2022年03月27日

 ウクライナに核があったらロシアは攻めたか?B

 ●民主主義を叫ぶ日本人が理解できない祖国愛
 ゼレンスキー大統領の国会演説のあと、橋下徹はこう吼えた。
「ウクライナ国民が生命をかけてたたかうこの戦争に合理性はあるのか」
 どこかで聞いたセリフである。
「男系男子のみが皇位を継承できる皇室典範に合理性(論理必然)があるのか」
 山尾志桜里元衆議院議員(民進党政調会長)が放った一言だった。
 テレビ(「サンデー・ジャポン」)は杉村太蔵に「片方の国(ウクライナ)に加担するのは日本の外交として正しいのか」といわせたが、この男は、母子を死なせた池袋の交通事故で、被告飯塚幸三(旧通産省幹部)に同調して「無罪を主張するのは民主主義のイロハ」といってのけている。
 かと思えば、身障者を国会に送りこむことが民主主義と思いこんでいる衆議院議員の山本太郎は、ゼレンスキー大統領の国会演説に「違和感がある」とのべた。幼児性のつよいかれらには、愛国心や祖国愛、同胞愛、命をかけて国をまもろうとするウクライナ人の合理性をこえた精神や文化を理解できないのである。
 多くの識者が、10倍の軍事力と核弾頭を六千発もつロシアにウクライナが勝てるわけはないと語った。首都キエフの陥落も3日もあれば十分と断言した軍事専門家もいた。
 ところが、ウクライナは、数千人の民間人を虐殺されながら、死に物狂いに闘って、開戦の一か月後、ロシア軍を首都キエフの東35キロの地点まで押し返すなど、各戦線で、ロシア軍を撃破しつつある。
 ウクライナ人もウクライナ兵も「われわれはいくら同胞が殺されても、町を破壊されても負けない」と決意をのべ、キエフのクリチコ市長は「(ロシア兵を)キエフには入れさせない。服従して奴隷になるなら死をえらぶ」と宣言した。
 ウクライナは、合理性や論理必然をこえて、ロシアの侵略から祖国をまもるために命がけでたたかっているのである。
 
 ●ウクライナ人の士気に敗北したロシア軍
 一方、ロシア兵の士気の低下がいちじるしい。ぬかるみにハマった数百台の戦車を捨てて逃亡したのは、動けなくった戦車にイギリスから補給された対戦車砲が浴びせかけられるからである。
 5000人の住民がロシアに連行されたマリウポリでは、ロシアの攻勢がつたえられるが、キエフやマカリフ、イルピンでは、ウクライナ軍が、ほぼ全域を取り返したほか、ロシア海軍がおさえたベルジャンシク港ではウクライナ軍がロシアの揚陸艦を完全破壊して、他のロシア軍艦を敗走させた。
 ロシア軍の戦死者は、1万2千人をこえ、戦車損失400台以上、航空機も100機以上、撃墜されている。ウクライナのスティンガー地対空ミサイルの命中率は抜群で、ウクライナは、同ミサイルをまだ1000基ももっている。
 ロシアの全将校20人余のうち7人が戦死したのは、米英の特殊部隊による作戦で、10回をこえる「ゼレンスキー暗殺隊」の襲撃を予知して撃退したのもこのチームだった。
 
 ●ウクライナとNATO、ロシアと中国という構図
 ウクライナが優勢に立ったといっても、世界で2番目の軍事大国、ロシアがかんたんに敗退すると見るのも早計である。ベラルーシ軍(2万)が参戦してくるとキエフがふたたび危機に陥る。
 NATOは、2014年のロシアによるクリミア併合を機に、バルト三国やポーランドに多国籍部隊を常設している。これにくわえ、今回、新たに、ブルガリア、ルーマニア、ハンガリー、スロバキアの4か国にNATO戦闘部隊を配置した。
 ウクライナに隣接する8か国の兵力の合計は、ポーランドの12万を筆頭にルーマニア7万などの合計30万余で、兵力数ではNATOがロシアの優位に立った。
 だが、第三次世界大戦への懸念から、ポーランドがもとめているウクライナ派兵までは踏み切れていない。
 したがって、経済制裁に重点を置かざるをえないが、ここで問題になるのがロシアを支援する中国のスタンスである。
 ロシアの国家予算は35兆円で、ウクライナ戦争で、1日2兆円以上という巨額の戦費がかかっている。このペースで戦争をすすめてゆくと一か月後にはロシアがなくなっている(木村太郎)計算だが、そうならないのは、バックに中国がついているからである。
 中国国務院の朱鳳蓮報道官が「台湾は、自国に利益のために対ロシア制裁にくわわっている」と批判したのは、台湾がロシアへの電子部品の輸出をとめているからである。朱がこのとき民主進歩党(台湾の与党)を名指しして批判した。そこから、おのずと中国のハラが読める。
 中国がロシアを支援しているのは、台湾侵攻の際、ロシアを後ろ盾とするためで、中国は、ウクライナ戦争の和平仲介に入る気などさらさらないのである。
 
 ●勝敗の決め手となる精密誘導などの電子機器
 ちなみに、ロシアは、GPSや精密誘導などの電子部品を中国と台湾からの輸入に頼っている。台湾が精密機器の輸出を拒否したことで、ロシアは、精密機器の輸入を中国一本に絞らざるをえなくなったが、これは、中国への屈服を意味する。
 精密誘導は、レーザーや全地球測位システム(GPS)を利用してミサイルを目標まで正確に誘導する電子部品で、これがなければ、北朝鮮が発射実験に成功した極超音速ミサイル≠熕サ造できない。
 精密誘導型ミサイルはきわめて高価で、ロシアの戦費が一日2兆円かかるのは、これを一日何百発も撃つからで、ウクライナへの侵攻が停滞しはじめたのは、精密誘導ミサイルの在庫が減ってきたからである。
 精密誘導の電子機器がなければ、敵の射程外から発射できる誘導ミサイルが製造できない。誘導ミサイルを使用しない市街戦では、ウクライナ兵の士気が高く、戦車ばかりか、機関砲付きの軍用車両が1500台以上、破壊されている。

 ●核の傘は存在しない〜「安定と不安定の逆説」
 ロシアに残された手段は、生物・化学兵器と核だけである。
 だが、これらの兵器を使うと、人類は、これまで体験したことがない新しい戦争へひきこまれる。
 エドワード・ルトワック(『ルトワックの日本改造論』)が「核は使われない限り有効」といったように、核は使われると、抑止力を失って、核を保有する本来の意味を失ってしまう。
「使われない核は最大の抑止力となる」という「安定・不安定の逆説」は、アメリカとロシア、インドとパキスタンのような二国間のあいだに通用する論理で、多国間や同盟関係ではではまったく機能しない。
 それどころか、二国間以外の国が核攻撃をうけても、二国間の核抑止力がはたらくため、これを報復できないというジレンマがうみだされる。
 日本が、中国や北朝鮮から核ミサイルを撃ちこまれても、アメリカが反撃しないのは、日本のために、ニューヨークやロスアンゼルスに住んでいるアメリカ人の生命を犠牲にできないからである。
 しかも、それが国家のリーダーの正しい判断ということになれば、同盟は、せいぜい、共同作戦ほどの意味しかなくなってしまう。
 核を保有する二国間同士の同士の核抑止力は、核の非保有国の犠牲によって、却って、強力になる。
 この事実から、原理的にも現象的にも「核の傘は存在しない」ということになる。
 したがって、ロシアは、ウクライナ戦争で、核を使用する可能性があるのである。
 次回は、ウクライナ戦争から日本の核武装、第三次世界大戦の可能性についてのべよう
posted by office YM at 09:49| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする