・ビンソンを派遣したトランプ米政権が危険な賭けにでたかのようにいうのである。
 テレビも、連日、原爆実験や大陸間弾道弾(ICBM)の発射を機に米軍が出撃するかのごとくつたえ、その日をXディ≠ニ称している。
 北朝鮮攻撃がトランプの決断いかんにかかっているかのようにつたえるのは誤りで、アメリカが、朝鮮戦争という爆弾の導火線に火をつけかねない北朝鮮攻撃にふみきることはありえない。
 朝鮮戦争は、現在、休戦中で、米・韓と中・朝は、それぞれ軍事同盟をむすんでいる。
 経済人のトランプが、米・韓と中・朝による全面戦争のリスクを冒すはずがないように、中国が、手に余した北朝鮮をアメリカにゆだねる可能性もゼロである。
 チベット・ウイグル・内モンゴルなど内陸部を征服した中国が、海洋進出の絶好の基地となる朝鮮半島を手放す選択肢はありえないからである。
 朝鮮半島は、日清・日露戦争という二つの前例があるように、日・中・ロにとって地政学上、きわめて重要な要衝である。
 とくに、海洋進出を狙う中国にとって、朝鮮半島を支配下におくかアメリカに奪われるかでは、死命を制する大問題となる。

 中国のテレビ局(CCTV)などによると、中国の王毅外交部長(外相)は北朝鮮情勢をめぐって、ロシアのラブロフ外相と電話会談をおこなったという。
 ロシアと対話の姿勢をみせたのは、3強国(米・中・ロ)のバランスをとるためとアメリカを牽制するためで、北朝鮮問題へアメリカの介入が一線をこえると中国にとってきわめて不都合なことになる。
 最悪のシナリオは、米軍による北朝鮮の軍事制圧で、その上、米・韓主導で南北統一がおこなわれるようなことになれば、朝鮮半島は、中国の海洋進出の要衝どころか、咽喉元につきつけられたナイフになる。
 南北統一をタテマエとする韓国も米軍による軍事制圧を望んでいない。
 北朝鮮へ軍事攻撃をおこなえば、韓国にむけられた大砲・ミサイルが一斉に火を噴き、ソウルが火の海になるどころか、射程内の約2000万人に被害がおよぶ可能性がある。
 南北の統一も、ドイツ統一後、西ドイツが東ドイツの負の遺産を抱え込んで十年以上、経済の停滞に苦しんだ前例もあり、現在の韓国には荷が重過ぎる。
 金正恩は、国民の犠牲とひきかえに、アメリカに軍事威嚇をおこなっている。
 挑発にのったアメリカの攻撃で北朝鮮が壊滅すれば、1000万人以上の難民がでるばかりか、飢餓や内乱で、同規模の死者がでる可能性がある。
 そうなれば、国際的批判が一斉にトランプ米政権にむけられる。

 トランプと習近平が接近した理由がそこにある。
 中国の力で、金正恩に政策転換をおこなわせ、北朝鮮を六カ国協議のルールに従わせようというのである。
 ところが、金正恩は、習近平主席にいちども会っておらず、中国側が会談を申し入れても黙殺している。
 金正恩は、北朝鮮の強硬路線にたいして、中国に打つ手がないことを知っているのである。
 中国には、金正恩を亡命させ、保護していた兄の金正男を送り込み、北朝鮮に親中政権を立てる構想があったはずだが、金正男が北の工作員に暗殺されたばかりか、とりこみかけていた韓国に、北京までがレーダー網にかかるTHAAD(高高度弾道弾迎撃)ミサイルの配備がきまり、朝鮮半島戦略が根底から崩れ去った。
 中国もまた、北朝鮮危機にからめて、アメリカに足並みを揃えざるをえない事情があったのである。

 中国は、北朝鮮にたいして石炭輸入や石油輸出の制限をきめ、中国国際航空が北京発平壌行きの運航を一時停止した。
 北朝鮮の交易は約90%が対中国で、これまで、経済制裁が効果なかったのは、中国が抜け道になっていたからだった。
 もっとも、中国が経済制裁にくわわっても、国民がますます飢えるだけで、北朝鮮情勢に大きな変化が生じるとはかぎらない。
 朝鮮民族は妄想の民族で、金正恩は、北朝鮮がアメリカや中国と肩を並べる軍事大国と思い込んでいる可能性が高い。
 北朝鮮の軍事費は75億ドルで、米国(5960億ドル)の1・3%、韓国(364億ドル)の20%にすぎない。
 ところが、GDP対軍事費の比率は一位(23.3%)で、兵力数は米国と並ぶ138万人(世界3位)である。
 北朝鮮(人口2500万人)では男子の十人に一人が軍人なのである。
 その軍人も、エリート以外、大半が栄養失調で、体重が50キロにみたない兵士も少なくないという。
 アメリカも中国も、こんな狂気の国に有効な戦略が立てられるはずがない。

 それでは、なぜ、アメリカは、北朝鮮の戦略拠点を狙う「精密照準爆撃」や戦略核兵器を導入した大規模な米韓軍事演習をおこない、原子力空母カール・ビンソンを派遣したのか。
 トランプは習近平に『アメリカは空母だけでなく、原子力潜水艦を派遣する用意があることを金正恩に知らせるべき』とつたえている。
 北朝鮮にたいする有効な手段が、アメリカの軍事的デモストレーションだけで、それが、米・中の共通の利益になっていたのである。
 中国のテレビ局(CCTV)などによると、トランプ大統領は「為替報告書(米財務省)」に中国を為替操作国に指定しないとのべたという。
 トランプは大統領選中から、中国政府が人民元の対ドルレートを低く操作していると非難してきた。
 それをひっこめたのは、北朝鮮問題の解決には、習金平との協力関係が不可欠だからで、米中首脳会議でも、中国が南沙諸島海域に建設した人工島などの南シナ海をめぐる領有権問題が、事実上、棚上げされている。
 米・中は北朝鮮危機に共通の認識をもち、金正恩を倒した後、韓国を外した米・中・ロ3国による信託統治のプランをもっている可能性が高い。
 グーバリズムに代わる米・中・ロの3大強国による世界支配が、北朝鮮危機から浮上してきたのである。
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2017年04月10日

 伝統と民主主義C

 ●右翼は「君民一体」の守護者たれ
 政治思想上の最大のテーマは「個と全体」の矛盾解消にある。
 個は、一人ひとりの国民のことで、全体は、国家にあたる。
 西洋では「社会契約説」で、ホッブスやルソー、ロックがこのテーマを論じた。
 ホッブスは両者の二元化(「国家は怪物(リバイアサン)」「万人の戦争」論)で、一応、片をつけたが、ルソーとロックは、両者の一元化(「人民代表による国家運営」)をもとめた。
 問題なのは人民代表≠ニいう考え方で、暴力革命や独立戦争、選挙にもとづく独裁(ファシズム・大統領制)も、人民が主役となる民主主義である。
 日本は、中世以降、権威と権力の二元化をもって「個と全体」の矛盾を解消してきた。
 それがわが国の伝統で、歴史という時間軸のなかでは、文化と政治、権威と権力が融合する。
「個と全体」の矛盾を解消するカギは、一過性の現在ではなく、歴史の連続性や永続性のなかにあったのである。
 日本は、政体(権力)と国体(権威)の二元論の国家で、民は、天皇とともにある。
 それが「君民一体」である。
 権力は民を支配するが、民は、権力に正統性を授ける権威と同位(三位一体)にある。
 日本で独裁や恐怖政治がうまれなかった理由がそれで、ルソーも「君民一体」が理想の政治とみとめている。

 玄洋社(頭山満)や黒龍会(内田良平)の流れを汲む大日本生産党の政綱に次のようにある。
 一、欽定憲法に遵い、「君民一致」の善政を徹底せしむること
 二、国體と国家の進運に適合せざる制度法律の改廃を行い政治機関を簡素化せしむること
 三、自給自足立国の基礎を確立せしむること
 大日本生産党は、血盟団事件(井上日召)、五・一五事件の流儀をうけついだ神兵隊事件の中心的な役割をはたした右翼団体である。
 中村武彦や白井為雄らの理論家をうんだ戦後右翼の一つの原点で、両先達の研究テーマが「個と全体」の調和だったことは、自著にあるとおりである。
 民主主義で「個と全体」の矛盾を解消することはできない。
 むしろ、その矛盾を広げるのが民主主義といってよい。
 個の集合(大衆)を一つの実体とみなして、その代表を元首とするのは暴力革命や全体主義(独裁)を正当化するためのこじつけで、民から委任されたとする全権が民の意思を反映するとはかぎらない。
 民主主義(国民主権)の最大の欠陥は、主である民が国民一般におきかえられて、実体をともなっていないところにある。

 憲法第一条に「天皇の地位は主権の存する日本国民の総意に基づく」とある。
 主権をもつのが国民全体で、その総意が存在するというのは、御伽噺である。
 それが民主主義や国民主権の正体で、どこにも実体がないのである。
 第一条がうけいれられているのは、日本国民がこれを「天皇はわが国の伝統である」と読み解いているからで、天皇が憲法上の存在などは思っていない。
 ところが、自民党改憲案では、象徴を元首にさしかえ、以下、一条の全文をほぼ全面的に踏襲している。
 明治憲法の欠陥は、ドイツ憲法を模倣して、権威の座にあった天皇を権力の座(=元首)にすえたことで、一方、GHQ憲法の過ちは、日本の君民一体を西洋の民主主義(主権在民)にすりかえたところにある。
 自民党の改憲案は、明治憲法とGHQ憲法の悪いところ取りで、これを改憲案として堂々と掲げるところに自民党の保守党としての限界がある。

 民主主義は、歴史の連続性を断ち切った一過性の決定で、過去の事跡や歴史の智恵が切り捨てられている。
 国家も国民も歴史的存在で、歴史を失ったら、国土は不動産に、国民は住民にすぎないものになってしまう。
 民主主義では、日本人が日本人で、日本の国土や民族の文化・文明が日本のものであることが明らかにならないのである。
 それができるのは、理屈をこえた伝統だけで、歴史の連続性や歴史との一体感は、理屈ではなく、精神文化なのである。
 伝統を多数決でひっくり返そうとしたのが、小泉政権下の「皇室典範に関する有識者会議」で、同じことが、将来、おきないという保証どこにもないどころか、自民党幹事長が歴史破壊を堂々と口にしている。

 天皇が憲法上の存在となっているかぎり、歴史の証である天皇が、道路交通法のように、法手続きによって廃絶させられる危機から免れえない。
 天皇退位問題にたいして、安倍内閣は特例法(「皇室典範の付則に記述」)で処置するという。
 これは、天皇が歴史上の存在で、伝統の象徴であることの否定で、GHQが憲法の形でおしつけた民主主義への屈服である。
 わが国の数千年の歴史は、GHQがわずか一週間で書き上げた占領基本法と比較するべくもなく、まして、これに屈すべき理由はケシ粒ほどもない。
 同様に11宮家の臣籍降下も皇室典範の憲法への組み入れも、戦勝国の時限的な戦時占領政策で、いつまでもこれをまもらなければならない理由はどこにもない。

 日本が、戦後70年以上にわたって、アメリカの占領政策をひきずっているのは、護憲・民主主義・国民主権を武器にしている左翼を中心とした反日勢力の口車にのせられたのである。
 内部から国家体制を切り崩すのが敗戦革命のメカニズムである。
 レーニンが編み出した敗戦革命は、敗戦国内に祖国にたいする絶望と憎悪を高めさせ、一方で反逆者を育成することによって、革命前夜の危機的な情況をつくりだせるという革命理論である。
 戦後、日本の政界は、親米(自民党ら)と親ソ・親中(旧社会党ら)が憲法をめぐって激しく対立した。
 敗戦革命の機関紙となったのが朝・毎などの大新聞で、広告塔となったのがNHKなどの放送メディアだった。

 戦後、日本で革命がおきなかったのは、歴史と伝統の証としての皇室が存在したからである。
 日本人は、空想の民主主義ではなく、実在する伝統をとったのである。
 反日勢力が民主主義(憲法)をふりまわすのは、伝統(国体)が敗戦革命の最大の妨害となっているからで、国民投票によって、万世一系から皇室の存続までを否定しようという魂胆である。
 戦争に負けた日本に伝統をまもる政党も大組織も存在しない。
 日本を世界に誇る伝統国家たらしめているのは、民を思う天皇と天皇を慕う国民だけである。
 右翼の使命は、国体の伝統をまもることで、「君民一体」の守護者でなければならないのである。

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2017年04月06日

 伝統と民主主義B

 ●日本の皇室とヨーロッパの王室
 ヨーロッパの王室は、ローマ帝国における皇帝の末裔で、現在、その血族がハプスブルク家やブルボン家、ウィンザー家(旧ゴータ家)などの名家として残っている。
 したがって、ヨーロッパの王族はみな親類で、オランダやノルウェー、スウェーデンの王家はイギリス国王の継承権をもっている。
 デンマーク、ベルギー、ルクセンブルク、スペイン、かつて王室が存在したフランス、ギリシア、ルーマニア、ドイツ、ロシア、オーストリアの旧王室も血縁をとおしてイギリス国王(ウィンザー家)や旧フランク王国(ハプスブルク家)とつながっている。
 中世のヨーロッパで一番格式が高かったのは西ローマ帝国を継承したとする神聖ローマ帝国皇帝で、当時のイングランド王やフランス王は、皇帝の格下とされた。

 紀元前8世紀に建国された王制ローマ帝国は、紀元前5世紀に共和政へ移行して、500年後の紀元前27年から帝政時代に入る。
 帝政ローマは、4世紀に東西に分裂したのち、東ローマ帝国は15世紀までつづくものの、西ローマ帝国は5世紀になってゲルマン族に滅ぼされる。
 神聖ローマ帝国は、10世紀に西ヨーロッパ大陸部のほぼ全域におよぶフランク王国のカール大帝をへて東フランクのオットー大帝(ドイツ王) がローマ教皇から皇帝位を授かった国家で、西ローマ帝国の事実上の継承であった。
 皇帝は、帝国の軍総司令官・最高行政長官・元老院議長・最高神祇官などを兼ねる絶対権力者で、領地や部族の長にすぎない王をしのぐ権力をもち、王の中の王と呼ばれた。
 神聖ローマ帝国(第一帝国)の後継を名乗ったのが第一次大戦をひきおこすヴィルヘルム1世(ドイツ皇帝)のドイツ帝国(第二帝国)で、その後、ヒトラーのナチス政権は第三帝国を名乗った。
 明治憲法は、第二帝国のドイツ(プロイセン)帝国憲法をモデルにしている。
 ヨーロッパは、革命の時代となる19世紀まで、ローマ帝国と皇帝の威光のもとにあったのである。

 紀元前のヨーロッパは多神教で、同時代の日本の邪馬台国・大和朝廷と同じような祭祀国家だった。
 ヨーロッパが権力闘争の修羅場となったのは、ローマ教皇(法王)とローマ皇帝という二人の権力者が出現して、権力に正統性をあたえるべき権威の座が空位になったからだった。
 パンテオン宮殿が象徴する多神教を追い出したキリスト教は、神の代理人であるローマ法王庁をとおして権力化され、俗化してゆく。
 権威が不在とあって、皇帝は、権力の正統性を元老院・軍隊・市民の推戴と軍事力にもとめるほかなかった。
 ローマ帝国は民主化された軍事政権だったのである。
 皇帝の地位には、世襲と血統、格式が重んじられたが、ギリシア民主主義の流れを汲む市民集会の決議が必要で、西ローマ帝国の威光を借りた神聖ローマ帝国皇帝も、有力諸侯らの選挙でえらばれるにすぎなかった。
 手続き上の存在だったローマ皇帝に、神の血を受け継ぐ天皇や天命を受ける支那の皇帝のような世俗を超越した権威がそなわらなかったのは当然だった。

 フランス革命によって共和政が成立した後、1804年にナポレオン・ボナパルトが議会の議決と国民投票によって、フランス人の皇帝ナポレオン1世となった。
 このとき、皇帝は、ローマ帝国の後継者としての正統性を失い、皇位を支える基盤は、権威でも、元老院・軍隊・市民の推戴でもなく、ドイツ諸邦を支配下に組み入れるための軍事同盟(ライン同盟)だけとなった。
 ナポレオンの皇帝即位を承認した神聖ローマ皇帝フランツ2世は神聖ローマ皇帝位から退位して、オーストリア皇帝の地位へ下がり、千年近くもつづいた神聖ローマ帝国はここで崩壊する。
 第一次世界大戦後、敗戦国のドイツ帝国・オーストリア=ハンガリー帝国では革命がおきて帝政が倒れた。
 オスマン帝国やロシア帝国でも、革命によって帝政が崩壊して、ヨーロッパには皇帝が1人もいなくなり、ローマ帝国以来の皇帝の歴史は完全に幕を閉じた。

 天皇と皇帝の決定的なちがいは、皇帝が権力者だったのにたいして、天皇が権力から離れた権威だったところにある。
 日本で、権威と権力の二元性が維持されてきた理由は、仏教やキリスト教が入ってきても、神話=神道が日本精神として、ゆるがなかったことだろう。
 それが伝統の力で、合議や多数決、決議や承認などの一過性の決定は、不安定なばかりか、巨大化した国家のなかではなかなかゆきわたらない。
 皇帝の専制政治がおこなわれた東ローマ帝国が1千年の命脈をたもったのにたいして、西ローマ帝国が早々に滅びたのは、元老院の承認や市民集会の決議などの手続きが巨大化した国家全体に浸透する前にゲルマン人の侵略をゆるしたからである。
 江戸三百年の平和は、幕府(権力)が天皇(権威)から預かった土地や民を御宝として扱い、民が天皇を慕い、天皇が民の幸と国家の安泰を祈るという三位一体の国体が成立していたからである。
 国家の三要素(領土・国民・主権)をまもるには、権力や法、民主主義などの手続きではなく、伝統という心に刻まれた永遠の規範が必要なのである。
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