2018年04月12日

 神道と世界最古の文明「縄文文化」40

 ●天皇と国家「勅と法」(11)
 明治維新は、複雑な経緯をたどった政変で、いまなお歴史的評価が定まっていない。
 江戸幕府第15代将軍徳川慶喜が明治天皇に政権を返上して大政奉還(1867年)が成ったところで維新の目的は達成されたはずで、鳥羽・伏見の戦い(1868年)の引き金になった旧幕府勢力への強権圧迫は、まったく必要がなかった。
 まして、旧幕府勢力および奥羽越列藩同盟への常軌を逸した弾圧は、維新の本筋から逸脱しており、戊辰戦争にいたっては長州征伐の事実上の復讐でしかなかった。
 維新運動は、朝廷(公)の伝統的権威と幕府および諸藩(武)の世俗的権力をむすびつけて幕藩体制の再編強化をはかろうとする公武合体論が主流だった。
 それで明治維新が決着していれば、日本の近代化はまったくちがった道筋をたどっていたろう。
 1、武家政治がひきつがれた
 2、ヨーロッパ化(鹿鳴館・身分制度・帝国主義)のみちをたどらなかった
 3、天皇の政治利用(元首・明治憲法)はありえなかった
 ところが、歴史の歯車は、公武合体論に与しなかった。
 幕府信任の信念を変えなかった孝明天皇の崩御にともなって、薩長や公家の倒幕派が台頭、徳川慶喜の新政権参加が葬られると、公武合体論は政治生命を失い、以後、明治維新は、薩長土肥による討幕運動へつきすすんでゆく。
 主役は、孝明天皇暗殺の下手人とささやかれた岩倉具視で、薩摩・長州への「討幕の密勅」を工作するにいたって、明治維新は、政変から謀略へとすがたをかえてゆく。

 明治維新が政変から革命へと変容したのは、薩長らの下級武士が天下取りに走ったからで、その口実になったのが、尊皇攘夷だった。
 天皇を尊び、外敵を斥けようという尊皇攘夷は、水戸学や国学に影響を受けた維新期の政治スローガンで、公武合体と対立する。
 公武合体で、幕府と朝廷がむすべば、京都や江戸から遠く離れた薩長土肥の出番がなくなる。
 まして、同藩下級武士ともなれば、天下とりなど思いもおよばない。
 薩長の下級武士が尊皇攘夷を叫んだのは、公武合体をつぶす方便で、かれらの目的は倒幕だった。
 薩長土肥の下級武士が尊皇攘夷という政治スローガンを背負って台頭、これが明治維新のエネルギーとなったのは、天皇を立て、みずからを天皇の軍隊(官軍)と名乗る以外、江戸三百藩の大名とその家臣団を統率する方法がなかったからだった。
 この階級闘争が成功して、藩を廃止して廃藩置県(1871年)まで改革が一気にすすんだのは、薩長の下級武士が天皇をとったからで、幕府との抗争では「タマ(天皇)をとれ」が薩長の合言葉だった。
 下級武士といっても足軽以下で、西郷や大久保はかろうじて武士(御小姓与)だったものの、伊藤博文と山県有朋は武士にあらざる小物(中間)で、維新の志士のなかで上級武士は一人もいなかった。
 その意味で、明治維新は、非士族(足軽以下)が士族(藩士・幕臣)を排除して権力をにぎった階級闘争(=革命)といってよいだろう。

 明治維新の要諦は、尊皇攘夷から一転して、ヨーロッパ化で、筆頭に挙げられるのがヨーロッパ王政を真似た王政復古だった。
 日本には、皇親政治の第40代天武天皇(673〜686年)と建武の新政の第96後醍醐天皇(1318〜1339年)以外、王政の伝統はない。
 日本の皇室は、明治維新期につくりかえられたものだったのである。
 明治政府がとった文明開化路線、殖産興業政策による西洋技術・文化の輸入は、西洋の産業革命の移入でもあって、日本は、1893年(明治26年)に国産の国産機関車(860形)を完成させる。
 日本が産業革命の成果をうけいれることができたのは、江戸時代の文明度がそれだけ高かったからで、世界史をながめても、異文化をこれほどスムースに受容したケースはまれである。
 明治政府は、廃藩置県につづいて、矢継ぎ早に革命的な政策をうちだす。
 大名・武士階級の廃止から四民(士農工商)平等や華族(公卿や大名)士族(旧幕臣・旧藩士)の身分制度などだが、いずれもヨーロッパの真似で、これが鹿鳴館文化や皇室の西洋化などの西洋コンプレックスへつながってゆく。
 制度改革のきわめつけは、江戸時代まで武士がもらっていた家禄(秩禄)を廃止した秩禄処分で、一時金(金禄公債)はえたものの、以後、武士の大半が経済的に没落してゆく。
 秩禄処分は、支配層が無抵抗のまま既得権を失ったという点で、世界史的に稀有な例で、天皇を政権にとりこんだ明治政府がいかに強力な権力構造だったかわかる。
 そのゆがみが一気に噴出したのが不平士族の反乱だった。
 次回は、士族の反乱から鹿鳴館文化、そして帝国主義へむかった天皇軍国主義への道筋をみていこう。
posted by office YM at 02:12| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする