2022年03月13日

 ウクライナに核があったらロシアは攻めたか?@

 ●かつて世界第3位の核大国だったウクライナ
 ウクライナが核弾頭およびモスクワに届くミサイルをもっていたら、今回のウクライナ侵攻はあったろうか?
 なかったろう。核保有国への武力攻撃は、ありえないからで、核保有国への攻撃は、みずから核の報復をうける立場へまわる愚行で、一片の合理性もない。
 かつて、ウクライナは、世界第3位の核保有国(核弾頭1240発/ICBM176発)だったが、1991のソビエト連邦の崩壊によって、アメリカと中国の手によって、核の撤去がなされた。このとき、安全保障の問題について中国と、そして、財政支援についてアメリカと合意がなされた。
 現在、ウクライナの軍事力は、カナダの一つ上の世界22位だが、ロシアと10対1の差があって、核も長距離ミサイルももっていない。一気にふみつぶして、ゼレンスキー大統領以下、閣僚と軍人を処罰したのち、武装解除をおこなって、ウクライナをロシアとヨーロッパの緩衝地帯することなどプーチンには朝飯前に思えたろう。
 ウクライナは、かつて、ソ連の一部だったが、ソ連崩壊後、西側に寝返ってNATO(北大西洋条約機構)やEC(欧州共同体)にくわわろうとした。ウクライナは、地政学的には、ロシアと欧州の中間にあって、NATOにとっては願ってもない攻撃的な前衛地帯となる。
 プーチンがウクライナを踏みつぶしたくなる気持ちもわからないではない。
 事実、アメリカは、日本に、二発の原爆を落としてのちそれをおこなった。
 日本は、中国の利権を一人占めしたばかりか、アメリカの勢力圏だった太平洋に南洋諸島(マリアナ諸島、カロリング諸島、パラオ諸島、マーシャル諸島など)をもって、ハワイの真珠湾に奇襲をかけて大損害をあたえた。
 アメリカが日本に原爆を投下して、武装解除したのは、二度と白人に歯向かわせないためだった。
 戦勝国がおこなった武装解除をヘーワケンポー≠ニ崇めているのが日本の護憲派で、原爆を落とされて、腰が抜けてしまったのである。

 ●アメリカと同じことをやっているだけだ
 ロシアがウクライナでやったことは、イラクの核保有を主張して、フセインおよび十万人のイラク兵を殺した(イラク戦争)とどこがちがうのか。
 プーチンが「ウクライナは核兵器を取得して核保有国の地位を得ようとしている。見過ごすわけにはいかない」といいだしたのは、アメリカと同じことをやっているのだというアッピールで、案の定、アメリカは一言もない。
 アメリカとちがうのは、核攻撃をしていないことだが、プーチンは、核兵器のオペレーションチームにスタンバイを命じている。
 プーチンが核のボタンを押すことはないだろいうというのは楽観論である。
 プーチンは政治家ではなく、KGB出身の軍人で、ソ連崩壊後、2次にわたるチェチェン紛争の指揮をとったが、その残虐非道な指揮ぶりが20年経った現在でも語り草になっている。
 プーチンは「グロズヌイ総攻撃」で、市民20万人の全員を殺戮したばかりか、チェチェン共和国人口120万人のうち4分の1を殺害して、親露政権ができた後も、チェチェンにたいする弾圧、虐殺をやめようとしなかった。
 プーチンを後任に指名したエリツィン大統領が見込んだのもその冷血漢ぶりで、大ロシアを背負って西側陣営に立ちむかえるのは、血も涙もないプーチンしかいないと思ったのである。
 そのプーチンにとって、ウクライナは第二のチェチェンで、原爆で落としたところで良心の呵責などない。

 ●ウクライナと中国がむすんでいる「核の防衛協定」
 ウクライナは、10世紀以前、ドニェプル川沿いに南下して建国したキエフ公国が原点である。ロシア(モスクワ公国)は、そのキエフから分離した国である。キエフ公国は、13世紀にモンゴルに滅ぼされたのち、数奇な運命をたどってソ連にのみこまれたが、その後も、スターリンの棄民政策で1000万人が餓死、第二次大戦では、ナチスとソ連軍の両方から攻撃をうけて国民の5人に1人、1000万が戦死するという悲惨な体験をもっている。
 そのウクライナが、キエフが陥落したくらいで、かんたんに白旗をかかげるはずはない。
 チェチェンは、人口約120万人で、日本の四国ほどの小さな国だったが、停戦まで15年も抵抗しつづけた。
 ウクライナは、面積が日本の1・6倍、人口4300万人余りで、1991年から完全に独立して、総兵力は20万人、世界22位の軍事力をもち、戦闘可能な予備役兵も90万人いる。兵力数では、侵攻したロシア軍(15万人)の7倍以上になる。
 ロシアが、中東諸国やシリア出身の外国人志願兵16000人を受けいれたのは、6000人が死亡(CNN)したロシア軍歩兵を補給するためで、チェチェンやアフガンを見ても、この戦争が、1週間や10日で終わる短期決戦ではないことは明らかだろう。
 仲介者が必要となるが、停戦調停をおこなっているトルコがNATOのメンバーでは、おのずと、限界がある。
 なんの貢献もできない西側に代わって、中国がのりだすことが大事で、中国とウクライナのあいだには、核の防衛協定である「ヤヌコビッチ大統領(ウクライナ)と習近平国家主席の合意書(「ウクライナへの安全保証の提供に関する声明」)」が存在する。
 中央アジアから東アジアにいたる習近平の「一帯一路」と、プーチンの大ロシア主義は利害が対立する。
 まして、ロシアがウクライナに核攻撃をおこなえば、中国との蜜月が破れて、中ソ対立が決定的になる。
 次回は、ウクライナ戦争における中国と日本のはたすべき役割にふれよう。
posted by office YM at 01:19| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする