●戦争シミュレーション≠ニ軍拡競争
核は、防衛には最強だが、使えない武器で、使えば、世界の破滅である。
戦争がおきるとしたら、通常兵器による局地戦だが、それも、実際におきる可能性はきわめて小さい。
それでは、なぜ、世界の国々が軍拡競争に血眼になるのか。
軍事力をベースにした戦争シミュレーションによって、たたかう前に勝敗が決するからである。といっても、ただのゲームではない。シミュレーションによる軍拡競争に負けると、実戦で負けたと同じような結末がもたらされる。
インド太平洋軍のデービッドソン司令官が上院軍事委員会の公聴会で「通常戦力による米国の抑止力が崩壊しつつある」と警告して注目を浴びた。現在のペースでは、中国が6年後に台湾を解放して、20年後にはアメリカから世界覇権を奪うというのである。
これも、戦争シミュレーションの結果で、アメリカが、将来、中国に負ける可能性があることを正式にみとめたのである。
尖閣列島も、戦争シミュレーションで日米が中国に負ければ奪われることになる。その場合も、実戦なしで、コンピューターにデータをインプットすれば99・9%の確率で勝敗が判明する。
増強される中国軍に対抗して、アメリカがシミュレーション戦争に勝利するべく、着々と手を打っているのは、いうまでもない。
局地戦の主戦場になると思われる海洋では、アメリカ軍は、地上から中国の艦艇を攻撃する「地対艦」攻撃部隊を創設して、南西諸島やフィリピンなどに配備する。
地対艦ミサイル攻撃には、海軍海兵隊だけではなく、陸軍もくわわる。海と陸の両方で、東シナ海と南シナ海に展開する中国海軍を無力化しようというのである。米空軍も、規模を縮小したグアム島の空軍基地にBー52H爆撃機の爆撃機部隊を復帰させて、中国ににらみをきかせる。
さらに、日米豪印(クアッド)が結束する太平洋・インド洋では、イギリス(空母クイーン・エリザベス)をはじめオランダ(艦艇)、フランス(強襲揚陸艦)やドイツ(フリゲート艦)が日米海軍と共同訓練をおこなっている。
日米豪印に英仏独蘭加をくわえた海洋国家群で、中国とロシアなどの内陸型国家連合を封じこめようというのである。
中国海軍は、旧ソ連製の船体を改修した「遼寧」と国産初の「山東」の二隻の空母をもち、アメリカは、保有する空母11隻のうち、最強のロナルド・レーガンを第七艦隊(横須賀基地)に配備している。
空母打撃群は、航空母艦を中心にミサイル巡洋艦やミサイル駆逐艦、攻撃型潜水艦、補給艦などによって構成されるので、一つの空母打撃群が一国の海軍力に相当するといわれる。
アメリカ最強の第七艦隊のロナルド・レーガンが、南シナ海で、中国海軍の遼寧や山東に対抗しているが、中国海軍が三隻目の空母をもつと、米中の軍事バランスが崩れかねない。
総合力はアメリカが上でも、局地戦では、投入できる戦力に限界がある。
しかも、地の利もはたらくので、極東の米中軍事バランスが逆転する可能性はおおいにあるのである。
そのとき、大きな役割をはたすのが、日本の空母打撃群である。
日本の空母艦隊は「ひゅうが」「いせ」「いずも」「かが」の4隻体制である。
「ひゅうが」と「いせ」は対潜水艦用の航空母艦として、世界の最新鋭である。
一方、ステルス戦闘機を艦載する「いずも」と「かが」は、航空母艦として本格的な機能をそなえている。艦載するFー35Bステルス戦闘機は、短距離離陸・垂直着陸できる世界の最新鋭機で、英国の空母クイーン・エリザベスも採用している。
日本の空母打撃群は、空母の前後左右に、迎撃ミサイルを備えたイージス艦や駆逐艦、ミサイル巡洋艦、上陸用舟艇や補給艦を配置して、攻撃型潜水艦や対潜哨戒機が海と空から目を光らせる。
日本の空母艦隊は、対潜水艦用のタイプとステルス戦闘機を艦載したタイプの組み合わせがベストで、このダブルの航空母艦が日本海や東シナ海の制海権を握れば、竹島を不法占拠する韓国や尖閣諸島に干渉してくる中国を牽制することができる。
戦争シミュレーションのなかで大きな要素となるのが「敵基地攻撃能力」の保有である。ミサイル戦になる現代の戦争において、専守防衛(攻撃をうけたら報復する)という論理は通用しない。 被弾すれば、その時点で勝負がついてしまうからである。
したがって、敵ミサイルが発射される前に先制攻撃≠ナきる体制ができていなければ、戦争シミュレーションの上で、互角の戦力をもっていることにならない。
日本政府が、これまで、敵から攻撃を受けるまで武力の行使をおこなわないとしてきたのは、国家の自衛権や自然権、習慣法や国際法(国連憲章51条)を放棄したからでも、憲法九条に縛られているからでもない。
国家防衛を核の傘≠ニいう名目のもとで、国家防衛をアメリカにゆだねる悪弊をひきずってきたからで、このなれあいを断ち切ったのが安倍晋三元首相だった。
核の傘も自衛権の委託も、前時代的な迷妄で、そんなものは存在しない。
安倍政権は14年、憲法解釈の変更を閣議決定して、集団的自衛権の行使を容認すると、翌15年、日米防衛協力ガイドラインの改正と安全保障関連法を成立させた。
菅義偉前首相が安倍の安全保障路線を踏襲すると、岸田文雄首相が所信表明演説で「防衛には、敵基地攻撃能力もふくめてあらゆる選択肢を排除しない」と表明して、戦後レジームからの脱却がいよいよ明確になった。
ちなみに、安倍路線を目の敵にするのが法曹界と左翼である。
法律家と左翼は、ともに、教条主義者である。前者が条文主義者なら後者がマルクス主義者で、かれらにとって、法律の文章やマルクスのことばが唯一の真実である。
法が「刑罰に裏付けられた主権者による命令(ジョン・オースティン)」ならマルクス主義は「暴力に裏付けられた主権者による政治」である。そのいずれも、人間の頭がひねりだした浅知恵で、国体や国家、文化や習俗という歴史がつちかってきた叡智とは比べるべくもない。
しかも、ここでいう主権者は、国家ではなく、人民の権利(=国民主権)をあずかって、国家を倒そうとする、啓蒙思想という怪物である。
啓蒙思想というのは、個人の自由や平等、権利を、天からさずかったものとして、それらをまもっている国家を、逆に、奪うものとして逆恨みする錯綜でルソー主義≠フことである。
ルソー主義を信奉するのが、労組やマスコミ、日本弁護士会や検察庁である。
外交や国家防衛で大きな成果をあげた安倍首相を「戦争が大好きな右翼」と罵倒しつづけ、検察庁にいたっては「桜を見る会」で秘書が小銭をごまかしたとして、いまだに、安倍逮捕に執念を燃やしている。
法律家が、反日・反国家に走るのは、東大法学部の三巨頭、丸山眞男、大塚久雄、川島武宜が、ともに、啓蒙主義を代表する論者で、戦後民主主義のオピニオンリーダーだったことを思えばうなずけよう。
閑話休題で、次回は、日本防衛の要となる極超音速ミサイルと世界一の潜水艦、現代のゼロ戦となる可能性をひめた国産ステルス戦闘機について語ることにしよう。
2021年12月27日
2021年12月20日
なぜ日本は中道政治≠実現できないのか8
●無防備ほど平和にとって有害なものはない
日本学術会議の任命を拒否された6人の学者は「秘密保護法」や「安全保障関連法」、「共謀罪法」に反対してきたいわゆる平和勢力≠ナ、反日や反国家なのはともかく、これまで、日本の軍事研究や兵器開発、軍需産業にたいして、一貫して、非協力の姿勢をつらぬいてきた。
第二次安倍政権(2012年)以前、自民党政府は、大手マスコミから護憲派、日本弁護士会や日本学術会議などの平和勢力の前で小さくなって、ろくに防衛論議もできないありさまだった。
軍備や交戦権、軍事力(自衛隊)どころか、国防意識そのものを憲法違反とする日本平和教≠ェ、国家防衛の前に立ちはだかって、世界の軍事的均衡の一翼を担っている日本の足をひっぱってきたのである。
ソ連崩壊やアラブの春、イギリスのEU離脱などを予測した世界的に高名なフランスの歴史学者エマニュエル・トッドはこういう。「戦争になるのは軍事的均衡が破綻したときです。無防備ほど平和にとって有害なものはない」
こうともいう。「核は自国のためだけに使うものです。ドイツをまもるためにフランスが核を使うことがないように、アメリカも、日本をまもるために核を使うことはない。アメリカの核の傘≠ニいうのはジョークでしかない」
日本は自前の核をもつべきという論拠は「核の傘無効論」だったのである。
日本が核をもつなら、インドやパキスタン、北朝鮮のように、核拡散防止条約(NPT)を破棄しなければならない。
アメリカの反対や国際社会からの反発が予想されるが、その場合、NATO(北大西洋条約機構)のニュークリア・シェアリング(核兵器共有)方式という選択肢が浮上してくる。
ドイツ・イタリア・ベルギー・オランダなどの参加国は、アメリカから核の貸与をうける一方、核兵器を搭載できる軍用機やミサイルなどの技術・装備をもち、自国領土内で核を管理するほか、使用権限も握る。
といっても、核兵器の暗号コードは、アメリカがもち、それが参加国の手に移るのは、核攻撃をうけて、報復する場合に限られる。核戦争はおこらないという前提に立っているので、核の貸与は、核を誇示する敵のブラフ(脅し)に対抗する形式的なもので、実際に、核兵器の暗号コードが参加国に移るかどうか、細部にわたるとりきめはない。
核は、使用できない武器である。万が一、インドとパキスタンが互いに核を撃ち合ったら数億人の犠牲者が出るばかりか、世界の経済や流通、システムが崩壊して、食糧危機がおき、被爆死に倍する死者(餓死者など)がでることになる。
まして、核保有国(米・中・ロ・英・仏・イスラエル)が核を使えば世界は破滅へむかい、5000年前の四大文明や日本の縄文文化からはじまった人類の歴史に終止符が打たれることになる。
二国間の「相互確証破壊(=共倒れ)」の論理で、終局的には、地球の破滅へつながる核と、世界各国の自制とルール、安全を担保する軍事バランスは切り離されていなければならない。
バランスオブパワーをつくりあげているのは、通常兵器による陸・海・空の軍拡競争である。米中摩擦や台湾問題、尖閣列島が大きな紛争へ発展しないのは、米・中・ロ・日・韓およびアセアン・印・豪のあいだで軍事的な均衡がたもたれているからである。
このバランスオブパワーを政治的眼目においたのが、安倍政権で、それまでの日本政治のパラダイムをがらりと変えた。とりわけ第二次安倍政権と菅義偉政権では、外交・防衛上に大きな前進がみられた。
羅列してみよう。
第一次安倍政権以後のうごき
2006年
第一次安倍政権発足
安倍内閣の基本的な外交方針として「価値観外交―自由と繁栄の弧」がうちだされた。
第二次安倍政権以後のうごき
2012年
第二次安倍政権発足
2013年
日英防衛装備品・技術転移協定署名。米国以外との国との初の武器共同開発協力
特定秘密保護法成立
2014年
武器輸出三原則を撤廃。新たに防衛装備移転三原則を閣議決定
憲法解釈を変更して、集団的自衛権の行使容認の閣議決定
英国とミサイル共同開発を決定。自衛隊にミサイルを納入する三菱電機の参画を認可
2015年
日米防衛協力ガイドラインを改定
安全保障関連法(いわゆる戦争法)成立
防衛装備庁が発足。安全保障技術研究推進制度の発足
2016年
安倍首相が「自由で開かれたインド太平洋戦略」(アフリカ開発会議)をうちだす
2017年
自衛隊の中古装備品を他国に無償あるいは低価格で譲渡できる改定自衛隊法が成立
共謀罪成立
2018年
フィリピンに海上自衛隊の練習機TC90を無償譲渡
日英の武器共同開発が本格化。英国の軍需企業が開発した空対空ミサイルに三菱電機の高性能レーダーを組み込む
安倍晋三元首相が「いずも」と「かが」の空母への改造を閣議決定
2019年
ノルウェーの軍需企業と巡航ミサイル買い付けの契約締結
ノルウェーの軍需企業がF35戦闘機に搭載可能な巡航ミサイルの後続契約を日本政府と締結。53億円
2020年
防衛省が「三菱電機製のレーダーをフィリピンに輸出する契約が成立」と発表。日本製の完成品の輸出は初めて。
安倍首相が「ミサイル阻止(=敵基地攻撃能力の保有)年内に方針と」と談話
防衛庁が5兆4898億円(2021年度)の概算要求
防衛装備庁が国内軍需商社(丸紅エアロスペース、伊藤忠アビエーション)とアジア4か国へ武器輸出を本格化させる契約
2020年
菅政権発足 日本学術会議の任命から6人の学者を拒否
イージス艦2隻新造と敵の射程圏外から攻撃できるスタンドオフ・ミサイル(長距離巡航ミサイル)の国産開発の方針を閣議決定。
日本防衛戦略の基本が「航空母艦」「戦闘機」「ミサイル」「潜水艦」の四つの戦力の能力と装備、配置にあるのはいうまでもない。
この4分野の戦力を世界レベルから検証してみよう。
日本の空母艦隊が「ひゅうが」「いせ」「いずも」「かが」の4隻体制をとったのは、ひゅうが(「いせ」をふくむ)といずも(「かが」をふくむ)の戦闘任務と守備範囲が異なるからである。
「ひゅうが」型は、接近してくる敵潜水艦にたいする攻撃で、短魚雷発射管やアスロック対潜ミサイルなどを格納する16セルの垂直発射装置(VLS)を装備する。重兵装だが、対潜水艦用の航空母艦として、世界の最新鋭である。
一方、潜水艦を攻撃する装備をもたない「いずも」型は、本格的な航空母艦としての機能をそなえ、短距離離陸・垂直着陸できるF−35Bステルス戦闘機を艦載する。米海兵隊F35Bが「いずも」からの短距離離陸・垂直着陸をおこなった(ネットで映像公開)のち、海上自衛隊も、日夜、訓練を重ねている。
潜水艦と駆逐艦、空中戦力にまもられる空母船団のなかで、ひときわ威力を発揮するのが空中戦力である、垂直離着陸ステルス戦闘機F35は、F22に次ぐ世界第2位の能力をもつ戦闘機とあって、日本の空母が、東シナ海で中国海軍の空母とにらみ合っても一歩もひけをとらない。
ちなみに、F22はアメリカ空軍のエースで、門外不出にしたため、日本は同等以上の性能をもつ戦闘機(心神)を開発したが、それは後述しよう。
日本の空母打撃群には、航空母艦を中心に、駆逐艦やミサイル巡洋艦、攻撃型潜水艦や対潜哨戒機、上陸用舟艇や補給艦、これに、軍事衛星とむすばれたレーダー網とアメリカと共有する情報ネットワークがくわわる。
実戦では、空母の前後左右に、空対艦ミサイルに備えた迎撃ミサイル体制を整えたイージス艦を配置してさらに万全を期す。
現在、海軍力が世界1位の米、2位の日、3位の英に、仏・蘭・豪・加らをくわえた自由諸国海軍連合の軍事訓練が、太平洋インド海域中心に、精力的におこなわれている。
この軍事的均衡のなかで、中国海軍が尖閣列島を奪える情勢はでてこない。
次回は、日本の「戦闘機」「ミサイル」「潜水艦」が世界と比較してどのレベルにあるかを検証してみよう。
日本学術会議の任命を拒否された6人の学者は「秘密保護法」や「安全保障関連法」、「共謀罪法」に反対してきたいわゆる平和勢力≠ナ、反日や反国家なのはともかく、これまで、日本の軍事研究や兵器開発、軍需産業にたいして、一貫して、非協力の姿勢をつらぬいてきた。
第二次安倍政権(2012年)以前、自民党政府は、大手マスコミから護憲派、日本弁護士会や日本学術会議などの平和勢力の前で小さくなって、ろくに防衛論議もできないありさまだった。
軍備や交戦権、軍事力(自衛隊)どころか、国防意識そのものを憲法違反とする日本平和教≠ェ、国家防衛の前に立ちはだかって、世界の軍事的均衡の一翼を担っている日本の足をひっぱってきたのである。
ソ連崩壊やアラブの春、イギリスのEU離脱などを予測した世界的に高名なフランスの歴史学者エマニュエル・トッドはこういう。「戦争になるのは軍事的均衡が破綻したときです。無防備ほど平和にとって有害なものはない」
こうともいう。「核は自国のためだけに使うものです。ドイツをまもるためにフランスが核を使うことがないように、アメリカも、日本をまもるために核を使うことはない。アメリカの核の傘≠ニいうのはジョークでしかない」
日本は自前の核をもつべきという論拠は「核の傘無効論」だったのである。
日本が核をもつなら、インドやパキスタン、北朝鮮のように、核拡散防止条約(NPT)を破棄しなければならない。
アメリカの反対や国際社会からの反発が予想されるが、その場合、NATO(北大西洋条約機構)のニュークリア・シェアリング(核兵器共有)方式という選択肢が浮上してくる。
ドイツ・イタリア・ベルギー・オランダなどの参加国は、アメリカから核の貸与をうける一方、核兵器を搭載できる軍用機やミサイルなどの技術・装備をもち、自国領土内で核を管理するほか、使用権限も握る。
といっても、核兵器の暗号コードは、アメリカがもち、それが参加国の手に移るのは、核攻撃をうけて、報復する場合に限られる。核戦争はおこらないという前提に立っているので、核の貸与は、核を誇示する敵のブラフ(脅し)に対抗する形式的なもので、実際に、核兵器の暗号コードが参加国に移るかどうか、細部にわたるとりきめはない。
核は、使用できない武器である。万が一、インドとパキスタンが互いに核を撃ち合ったら数億人の犠牲者が出るばかりか、世界の経済や流通、システムが崩壊して、食糧危機がおき、被爆死に倍する死者(餓死者など)がでることになる。
まして、核保有国(米・中・ロ・英・仏・イスラエル)が核を使えば世界は破滅へむかい、5000年前の四大文明や日本の縄文文化からはじまった人類の歴史に終止符が打たれることになる。
二国間の「相互確証破壊(=共倒れ)」の論理で、終局的には、地球の破滅へつながる核と、世界各国の自制とルール、安全を担保する軍事バランスは切り離されていなければならない。
バランスオブパワーをつくりあげているのは、通常兵器による陸・海・空の軍拡競争である。米中摩擦や台湾問題、尖閣列島が大きな紛争へ発展しないのは、米・中・ロ・日・韓およびアセアン・印・豪のあいだで軍事的な均衡がたもたれているからである。
このバランスオブパワーを政治的眼目においたのが、安倍政権で、それまでの日本政治のパラダイムをがらりと変えた。とりわけ第二次安倍政権と菅義偉政権では、外交・防衛上に大きな前進がみられた。
羅列してみよう。
第一次安倍政権以後のうごき
2006年
第一次安倍政権発足
安倍内閣の基本的な外交方針として「価値観外交―自由と繁栄の弧」がうちだされた。
第二次安倍政権以後のうごき
2012年
第二次安倍政権発足
2013年
日英防衛装備品・技術転移協定署名。米国以外との国との初の武器共同開発協力
特定秘密保護法成立
2014年
武器輸出三原則を撤廃。新たに防衛装備移転三原則を閣議決定
憲法解釈を変更して、集団的自衛権の行使容認の閣議決定
英国とミサイル共同開発を決定。自衛隊にミサイルを納入する三菱電機の参画を認可
2015年
日米防衛協力ガイドラインを改定
安全保障関連法(いわゆる戦争法)成立
防衛装備庁が発足。安全保障技術研究推進制度の発足
2016年
安倍首相が「自由で開かれたインド太平洋戦略」(アフリカ開発会議)をうちだす
2017年
自衛隊の中古装備品を他国に無償あるいは低価格で譲渡できる改定自衛隊法が成立
共謀罪成立
2018年
フィリピンに海上自衛隊の練習機TC90を無償譲渡
日英の武器共同開発が本格化。英国の軍需企業が開発した空対空ミサイルに三菱電機の高性能レーダーを組み込む
安倍晋三元首相が「いずも」と「かが」の空母への改造を閣議決定
2019年
ノルウェーの軍需企業と巡航ミサイル買い付けの契約締結
ノルウェーの軍需企業がF35戦闘機に搭載可能な巡航ミサイルの後続契約を日本政府と締結。53億円
2020年
防衛省が「三菱電機製のレーダーをフィリピンに輸出する契約が成立」と発表。日本製の完成品の輸出は初めて。
安倍首相が「ミサイル阻止(=敵基地攻撃能力の保有)年内に方針と」と談話
防衛庁が5兆4898億円(2021年度)の概算要求
防衛装備庁が国内軍需商社(丸紅エアロスペース、伊藤忠アビエーション)とアジア4か国へ武器輸出を本格化させる契約
2020年
菅政権発足 日本学術会議の任命から6人の学者を拒否
イージス艦2隻新造と敵の射程圏外から攻撃できるスタンドオフ・ミサイル(長距離巡航ミサイル)の国産開発の方針を閣議決定。
日本防衛戦略の基本が「航空母艦」「戦闘機」「ミサイル」「潜水艦」の四つの戦力の能力と装備、配置にあるのはいうまでもない。
この4分野の戦力を世界レベルから検証してみよう。
日本の空母艦隊が「ひゅうが」「いせ」「いずも」「かが」の4隻体制をとったのは、ひゅうが(「いせ」をふくむ)といずも(「かが」をふくむ)の戦闘任務と守備範囲が異なるからである。
「ひゅうが」型は、接近してくる敵潜水艦にたいする攻撃で、短魚雷発射管やアスロック対潜ミサイルなどを格納する16セルの垂直発射装置(VLS)を装備する。重兵装だが、対潜水艦用の航空母艦として、世界の最新鋭である。
一方、潜水艦を攻撃する装備をもたない「いずも」型は、本格的な航空母艦としての機能をそなえ、短距離離陸・垂直着陸できるF−35Bステルス戦闘機を艦載する。米海兵隊F35Bが「いずも」からの短距離離陸・垂直着陸をおこなった(ネットで映像公開)のち、海上自衛隊も、日夜、訓練を重ねている。
潜水艦と駆逐艦、空中戦力にまもられる空母船団のなかで、ひときわ威力を発揮するのが空中戦力である、垂直離着陸ステルス戦闘機F35は、F22に次ぐ世界第2位の能力をもつ戦闘機とあって、日本の空母が、東シナ海で中国海軍の空母とにらみ合っても一歩もひけをとらない。
ちなみに、F22はアメリカ空軍のエースで、門外不出にしたため、日本は同等以上の性能をもつ戦闘機(心神)を開発したが、それは後述しよう。
日本の空母打撃群には、航空母艦を中心に、駆逐艦やミサイル巡洋艦、攻撃型潜水艦や対潜哨戒機、上陸用舟艇や補給艦、これに、軍事衛星とむすばれたレーダー網とアメリカと共有する情報ネットワークがくわわる。
実戦では、空母の前後左右に、空対艦ミサイルに備えた迎撃ミサイル体制を整えたイージス艦を配置してさらに万全を期す。
現在、海軍力が世界1位の米、2位の日、3位の英に、仏・蘭・豪・加らをくわえた自由諸国海軍連合の軍事訓練が、太平洋インド海域中心に、精力的におこなわれている。
この軍事的均衡のなかで、中国海軍が尖閣列島を奪える情勢はでてこない。
次回は、日本の「戦闘機」「ミサイル」「潜水艦」が世界と比較してどのレベルにあるかを検証してみよう。
2021年12月12日
なぜ日本は中道政治≠実現できないのか7
●高まるアジアの軍事的緊張と「憲法九条」の不均衡
韓国の国防費が、いまのペースでは、6年後には、日本の現在の防衛予算を上回る。
文在寅政権が、GDPの2・2%だった国防予算を2・5%へと上昇させたからで、このままでは、2020年の段階で50兆1527億ウォン(約4兆7000億円)だった国防費が、6年後には5兆4000億円を超える計算になる。
ちなみに、2020年の日本の防衛予算は5兆3222億円だった。
韓国が、国防費の増強にやっきになっているのは、北朝鮮との戦争に備えてのことではない。韓国は、現在、空母の建造を計画しているが、陸上戦となる北朝鮮との戦争に空母など必要ない。
近い将来、韓国が空母を保有するであろう理由は、竹島(韓国名・独島)の占有を恒久化させるためである。韓国の有力紙・中央日報はこう報じる。
「日本は、韓国の領土である独島を自国の土地だと執拗に主張している。そんな日本が空母戦団を独島沖に布陣させ、武力示威をおこなえば、韓国も、空母戦団で対処しなければならない。空母戦団がなければ無防備状態で日本の武力示威を許してしまうことになる」
韓国が危機感を強めたのは、2018年、安倍晋三元首相が「いずも」と「かが」を空母に改造することを閣議決定したからである。
現在、日本は、1万9000トン級のヘリコプター母艦「ひゅうが」と「いせ」を運用している。これにくわえて、2023年までに、2万7000トン級多目的駆逐艦「いずも」と「かが」の2隻を、F35Bを艦載機とする空母に改造しようというのである。さらに、将来的には5万トン級空母(仮称「ほうしょう」)も建造するという。
指揮塔が船の右舷中央にあって、滑走路用の甲板を大きくとってある日本のヘリコプター搭載艦や多目的駆逐艦は、設計時点から垂直離着陸ステルス戦闘機F35Bを搭載する航空母艦に改造することを念頭に建造されている。
日本の空母を警戒しているのは、韓国だけではない。南シナ海でアメリカとしのぎを削っている中国にとって、日本の空母は、大きな脅威になる。
2020年、中国は、渤海で2日間にわたって、空母「山東」の実戦配備となる訓練を実施したが、これは、日米の「インド太平洋戦略」への牽制だったのはいうまでもない。
日本の空母打撃群には、航空母艦を中心に、駆逐艦やミサイル巡洋艦、攻撃型潜水艦や対潜哨戒機、上陸用舟艇や補給艦、さらに、軍事衛星とむすばれたレーダー網とアメリカと共有する情報ネットワークがくわわる。
南シナ海で、アメリカの空母打撃群(空母「ロナルド・レーガン」)とにらみあった中国海軍が、こんどは、東シナ海で日本の空母艦隊と張りあわなければならなくなる。
中国が今回の訓練に動員した山東は、ウクライナから買った未完成の船体を完成させた「遼寧」につづく2隻目の空母だが、3隻目となる国産空母の完成も間近という。
韓国が空母の建設を急ぐのは、独島防衛のためだが、一方、中国は、尖閣諸島の領有と同海域の制海権確保が目的である。
竹島は、日本と朝鮮半島のほぼ中間にあって、対馬海峡から日本海へいたる入口である。竹島から朝鮮半島までは200キロ強で、ここに、日本が強力なレーダーを建てたら、日本海と朝鮮半島を一部が日本の監視下におかれる。
尖閣列島は、中国本土と台湾、沖縄本島のほぼ中央にあって、中国大陸から太平洋にでる上海ルート(東シナ海)の最大の妨害になる。北京から太平洋にでるもう一つが香港ルート(南シナ海)だが、北京から2000キロも離れているばかりか、その場合、艦船は、台湾近海を南下しなければならない。
日本人は、竹島や尖閣列島について、ちっぽけな島と思っているが、両方ともきわめて重大な軍事的要衝である。そのテーマに、マスコミや評論家がふれないのは、憲法九条ばかりに気をとられて、世界の防衛感覚に疎くなっているからであろう。
自衛隊ができる2年前、韓国は、島根県の一部だった竹島を李承晩ラインの内側にとりこんで略奪し、このとき、韓国は、竹島周辺で漁をしていた日本の漁船328隻を拿捕、漁師3929人を拘束して、44人死傷(抑留死亡8人)させている。
軍事力がなければ、当時、北朝鮮よりも国力が低かった韓国からさえこんな酷い扱いをうける。それが国家防衛をめぐる世界の現実で、国民は、軍事力によってまもられるのである。
日本の軍事力は、アメリカ、ロシア、中国、インドに次ぐ世界5位(アメリカの軍事情報サイト/グローバル・ファイヤーパワー2021年版)である。
以下韓国、フランス、イギリスとつづくが、インドは、自前で兵器をつくることができないので、日本が、事実上、第4位ということになる。
中国と比較して、人口で9%、国土で5%以下の日本が軍事力でその中国に次いで4位になっているのは、アメリカがアジア防衛の義務を日本に負わせているからで、日米安保条約とNATO(北大西洋条約機構)が自由世界の安全と安定をまもっている。
ちなみに、軍事力1位のアメリカの軍事費は、2〜10位の軍事費の合計をこえる。NATOや日米安保条約、クアッド(日米豪印戦略対話)およびファイブ・アイズ協定(米英加豪ニュージーランド)は、アメリカの軍事的優位を基礎としたもので、世界最強の安全保障である。
新型兵器開発も、アメリカがリードして、ロシアや中国が後を追う。
現在、この米・ロ・中が熾烈に開発競争をすすめているのが次世代の兵器のエースといわれる「極超音速ミサイル」である。発射後、高高度で分離されたのちマッハ10〜20の速度で飛行して目標を攻撃する。飛行経路も変えられるため、THAADなど既存のミサイル防衛システムでは迎撃できない。
「極超音速ミサイル」の登場によって、旧来のミサイル防衛システムが役立たずになってしまったのである。
日本は、2026年までに「極超音速ミサイル」を開発して沖縄に配備する計画である。専守防衛の縛りから射程500キロにおさえているが、沖縄から尖閣諸島まで(420キロ)なら十分である。日本が実戦配備すれば、世界で4番目の極超音速ミサイル保有国になる。
日本が導入を検討したJASSM(ロッキード社)は戦闘機から発射される空対地ミサイルで、位置情報を入力すれば低空飛行で900キロメートル先の目標物を精密打撃することができる。
だが、費用をめぐって日米間協議が難航するなどして、岸信夫防衛相が打ち切りをきめた。
JASSMは幻となったが、実情は、日本が独自の技術で空対地「極超音速ミサイル」を開発できる見通しが立ったからであろう。
日本は、直系1000メートルに満たない小惑星から岩石をもちかえる宇宙工学(小惑星探査機はやぶさ)と高度なロケット技術をもち、これまで7基の軍事偵察衛星を打ち上げてきた。
この国産ロケット(イプシロン)は大陸間弾道ミサイル(ICBM)に転用できる。
中国が実力で尖閣列島を奪えないのも、軍事費をいくら増やしても、韓国が日本を圧迫できないのも、日本の軍事テクノロジーが、世界最高の水準にあるからである。
次回は、核保有をふくめた日本の安全保障の今後を展望してみよう。
韓国の国防費が、いまのペースでは、6年後には、日本の現在の防衛予算を上回る。
文在寅政権が、GDPの2・2%だった国防予算を2・5%へと上昇させたからで、このままでは、2020年の段階で50兆1527億ウォン(約4兆7000億円)だった国防費が、6年後には5兆4000億円を超える計算になる。
ちなみに、2020年の日本の防衛予算は5兆3222億円だった。
韓国が、国防費の増強にやっきになっているのは、北朝鮮との戦争に備えてのことではない。韓国は、現在、空母の建造を計画しているが、陸上戦となる北朝鮮との戦争に空母など必要ない。
近い将来、韓国が空母を保有するであろう理由は、竹島(韓国名・独島)の占有を恒久化させるためである。韓国の有力紙・中央日報はこう報じる。
「日本は、韓国の領土である独島を自国の土地だと執拗に主張している。そんな日本が空母戦団を独島沖に布陣させ、武力示威をおこなえば、韓国も、空母戦団で対処しなければならない。空母戦団がなければ無防備状態で日本の武力示威を許してしまうことになる」
韓国が危機感を強めたのは、2018年、安倍晋三元首相が「いずも」と「かが」を空母に改造することを閣議決定したからである。
現在、日本は、1万9000トン級のヘリコプター母艦「ひゅうが」と「いせ」を運用している。これにくわえて、2023年までに、2万7000トン級多目的駆逐艦「いずも」と「かが」の2隻を、F35Bを艦載機とする空母に改造しようというのである。さらに、将来的には5万トン級空母(仮称「ほうしょう」)も建造するという。
指揮塔が船の右舷中央にあって、滑走路用の甲板を大きくとってある日本のヘリコプター搭載艦や多目的駆逐艦は、設計時点から垂直離着陸ステルス戦闘機F35Bを搭載する航空母艦に改造することを念頭に建造されている。
日本の空母を警戒しているのは、韓国だけではない。南シナ海でアメリカとしのぎを削っている中国にとって、日本の空母は、大きな脅威になる。
2020年、中国は、渤海で2日間にわたって、空母「山東」の実戦配備となる訓練を実施したが、これは、日米の「インド太平洋戦略」への牽制だったのはいうまでもない。
日本の空母打撃群には、航空母艦を中心に、駆逐艦やミサイル巡洋艦、攻撃型潜水艦や対潜哨戒機、上陸用舟艇や補給艦、さらに、軍事衛星とむすばれたレーダー網とアメリカと共有する情報ネットワークがくわわる。
南シナ海で、アメリカの空母打撃群(空母「ロナルド・レーガン」)とにらみあった中国海軍が、こんどは、東シナ海で日本の空母艦隊と張りあわなければならなくなる。
中国が今回の訓練に動員した山東は、ウクライナから買った未完成の船体を完成させた「遼寧」につづく2隻目の空母だが、3隻目となる国産空母の完成も間近という。
韓国が空母の建設を急ぐのは、独島防衛のためだが、一方、中国は、尖閣諸島の領有と同海域の制海権確保が目的である。
竹島は、日本と朝鮮半島のほぼ中間にあって、対馬海峡から日本海へいたる入口である。竹島から朝鮮半島までは200キロ強で、ここに、日本が強力なレーダーを建てたら、日本海と朝鮮半島を一部が日本の監視下におかれる。
尖閣列島は、中国本土と台湾、沖縄本島のほぼ中央にあって、中国大陸から太平洋にでる上海ルート(東シナ海)の最大の妨害になる。北京から太平洋にでるもう一つが香港ルート(南シナ海)だが、北京から2000キロも離れているばかりか、その場合、艦船は、台湾近海を南下しなければならない。
日本人は、竹島や尖閣列島について、ちっぽけな島と思っているが、両方ともきわめて重大な軍事的要衝である。そのテーマに、マスコミや評論家がふれないのは、憲法九条ばかりに気をとられて、世界の防衛感覚に疎くなっているからであろう。
自衛隊ができる2年前、韓国は、島根県の一部だった竹島を李承晩ラインの内側にとりこんで略奪し、このとき、韓国は、竹島周辺で漁をしていた日本の漁船328隻を拿捕、漁師3929人を拘束して、44人死傷(抑留死亡8人)させている。
軍事力がなければ、当時、北朝鮮よりも国力が低かった韓国からさえこんな酷い扱いをうける。それが国家防衛をめぐる世界の現実で、国民は、軍事力によってまもられるのである。
日本の軍事力は、アメリカ、ロシア、中国、インドに次ぐ世界5位(アメリカの軍事情報サイト/グローバル・ファイヤーパワー2021年版)である。
以下韓国、フランス、イギリスとつづくが、インドは、自前で兵器をつくることができないので、日本が、事実上、第4位ということになる。
中国と比較して、人口で9%、国土で5%以下の日本が軍事力でその中国に次いで4位になっているのは、アメリカがアジア防衛の義務を日本に負わせているからで、日米安保条約とNATO(北大西洋条約機構)が自由世界の安全と安定をまもっている。
ちなみに、軍事力1位のアメリカの軍事費は、2〜10位の軍事費の合計をこえる。NATOや日米安保条約、クアッド(日米豪印戦略対話)およびファイブ・アイズ協定(米英加豪ニュージーランド)は、アメリカの軍事的優位を基礎としたもので、世界最強の安全保障である。
新型兵器開発も、アメリカがリードして、ロシアや中国が後を追う。
現在、この米・ロ・中が熾烈に開発競争をすすめているのが次世代の兵器のエースといわれる「極超音速ミサイル」である。発射後、高高度で分離されたのちマッハ10〜20の速度で飛行して目標を攻撃する。飛行経路も変えられるため、THAADなど既存のミサイル防衛システムでは迎撃できない。
「極超音速ミサイル」の登場によって、旧来のミサイル防衛システムが役立たずになってしまったのである。
日本は、2026年までに「極超音速ミサイル」を開発して沖縄に配備する計画である。専守防衛の縛りから射程500キロにおさえているが、沖縄から尖閣諸島まで(420キロ)なら十分である。日本が実戦配備すれば、世界で4番目の極超音速ミサイル保有国になる。
日本が導入を検討したJASSM(ロッキード社)は戦闘機から発射される空対地ミサイルで、位置情報を入力すれば低空飛行で900キロメートル先の目標物を精密打撃することができる。
だが、費用をめぐって日米間協議が難航するなどして、岸信夫防衛相が打ち切りをきめた。
JASSMは幻となったが、実情は、日本が独自の技術で空対地「極超音速ミサイル」を開発できる見通しが立ったからであろう。
日本は、直系1000メートルに満たない小惑星から岩石をもちかえる宇宙工学(小惑星探査機はやぶさ)と高度なロケット技術をもち、これまで7基の軍事偵察衛星を打ち上げてきた。
この国産ロケット(イプシロン)は大陸間弾道ミサイル(ICBM)に転用できる。
中国が実力で尖閣列島を奪えないのも、軍事費をいくら増やしても、韓国が日本を圧迫できないのも、日本の軍事テクノロジーが、世界最高の水準にあるからである。
次回は、核保有をふくめた日本の安全保障の今後を展望してみよう。
2021年12月06日
なぜ日本は中道政治≠実現できないのか6
●敵と味方の区別がつかない日本の平和主義
「政治とは敵と味方の峻別である」とドイツの政治学者シュミットは断じた。
一神教は、神と悪魔がたたかう一元論なので、このような考え方がでてくるのであろう。
こうもいった。「敵と味方の峻別ができなければ、政治的主体としての国家も国民も消滅する」
敵と味方の峻別が、国家や国民を外敵からまもってきたというのである。
中国から朝鮮を征服して、中東から欧州までをおびやかしたモンゴル帝国が日本侵略に二度、失敗したのも、アジアを植民地化した列強が日本だけに手をだせなかったのも、日本には、敵と味方を峻別する意識(攘夷)がつよかったからである。
敵・味方意識の乏しさから国家を危うくしたのが、かつての朝鮮だった。
日韓併合条約は、巨額の外債に苦しむ世界最貧国の朝鮮が、皇帝(純宗)と内閣(李完用)、議会を立てて申し入れてきたもので、日本は朝鮮の巨額外債を代弁して、朝鮮国家を近代国家に立て直すべく国家予算並みの資金をつぎこんだ。
韓国併合(1910年)の15年前、日本は、下関条約(日清講和条約)の第一条で、清国に朝鮮の独立を約束させたが、その2年後、李氏朝鮮王の高宗がロシア公使館で公務をとるなどして、みずから独立を放棄している。
朝鮮の独立は、清国やロシアにたいする防衛上、日本にとって、欠くべからざるもので、朝鮮の事大主義が日露戦争(1904年)の原因となったのは周知のことである。
日韓併合は、アジアの安定と日本の安全にとって、最善の策であったことは英米をはじめ列強がみとめるところで、たとえ、日本が朝鮮の主権を侵犯していたとしても、当時の国際法慣行からみて、なんら違法性はなかった。
韓国が、敵と味方の区別がつかないのはいまも同じで、韓国の次期大統領の有力候補、李在明は「日本が植民地支配にたいして痛切な反省と謝罪の姿勢をもつなら韓日関係に未来はある」などと堂々と公言している。
体制が異なる中国や北朝鮮に無警戒な一方、日本を仮想敵国にして軍事費を増やしつづけているすがたは異様というほかない。
戦後日本の平和勢力≠焉A敵と味方の区別がつかない政治的無能者である。
代表格が、作家の大江健三郎と故瀬戸内寂聴で、憲法九条の熱烈な信奉者である。大江が「九条の会」の発起人なら寂聴は「9条が日本の平和をまもっている」と半世紀にわたって主張しつづけて、若い芸能人や作家、タレントらに大きな影響をあたえてきた。
憲法9条は、戦勝国の占領政策である武装解除指令(GHQ指令第一号/陸海軍解体)を法令化したもので「ハーグ陸戦条約43条(国の権力が占領者の手に移ったとき、占領者は占領地の現行法律を尊重する)」の条文にも反する。
日本の平和主義者が、旧敵がつくって、国際法にも違法の疑いがある9条を奉っているのは異常で、憲法で反戦・平和を謳うなら、占領軍がつくった屈辱的な9条を破棄して、自主憲法で、堂々と平和主義を謳えばよいのである。
だが、そうなると、国連憲章や国際法、自然法や習慣法、日米安保条約との整合性がもとめられて、ノーテンキな日本の平和主義は空中分解する。それを避けるために、かれらは、ことさらに9条をもちあげて、これをまもろうとするのである。
「9条主義者」もまた敵と味方の区別のつかない政治オンチで、国民をまもる国家を敵とみなして、反日・反国家を叫ぶ。国家は悪、個人は善という数百年も昔の市民革命のセンスに立って、ひたすら、国家を呪うのである。
大江が、わたしは、日本人ではなく国際人なので、文化勲章を拒否してノーベル章をもらったと豪語すれば、瀬戸内は、9条が国家を縛って、戦後平和がまもられてきたとうったえてきた。
国家も防衛も念頭にないのは、人間は、生まれながらにして、自由と平等をあたえられているというルソー主義に立っているからである。自然状態において、万人が幸せに生きる権利をもっているにもかかわらず、人々が不幸なのは、国家や社会制度、私有財産制のせいとルソーはいう。
ルソーの「自然に帰れ」が、敵と味方の区別がつかない錯綜で、自然状態におかれたら人間は3日も生きていないだろう。自然状態こそが敵で、ルソーが異を唱えたホッブズをあげるまでもなく「万人の戦争」を防ぎ、国民の生命や生活、安全をまもってきたのは、人々を野蛮な自然状態から救いだした文化や文明、国家だった。
日本の平和主義者は、大江や寂聴の追従者ばかりで、反日・反国家と反歴史を叫び、ひたすら、人間主義を賛美する。
そして、市民を名乗る。日本国民ではなく、地球市民だというのである。
「人類みな兄弟」や「武器を捨てると平和になる」というのは、平和主義ではなく、ユートピアニズム(空想主義)やコスモポリタリズム(世界市民主義)で、これらに欠けているのが、道徳や品性、人格などのモラルである。
国家や社会制度の恩恵に与っておきながら、その国家を罵り、足蹴にするのは、恩知らずにして、モラルが低いからで、平和主義とはなんの関係もない。
モラルの原義は、モーレスで、外にあらわれた社会的な規範のことである。
ここから、精神面のモラール(士気)やモラル(徳性)が派生したという。
モラルは、宗教とのむすびつきがつよく、外国人は、無宗教の日本人が高いモラルをもっていることに首をひねる。
一神教(創唱宗教)の外国人には、多神教(自然宗教)の日本人が無神論にみえるのである。
日本は、自然や国土、歴史を神格として、天皇が最高神官に、国民が氏子となる祭祀国家である。
日本人のモラルの高さは、自然や国土、歴史など、国体との一体感からくるもので、絶対神と信仰契約する西洋の個人主義的な宗教とは、宗教観が異なる。
日本人のモラルの高さも、宗教や文化、歴史にもとづいていたのである。
反日・反国家をふりまわす平和主義者がインチキなのは、じぶんをまもっているものに牙をむき、警戒すべき敵に媚びを売るからである。
日本の平和勢力・護憲派は、敵と味方の区別がつかない政治的未熟者だったのである。
ちなみに、政治的円熟というのは、自己防衛の能力が高いことをいう。
次回は、国家防衛という国民的テーマについて考えてみよう。
「政治とは敵と味方の峻別である」とドイツの政治学者シュミットは断じた。
一神教は、神と悪魔がたたかう一元論なので、このような考え方がでてくるのであろう。
こうもいった。「敵と味方の峻別ができなければ、政治的主体としての国家も国民も消滅する」
敵と味方の峻別が、国家や国民を外敵からまもってきたというのである。
中国から朝鮮を征服して、中東から欧州までをおびやかしたモンゴル帝国が日本侵略に二度、失敗したのも、アジアを植民地化した列強が日本だけに手をだせなかったのも、日本には、敵と味方を峻別する意識(攘夷)がつよかったからである。
敵・味方意識の乏しさから国家を危うくしたのが、かつての朝鮮だった。
日韓併合条約は、巨額の外債に苦しむ世界最貧国の朝鮮が、皇帝(純宗)と内閣(李完用)、議会を立てて申し入れてきたもので、日本は朝鮮の巨額外債を代弁して、朝鮮国家を近代国家に立て直すべく国家予算並みの資金をつぎこんだ。
韓国併合(1910年)の15年前、日本は、下関条約(日清講和条約)の第一条で、清国に朝鮮の独立を約束させたが、その2年後、李氏朝鮮王の高宗がロシア公使館で公務をとるなどして、みずから独立を放棄している。
朝鮮の独立は、清国やロシアにたいする防衛上、日本にとって、欠くべからざるもので、朝鮮の事大主義が日露戦争(1904年)の原因となったのは周知のことである。
日韓併合は、アジアの安定と日本の安全にとって、最善の策であったことは英米をはじめ列強がみとめるところで、たとえ、日本が朝鮮の主権を侵犯していたとしても、当時の国際法慣行からみて、なんら違法性はなかった。
韓国が、敵と味方の区別がつかないのはいまも同じで、韓国の次期大統領の有力候補、李在明は「日本が植民地支配にたいして痛切な反省と謝罪の姿勢をもつなら韓日関係に未来はある」などと堂々と公言している。
体制が異なる中国や北朝鮮に無警戒な一方、日本を仮想敵国にして軍事費を増やしつづけているすがたは異様というほかない。
戦後日本の平和勢力≠焉A敵と味方の区別がつかない政治的無能者である。
代表格が、作家の大江健三郎と故瀬戸内寂聴で、憲法九条の熱烈な信奉者である。大江が「九条の会」の発起人なら寂聴は「9条が日本の平和をまもっている」と半世紀にわたって主張しつづけて、若い芸能人や作家、タレントらに大きな影響をあたえてきた。
憲法9条は、戦勝国の占領政策である武装解除指令(GHQ指令第一号/陸海軍解体)を法令化したもので「ハーグ陸戦条約43条(国の権力が占領者の手に移ったとき、占領者は占領地の現行法律を尊重する)」の条文にも反する。
日本の平和主義者が、旧敵がつくって、国際法にも違法の疑いがある9条を奉っているのは異常で、憲法で反戦・平和を謳うなら、占領軍がつくった屈辱的な9条を破棄して、自主憲法で、堂々と平和主義を謳えばよいのである。
だが、そうなると、国連憲章や国際法、自然法や習慣法、日米安保条約との整合性がもとめられて、ノーテンキな日本の平和主義は空中分解する。それを避けるために、かれらは、ことさらに9条をもちあげて、これをまもろうとするのである。
「9条主義者」もまた敵と味方の区別のつかない政治オンチで、国民をまもる国家を敵とみなして、反日・反国家を叫ぶ。国家は悪、個人は善という数百年も昔の市民革命のセンスに立って、ひたすら、国家を呪うのである。
大江が、わたしは、日本人ではなく国際人なので、文化勲章を拒否してノーベル章をもらったと豪語すれば、瀬戸内は、9条が国家を縛って、戦後平和がまもられてきたとうったえてきた。
国家も防衛も念頭にないのは、人間は、生まれながらにして、自由と平等をあたえられているというルソー主義に立っているからである。自然状態において、万人が幸せに生きる権利をもっているにもかかわらず、人々が不幸なのは、国家や社会制度、私有財産制のせいとルソーはいう。
ルソーの「自然に帰れ」が、敵と味方の区別がつかない錯綜で、自然状態におかれたら人間は3日も生きていないだろう。自然状態こそが敵で、ルソーが異を唱えたホッブズをあげるまでもなく「万人の戦争」を防ぎ、国民の生命や生活、安全をまもってきたのは、人々を野蛮な自然状態から救いだした文化や文明、国家だった。
日本の平和主義者は、大江や寂聴の追従者ばかりで、反日・反国家と反歴史を叫び、ひたすら、人間主義を賛美する。
そして、市民を名乗る。日本国民ではなく、地球市民だというのである。
「人類みな兄弟」や「武器を捨てると平和になる」というのは、平和主義ではなく、ユートピアニズム(空想主義)やコスモポリタリズム(世界市民主義)で、これらに欠けているのが、道徳や品性、人格などのモラルである。
国家や社会制度の恩恵に与っておきながら、その国家を罵り、足蹴にするのは、恩知らずにして、モラルが低いからで、平和主義とはなんの関係もない。
モラルの原義は、モーレスで、外にあらわれた社会的な規範のことである。
ここから、精神面のモラール(士気)やモラル(徳性)が派生したという。
モラルは、宗教とのむすびつきがつよく、外国人は、無宗教の日本人が高いモラルをもっていることに首をひねる。
一神教(創唱宗教)の外国人には、多神教(自然宗教)の日本人が無神論にみえるのである。
日本は、自然や国土、歴史を神格として、天皇が最高神官に、国民が氏子となる祭祀国家である。
日本人のモラルの高さは、自然や国土、歴史など、国体との一体感からくるもので、絶対神と信仰契約する西洋の個人主義的な宗教とは、宗教観が異なる。
日本人のモラルの高さも、宗教や文化、歴史にもとづいていたのである。
反日・反国家をふりまわす平和主義者がインチキなのは、じぶんをまもっているものに牙をむき、警戒すべき敵に媚びを売るからである。
日本の平和勢力・護憲派は、敵と味方の区別がつかない政治的未熟者だったのである。
ちなみに、政治的円熟というのは、自己防衛の能力が高いことをいう。
次回は、国家防衛という国民的テーマについて考えてみよう。