●左翼がもくろむ常識や習慣、社会通念の破壊
2023年10月26日、最高裁は「戸籍上の性別を変更するには性転換手術が必要」とした特例法を違憲とする判決を下した。
トランスジェンダー女性(じっさいは男性)がおこしていた裁判にたいする判決で、2004年に施行された「性同一性障害特例法」をひっくり返すものだった。
生殖能力がない(生殖腺がないあるいは生殖腺の機能を永続的に欠く状態にある/第三条2)ことという特例法の条件が否定されたわけで、どういうことかといえば、勃起能力のあるおチンチンをもっていても本人が望めば、法的に女性とみとめられるというのである。
女風呂で、おチンチンを勃起させて女体をながめても、じぶんは女性と主張すれば、これがゆるされる。女性の入浴客が騒いで、風呂屋がこの男性を追っ払っても、裁判に訴えられると、最高裁の判例にしたがって、この男性に慰謝料を支払わなくてはならなくなる。
まるでマンガである。マンガは、現実や常識、習慣、社会通念から逸脱した不条理を笑うが、不条理があたりまえになってくると、笑い話というだけではすまなくなる。
「あいちトリエンナーレ」の「表現の不自由」展では、天皇の肖像を燃やして踏みつけることまで表現の自由≠ニされた。当然、反発があって、第三者の異議や抗議、訴えもあったが、すべて却下(名古屋地裁)された。法廷が関与した結果、表現の自由が、権威や他者の誇りや感情をいくら傷つけてもかまわないという暴力的なものに変質してしまったのである。
マンガのようなバカな話でも、法律化されると、キバをむいて襲いかかってくる。
これが社会的な狂気で、ニーチェは、狂気は個人においてまれでも、集団にあっては通例であると名言を残した。
レズやゲイ、両刀づかいは、個人において、ただの性癖である。
男女の性別や結婚、出産や育児、教育から成り立っている社会制度や文化にとって、LGBTは、例外的な少数派で、社会になにか生産的な意味や価値があるわけではない。
だが、LGBT法として法案化されると、社会的な狂気となる。
●女性蔑視の西洋が女性尊敬の日本に男女平等をいうな
好例が男女共同参画法で、男女差別は、必要な場合もあれば逆差別にあたる場合もあって、それぞれ、習慣や常識、社会通念によって使い分けされてきた。
ところが法制化されると、性差の文化に代わって、機械的な制度が登場してきてエンゲルスの『家族・私有財産・国家の起源』のような規範になってしまう。
この書は、マルクスが、モーガンというアメリカの学者の『古代社会』から抜き書いたノートが土台で、マルクスは、古代の社会が男女平等だったことに驚いたという。
西洋の歴史では、女性蔑視があたりまえで、フランス革命の「人権宣言」でさえ女性が除外されている。
西洋が、近代になって、ことさらに男女平等をいうのは、女性蔑視の歴史をひきずってきたからで、中世では、魔女狩りにかこつけて、おびただしい数の未亡人が殺害されている。
マルクス・エンゲルスの「男女平等論」は、西洋の女性観にもとづいたものだが、これを奉っているのが日本共産党委員長の志位和夫である。
志位はこういう。「わたしたちは、資本主義から社会主義・共産主義社会へとすすんだときに、ジェンダー平等が全面的に実現する社会になるという展望をもっています」
こうとものべている。「『家族・私有財産・国家の起源』のなかでエンゲルスが明らかにした女性解放の展望を4点にまとめることができます。第一は社会的な平等、第二は公的産業への復帰、第三は家事義務からの解放、第四は経済的基盤の男女平等です。わたしは、資本主義をのりこえた社会主義・共産主義の社会にすすんでこそ、両性の真の平等が実現するという大展望をもっています」
現在、日本で、ジェンダー平等や女性解放の名を借りて、体制破壊がすすめられている。LGBT法から最高裁のトランスジェンダー(身体と心が別性)判決、同性結婚から夫婦別姓まで、左翼が狙っているのは、男女や家族、親と子、祖先や子孫という歴史的なつながりや観念を断ち切って、社会を根こそぎ崩壊させることである。
これが左翼のすすめている性革命≠ナ、毛沢東並みの文化大革命である。
●折り合わない個人主義の一神教と多神教と集団主義
西洋が個人主義的なのは、一神教だからで、ヒトは、死ねば、一人で天国へ行くか地獄に落ちる。
ユダヤ教もキリスト教もイスラム教も、父なる神は、ヤハウェ(イスラムではアッラー)だけで、神と個人の信仰契約の一神教では、夫婦や親子、家族や祖先、同族や地縁のつながりが断たれている。
小乗仏教も、生まれ変わりをくり返す輪廻転生で、ヒトは、すべて、孤独な個人である。
神道(自然崇拝やアニミズム、大乗仏教)の日本と西洋では宗教的背景がまったく異なる。
日本では、個人が祖先や親子、異性や地縁などでつながっている。
したがって、神との信仰契約も輪廻転生も、天国も地獄もない。
日本という国(国体)は、一神教と個人主義の西洋の国(領地)とちがって多神教と集団主義にささえられている。
それが、祖先や親子、夫婦や地縁という関係で、その大元にいるのが天皇である。
日本人が、親切で善良、町を汚さないのは、個人ではなく、集団として生きているからで、日本が西洋流の個人主義をとれば、夫婦や家族、地縁が空洞化して、国の骨組みが解体してゆく。
LGBT法や生物学的性差の否定、同性婚や夫婦別姓は、西洋の宗教習俗であって、日本の文化構造とまっこうから対立する。
ジェンダー平等は、日本共産党の志位委員長がいうとおり、革命がおきたら実現するだろうが、そのときは、日本は、日本ではなくなって、パレスチナのガザ地区のような生活区(人間部落)にすぎないものになっている。
女性は、解放されているだろうか。とんでもない。男性と無差別化されて、子を産む労働力という社会的機能にすぎないものになっている。
次回は、日本が、戦後、なぜ、歴史伝統を捨てて西洋化に走ったのか、その経緯をふり返ってみよう。
2023年10月29日
2023年10月22日
「自由主義」と「民主主義」の相克と調和26
●殉教思想やテロリズムの本質を知らない日本人
イスラエル・ハマス戦争について、マスコミやネット上で、マスコミ論者の言いたい放題が洪水のようあふれている。
ガザ地区のパレスチナ側から見て、ハマス側の攻撃にも、一応、理があるという善悪論≠ェさかんで、たとえば、橋下徹はハマスの片をもち、重信メイ(重信房子の娘)に至っては、ハマスの代弁者となって、テレビ(TBS『報道1930』)で、4分間の大演説をぶちあげて、怒り心頭に発したイスラエルのギラッド・コーヘン駐日大使が、外国特派員協会で、TBSを非難する記者会見をおこなったほどだった。
こういう偏向報道がまかりとおるのは、日本のマスコミは、左右対決という古い図式でしか世界を見られないからで、イスラエルとハマスの戦争に、日本人が得意とする善玉・悪玉論をもちこんでも話にならない。
かつて、山本七平は、日本人と西欧人、ユダヤ人、アラブ人の思考の差異を峻別した(『比較文化論の試み(1982年)』が、そのなかで、正統と異端という考え方を示している。
自然信仰の日本人は、物事を悪玉と善玉にわけるが、唯一神(ヤハウェ)を信仰するユダヤ教、キリスト教、イスラム教の世界では、善悪ではなく、正統と異端と分ける。
そして、異端は、滅ぼされなければならないとする。善玉と悪玉が両立するのではなく、悪魔と天使を分けて、悪魔を滅ぼそうとするのである。
中世ヨーロッパでは、十字軍の遠征から異端審判や魔女狩り、宗教戦争から近代のホロコーストにいたるまで、残虐な大殺戮がおこなわれて、ドイツ30年戦争では、人口が三分の二にまで減少した。
善玉と悪玉なら、攻守所をかえることもあるが、正統と異端では、片一方が滅ぼされて、生き残ることはできない。
これが、正統をまもるためなら殺戮や自死をえらぶ殉教文化≠ナ一神教の最大の特徴である。
そのことがわからず、日本人が、世界を悪玉と善玉でとらえるのは、改革=善、守旧=悪とするマルクス主義にとらわれているからで、これは、思想的な幼児にひとしい。
●爆弾テロリストのシンパだったTBS報道部長
TBS報道部は、過激派顔負けの極左報道をおこなってきて、数々の前科もある。
役員の大半が全共闘世代で、現役のなかに、核マル・中核派の出身者もいるなど、TBS(毎日新聞系)報道部じたいが極左そのものなのである。
日本の3大テロ事件は、乗客や駅員ら14人が死亡、負傷者数が約6300人にのぼったオウム真理教の地下鉄サリン事件、警察官2人と民間人1人が死亡、27人が負傷したほか12人がリンチで殺された連合赤軍のあさま山荘事件、8人が死亡、376人が怪我をした「東アジア反日武装戦線(大道寺将司)」の三菱重工業本社爆破事件であろう。
TBS報道部長だった金平茂紀は、2017年、病死した大道寺将司を悼んで、東京拘置所まで足を運んで献花している。金平が大道寺につよいシンパシーを抱いたのは、三菱重工業の爆破に使われた高性能爆弾が天皇陛下のお召し列車を爆発するためにつくられたものだったからで、TBS報道部長の金平は反天皇テロリストのシンパだったのである。
左翼TVキャスター5人衆(鳥越俊太郎、田原総一朗、金平茂紀、大谷昭宏、青木理)のなかで、金平はとりわけ極左だが、この5人に死亡した筑紫哲也や岸井成格らをくわえた朝日新聞(テレビ朝日)や毎日新聞(TBS)系の人脈が日本の世論をリードしてきた。
社会の公器≠ニいわれるマスコミが左翼の巣となったのは、スポンサー料と視聴率さえ獲得できればなにをやってもOKだからで、ジャニーズ問題からテロのハマス応援、反日工作までのやりたい放題である。
かつて、TBSは、オウム真理教の「坂本弁護士一家殺害事件」の片棒を担いで日本中から非難を浴びたが、日本の左翼・反日マスコミは、テロと戦争の時代になって、ますます、危険水域に近づきつつある。
●劣勢の自由陣営に襲いかかる非民主国家群
ガザ地区を支配するハマスが音楽フェスティバルの会場を襲って、数百人を虐殺、拉致したのは、音楽フェスティバルが、かれらにとって、悪魔(異教徒)の饗宴だったからで、いくら殺してもハマスは罪意識をかんじない。
イラン革命によって、西洋的で開明的だったイランが闇黒のイスラム国家に変貌して、女性は、ミニスカートから、全身を黒い布で覆うチャド姿に着かえさせられた。
そのイランで、マフラーを巻いて外出した女性が逮捕されて死亡した。これもジハード(=聖戦)というわけだろうが、コーランという男性中心の戒律によって殺されたのは、女性の人権や文化だけではない。
イスラム原理主義が憎むのは、神の預言であるコーランにしたがわない西洋文明そのもので、この西洋文明のなかには、自由や平等、個人主義や民主主義のほか、性的な奔放から音楽、喜劇までがふくまれる。
イランとパレスチナのハマス、レバノンのヒズボラがやろうとしているのは宗教戦争で、かれらの目的は、異教徒であるイスラエルの滅亡と、背後にいるアメリカへの決定的な打撃である。
手段は、テロリズムで、スターリンの粛清やヒトラーのホロコースト、毛沢東の文化大革命、ポルポトの民族虐殺、アルカイダの「9・11事件」と同様の大ジェノサイドである。
第三次世界大戦がおきるなら、集団的殺戮だけを目的とする大惨事となって数億人の犠牲がでるだろうが、これまで、共産主義やファシズム、戦争や民族紛争によって数億人がすでに生命を失っている。
スウェーデンの研究所が「公正な選挙」「基本的人権の尊重」「言論の自由」「女性の社会進出」を基準に世界179か国を分類した結果、自由主義陣営に入った国は60にとどまる一方、非民主的な国がその2倍の119にのぼった。
ロシアと中国、北朝鮮が、イランと連携して、ハマスやヒズボラ、イスラム国やタリバン、アルカイダのようなテロ組織を動員して、自由で民主主義的なアメリカやヨーロッパ、日本に攻撃を仕掛けてこないとはかぎらない。
日本で、LGBT理解増進法をとおして、よろこんでいるが、こんな法律が通用しているのは、個人主義の北欧と、アメリカ文明の影響下にある国々だけである
非民主主義の119か国は、同性婚をみとめていないどころか、同性愛が死刑になる国もあるが、自由主義陣営でも、半数以上は、同性婚をみとめていない。
マスコミが、同性婚をみとめない日本は遅れていると騒いでいるうち、性的放埓さを神への冒涜とするイスラム過激派からロケット弾を撃ち込まれかねないのである。
イスラエル・ハマス戦争について、マスコミやネット上で、マスコミ論者の言いたい放題が洪水のようあふれている。
ガザ地区のパレスチナ側から見て、ハマス側の攻撃にも、一応、理があるという善悪論≠ェさかんで、たとえば、橋下徹はハマスの片をもち、重信メイ(重信房子の娘)に至っては、ハマスの代弁者となって、テレビ(TBS『報道1930』)で、4分間の大演説をぶちあげて、怒り心頭に発したイスラエルのギラッド・コーヘン駐日大使が、外国特派員協会で、TBSを非難する記者会見をおこなったほどだった。
こういう偏向報道がまかりとおるのは、日本のマスコミは、左右対決という古い図式でしか世界を見られないからで、イスラエルとハマスの戦争に、日本人が得意とする善玉・悪玉論をもちこんでも話にならない。
かつて、山本七平は、日本人と西欧人、ユダヤ人、アラブ人の思考の差異を峻別した(『比較文化論の試み(1982年)』が、そのなかで、正統と異端という考え方を示している。
自然信仰の日本人は、物事を悪玉と善玉にわけるが、唯一神(ヤハウェ)を信仰するユダヤ教、キリスト教、イスラム教の世界では、善悪ではなく、正統と異端と分ける。
そして、異端は、滅ぼされなければならないとする。善玉と悪玉が両立するのではなく、悪魔と天使を分けて、悪魔を滅ぼそうとするのである。
中世ヨーロッパでは、十字軍の遠征から異端審判や魔女狩り、宗教戦争から近代のホロコーストにいたるまで、残虐な大殺戮がおこなわれて、ドイツ30年戦争では、人口が三分の二にまで減少した。
善玉と悪玉なら、攻守所をかえることもあるが、正統と異端では、片一方が滅ぼされて、生き残ることはできない。
これが、正統をまもるためなら殺戮や自死をえらぶ殉教文化≠ナ一神教の最大の特徴である。
そのことがわからず、日本人が、世界を悪玉と善玉でとらえるのは、改革=善、守旧=悪とするマルクス主義にとらわれているからで、これは、思想的な幼児にひとしい。
●爆弾テロリストのシンパだったTBS報道部長
TBS報道部は、過激派顔負けの極左報道をおこなってきて、数々の前科もある。
役員の大半が全共闘世代で、現役のなかに、核マル・中核派の出身者もいるなど、TBS(毎日新聞系)報道部じたいが極左そのものなのである。
日本の3大テロ事件は、乗客や駅員ら14人が死亡、負傷者数が約6300人にのぼったオウム真理教の地下鉄サリン事件、警察官2人と民間人1人が死亡、27人が負傷したほか12人がリンチで殺された連合赤軍のあさま山荘事件、8人が死亡、376人が怪我をした「東アジア反日武装戦線(大道寺将司)」の三菱重工業本社爆破事件であろう。
TBS報道部長だった金平茂紀は、2017年、病死した大道寺将司を悼んで、東京拘置所まで足を運んで献花している。金平が大道寺につよいシンパシーを抱いたのは、三菱重工業の爆破に使われた高性能爆弾が天皇陛下のお召し列車を爆発するためにつくられたものだったからで、TBS報道部長の金平は反天皇テロリストのシンパだったのである。
左翼TVキャスター5人衆(鳥越俊太郎、田原総一朗、金平茂紀、大谷昭宏、青木理)のなかで、金平はとりわけ極左だが、この5人に死亡した筑紫哲也や岸井成格らをくわえた朝日新聞(テレビ朝日)や毎日新聞(TBS)系の人脈が日本の世論をリードしてきた。
社会の公器≠ニいわれるマスコミが左翼の巣となったのは、スポンサー料と視聴率さえ獲得できればなにをやってもOKだからで、ジャニーズ問題からテロのハマス応援、反日工作までのやりたい放題である。
かつて、TBSは、オウム真理教の「坂本弁護士一家殺害事件」の片棒を担いで日本中から非難を浴びたが、日本の左翼・反日マスコミは、テロと戦争の時代になって、ますます、危険水域に近づきつつある。
●劣勢の自由陣営に襲いかかる非民主国家群
ガザ地区を支配するハマスが音楽フェスティバルの会場を襲って、数百人を虐殺、拉致したのは、音楽フェスティバルが、かれらにとって、悪魔(異教徒)の饗宴だったからで、いくら殺してもハマスは罪意識をかんじない。
イラン革命によって、西洋的で開明的だったイランが闇黒のイスラム国家に変貌して、女性は、ミニスカートから、全身を黒い布で覆うチャド姿に着かえさせられた。
そのイランで、マフラーを巻いて外出した女性が逮捕されて死亡した。これもジハード(=聖戦)というわけだろうが、コーランという男性中心の戒律によって殺されたのは、女性の人権や文化だけではない。
イスラム原理主義が憎むのは、神の預言であるコーランにしたがわない西洋文明そのもので、この西洋文明のなかには、自由や平等、個人主義や民主主義のほか、性的な奔放から音楽、喜劇までがふくまれる。
イランとパレスチナのハマス、レバノンのヒズボラがやろうとしているのは宗教戦争で、かれらの目的は、異教徒であるイスラエルの滅亡と、背後にいるアメリカへの決定的な打撃である。
手段は、テロリズムで、スターリンの粛清やヒトラーのホロコースト、毛沢東の文化大革命、ポルポトの民族虐殺、アルカイダの「9・11事件」と同様の大ジェノサイドである。
第三次世界大戦がおきるなら、集団的殺戮だけを目的とする大惨事となって数億人の犠牲がでるだろうが、これまで、共産主義やファシズム、戦争や民族紛争によって数億人がすでに生命を失っている。
スウェーデンの研究所が「公正な選挙」「基本的人権の尊重」「言論の自由」「女性の社会進出」を基準に世界179か国を分類した結果、自由主義陣営に入った国は60にとどまる一方、非民主的な国がその2倍の119にのぼった。
ロシアと中国、北朝鮮が、イランと連携して、ハマスやヒズボラ、イスラム国やタリバン、アルカイダのようなテロ組織を動員して、自由で民主主義的なアメリカやヨーロッパ、日本に攻撃を仕掛けてこないとはかぎらない。
日本で、LGBT理解増進法をとおして、よろこんでいるが、こんな法律が通用しているのは、個人主義の北欧と、アメリカ文明の影響下にある国々だけである
非民主主義の119か国は、同性婚をみとめていないどころか、同性愛が死刑になる国もあるが、自由主義陣営でも、半数以上は、同性婚をみとめていない。
マスコミが、同性婚をみとめない日本は遅れていると騒いでいるうち、性的放埓さを神への冒涜とするイスラム過激派からロケット弾を撃ち込まれかねないのである。
2023年10月15日
「自由主義」と「民主主義」の相克と調和25
●日本への原爆投下と都市空襲を謝罪した次期大統領候補
ケネディ元大統領の甥(ロバート・ケネディ・ジュニア)も出馬が予定されている2024年の米大統領選に元イリノイ大学教授で、東アジア研究家として名高いエマニュエル・パストリッチも参戦する。
そのエマニュエル博士のネット配信(ユーチューブ動画/日本語)が、現在、日米で物議をかもしている。
話題になったのは、荻生徂徠の翻訳者として知られる同博士がアメリカ人として、広島・長崎への原爆投下と、日本の都市への空襲について謝罪しているからで、発言中、深々と頭を下げる博士の目には涙さえうかんでいるように見える。同博士は同配信でこうのべる。
「(日本に)勝利したアメリカは、永遠の戦争への道にのりだしました。朝鮮やベトナム、イラン・イラク、アフガニスタン、シリア、そして、ウクライナとアメリカはこれまで必要のない戦争をくり返してきました。現在も、アメリカ国防総省は、ロシアや中国との核戦争の準備をしています。その伝統は、戦時中のマンハッタン計画=核兵器を開発からはじまりました」
「広島と長崎への原爆投下は、必要のない実験的で残酷な犯罪でした。原爆の投下だけでなく、アメリカは、戦争の後半の3年半に2000回以上の空爆をおこないました。そして、日本の木造家屋を燃やすために開発したナパーム弾(焼夷弾)を2040万発も使って、300万人以上の日本の民間人を殺しました。日本の皆様、誠に申し訳ございませんでした」
「これまでアメリカは『戦争を早期に終結させるため』『アメリカ人兵士の命をまもるため』といった口実のもとに原爆投下や都市空襲を正当化してきましたが、すべて、ウソです。いかなる理由も厳然たる事実の前では無効です。事実というのは、数百万人におよぶ無辜の人々の命を奪ったことです。ウソというのは、その事実にたいする理由づけや合理化、言い訳のすべてです」
「アメリカが永遠の戦争≠ニいう連鎖から逃れるには、いかなる釈明も捨てて、日本と日本人に、原爆投下と都市空襲を謝罪しなければなりません」
●反ウクライナ、反イスラエルを叫ぶ橋下徹の幼稚な「因果論」
自民党と太いパイプをもつ政治評論家の加藤清隆とコメンテータの橋下徹のイスラエル・ハマス戦争をめぐるネット上のバトルがちょっとした話題になっている。
結果を重視する現実主義の加藤にたいして、動機や因果を重く見る理念主義の橋下が食ってかかる、いわば、結果論と動機論の衝突だが、法律家や官僚、左翼には、橋下のような理念主義がじつに多い。
橋下は「ウクライナ人は祖国のために戦っている。祖国のために命をかけることは尊いと言っている者は、パレスチナ人が命をかけて祖国をまもる行為を尊いとは言わない」とのべた。ロシアのウクライナ侵攻にたいして、4000万人ウクライナ人は、国を捨てて難民になれといった論理の延長で、親ロシア・親パレスチナの感情がほとばしりでたものであろう。
これにたいして、加藤は「ハマスは、野外音楽会を急襲し、250人以上を殺害し、100人以上を拉致した。母親や乳幼児もふくめて50人以上が惨殺されたキブツもある。これが『祖国をまもる尊い行為』なのか」とやり返した。
激高した橋下は「イスラエルがパレスチナにやってきたことをすこし調べてから言え」「徹底報復の権利を主張できるのは、じぶんに徹底報復を受けるだけの非がない者だけや。そんなことも分からんのか」と食ってかかった。
橋下の理屈は、中学生レベルの因果論で、原爆投下や都市空襲を正当化するアメリカと同一の論理である。
加藤は、ジェノサイドや原爆投下のような残虐行為は、理由の如何を問わずノーという絶対論である。
一方、残虐行為にも動機や因果があるので、よく勉強してからモノをいえというのは相対論で、橋下は、政治や経済から社会一般、ジャニーズ問題にまでくちばしをつっこんで舌先で相手を丸めこむ相対論者である。
弁護士は、強盗殺人や強姦殺人でも、カネさえもらえば、無罪や執行猶予をもとめる職業とあって、常識や一般的な価値観、人間的な感覚がまったく通用しない。
●現実から目をそらせて永遠の平和を唱える日本の平和主義
ノーベル文学賞をもらって、日本の文化勲章を拒否した大江健三郎は「真珠湾を攻撃した日本には原爆を投下されても文句を言う資格などない」といってのけた。
一方、東京裁判で判事を務めたインドのパール判事は広島慰霊碑銘の「安らかに眠って下さい 過ちはくり返しませぬから」いう文言について怒った。原爆投下という過ちを犯したのはアメリカではないか。それなのに、なぜ、日本人は過ちをくり返しませんから≠ニいって謝るのかというのである。
大江健三郎も橋下徹も、原爆慰霊碑銘を書いた雑賀忠義(広島大英文学教授)も、結果と原因をむすびつけて考える因果論者、相対論者である。
因果論や相対論というのは、キリスト教の神学や原罪論、仏教の因果応報のことである。
戦争は、人類共同の罪なので、原爆を落としたほうにも落とされたほうにも罪があるというのは高邁な理想論だが、これは、現実や事実よりも理念や思想を重んじる法律家や官僚、左翼の独特の思考法である。
戦後日本は、吉田茂以来、霞が関(官僚)主導の政治がおこなわれてきた。
その結果、日本の政治から現実主義や絶対論が抜け落ちて、理念主義や相対論ばかりになって、日本人も、頭がお花畑の平和主義者ばかりになった。
「基地のない沖縄を実現」「憲法9条で平和な日本を」「原発ゼロの会(発起人河野太郎ら)」などと喧しいが、沖縄は、地政学的に基地の宿命を逃れることができず、日米軍がでてゆけば、代わりに中国が基地をつくるだけである。
中国やロシアや北朝鮮などの軍事大国に囲まれて、憲法9条の軍事力放棄をいうのも、イランを後ろ盾にしたハマスのイスラエル奇襲攻撃を見て危機感を抱かないのも、平和主義ではなく、危機感喪失の痴呆状態で、平和ボケの度が過ぎているだけである。
●官僚に依存してきた日本が陥った政治的不能
日本の政治は、霞が関にべったり依存してきた。外交は、外務省の米中二元主義(アメリカンスクール/チャイナスクール)で、政治はマスコミの顔色をうかがってばかりのポピュリズム、経済は、財務省・日銀のいいなりとあって、日本の政治は、議員を養う公的機関にすぎなくなっていた。
岸田政権の支持率が下がったのは、国民に不人気のLGBT法案をとおして統一教会の解散命令にもたついたからで、マスコミ世論に媚びて、官僚主導とリベラルに傾いた宏池会の政治的非力が丸出しになったともいえよう。
とくに大きな問題は、宏池会が苦手の外交と防衛で、イスラエルとハマスの戦争拡大で、日本は、エネルギーと防衛の二面において窮地に追いやられる。
日本は、ハマスを支援しているイランから原油を輸入していないが、中東への依存度は92%で、イスラエルとハマスの戦争がペルシャ湾危機に拡大した場合、石油輸入がピンチに陥りかねない。
だが、中東一辺倒の外務省に策はない。埋蔵量が世界一のベネズエラの石油(オリノコタール)は、米系海外資本が撤退後、ほとんど採掘されていないのは、精製に必要な技術がないからだが、日本が本腰をいれればベネズエラの石油が日本のエネルギー事業の救世主になりうる。
日本とベネズエラの資源外交の突破口を開いたのが安倍晋三元総理大臣だったが、外務省にも政界にも、安倍の路線を継ぐ者はいない。
宏池会が政治に弱いのは、池田勇人の下、前尾繁三郎や大平正芳、鈴木善幸や宮澤喜一ら官僚出身者が主流を固めたからで、官僚を使うハラの座った政治家は一人もいなかった。
日本の税収は3年連続で70兆円をこえて、岸田首相が2〜30兆円規模の減税(消費・所得)と給付金を打ち出せば、いつ解散しても、現議席は保てるが、宏池会で宮沢の子分だった岸田はきりだせない。
日銀はインフレ、財務省は減税の恐怖症だからで、岸田には日銀や財務省につめよるハラはない。
次回以降、イスラエルとハマスの戦争と複雑きわまりない中東情勢、米軍が中東へシフトしたのち、単独で、ロシアと北朝鮮、中国と対峙しなければならなくなる日本の立ち位置についてものべよう。
ケネディ元大統領の甥(ロバート・ケネディ・ジュニア)も出馬が予定されている2024年の米大統領選に元イリノイ大学教授で、東アジア研究家として名高いエマニュエル・パストリッチも参戦する。
そのエマニュエル博士のネット配信(ユーチューブ動画/日本語)が、現在、日米で物議をかもしている。
話題になったのは、荻生徂徠の翻訳者として知られる同博士がアメリカ人として、広島・長崎への原爆投下と、日本の都市への空襲について謝罪しているからで、発言中、深々と頭を下げる博士の目には涙さえうかんでいるように見える。同博士は同配信でこうのべる。
「(日本に)勝利したアメリカは、永遠の戦争への道にのりだしました。朝鮮やベトナム、イラン・イラク、アフガニスタン、シリア、そして、ウクライナとアメリカはこれまで必要のない戦争をくり返してきました。現在も、アメリカ国防総省は、ロシアや中国との核戦争の準備をしています。その伝統は、戦時中のマンハッタン計画=核兵器を開発からはじまりました」
「広島と長崎への原爆投下は、必要のない実験的で残酷な犯罪でした。原爆の投下だけでなく、アメリカは、戦争の後半の3年半に2000回以上の空爆をおこないました。そして、日本の木造家屋を燃やすために開発したナパーム弾(焼夷弾)を2040万発も使って、300万人以上の日本の民間人を殺しました。日本の皆様、誠に申し訳ございませんでした」
「これまでアメリカは『戦争を早期に終結させるため』『アメリカ人兵士の命をまもるため』といった口実のもとに原爆投下や都市空襲を正当化してきましたが、すべて、ウソです。いかなる理由も厳然たる事実の前では無効です。事実というのは、数百万人におよぶ無辜の人々の命を奪ったことです。ウソというのは、その事実にたいする理由づけや合理化、言い訳のすべてです」
「アメリカが永遠の戦争≠ニいう連鎖から逃れるには、いかなる釈明も捨てて、日本と日本人に、原爆投下と都市空襲を謝罪しなければなりません」
●反ウクライナ、反イスラエルを叫ぶ橋下徹の幼稚な「因果論」
自民党と太いパイプをもつ政治評論家の加藤清隆とコメンテータの橋下徹のイスラエル・ハマス戦争をめぐるネット上のバトルがちょっとした話題になっている。
結果を重視する現実主義の加藤にたいして、動機や因果を重く見る理念主義の橋下が食ってかかる、いわば、結果論と動機論の衝突だが、法律家や官僚、左翼には、橋下のような理念主義がじつに多い。
橋下は「ウクライナ人は祖国のために戦っている。祖国のために命をかけることは尊いと言っている者は、パレスチナ人が命をかけて祖国をまもる行為を尊いとは言わない」とのべた。ロシアのウクライナ侵攻にたいして、4000万人ウクライナ人は、国を捨てて難民になれといった論理の延長で、親ロシア・親パレスチナの感情がほとばしりでたものであろう。
これにたいして、加藤は「ハマスは、野外音楽会を急襲し、250人以上を殺害し、100人以上を拉致した。母親や乳幼児もふくめて50人以上が惨殺されたキブツもある。これが『祖国をまもる尊い行為』なのか」とやり返した。
激高した橋下は「イスラエルがパレスチナにやってきたことをすこし調べてから言え」「徹底報復の権利を主張できるのは、じぶんに徹底報復を受けるだけの非がない者だけや。そんなことも分からんのか」と食ってかかった。
橋下の理屈は、中学生レベルの因果論で、原爆投下や都市空襲を正当化するアメリカと同一の論理である。
加藤は、ジェノサイドや原爆投下のような残虐行為は、理由の如何を問わずノーという絶対論である。
一方、残虐行為にも動機や因果があるので、よく勉強してからモノをいえというのは相対論で、橋下は、政治や経済から社会一般、ジャニーズ問題にまでくちばしをつっこんで舌先で相手を丸めこむ相対論者である。
弁護士は、強盗殺人や強姦殺人でも、カネさえもらえば、無罪や執行猶予をもとめる職業とあって、常識や一般的な価値観、人間的な感覚がまったく通用しない。
●現実から目をそらせて永遠の平和を唱える日本の平和主義
ノーベル文学賞をもらって、日本の文化勲章を拒否した大江健三郎は「真珠湾を攻撃した日本には原爆を投下されても文句を言う資格などない」といってのけた。
一方、東京裁判で判事を務めたインドのパール判事は広島慰霊碑銘の「安らかに眠って下さい 過ちはくり返しませぬから」いう文言について怒った。原爆投下という過ちを犯したのはアメリカではないか。それなのに、なぜ、日本人は過ちをくり返しませんから≠ニいって謝るのかというのである。
大江健三郎も橋下徹も、原爆慰霊碑銘を書いた雑賀忠義(広島大英文学教授)も、結果と原因をむすびつけて考える因果論者、相対論者である。
因果論や相対論というのは、キリスト教の神学や原罪論、仏教の因果応報のことである。
戦争は、人類共同の罪なので、原爆を落としたほうにも落とされたほうにも罪があるというのは高邁な理想論だが、これは、現実や事実よりも理念や思想を重んじる法律家や官僚、左翼の独特の思考法である。
戦後日本は、吉田茂以来、霞が関(官僚)主導の政治がおこなわれてきた。
その結果、日本の政治から現実主義や絶対論が抜け落ちて、理念主義や相対論ばかりになって、日本人も、頭がお花畑の平和主義者ばかりになった。
「基地のない沖縄を実現」「憲法9条で平和な日本を」「原発ゼロの会(発起人河野太郎ら)」などと喧しいが、沖縄は、地政学的に基地の宿命を逃れることができず、日米軍がでてゆけば、代わりに中国が基地をつくるだけである。
中国やロシアや北朝鮮などの軍事大国に囲まれて、憲法9条の軍事力放棄をいうのも、イランを後ろ盾にしたハマスのイスラエル奇襲攻撃を見て危機感を抱かないのも、平和主義ではなく、危機感喪失の痴呆状態で、平和ボケの度が過ぎているだけである。
●官僚に依存してきた日本が陥った政治的不能
日本の政治は、霞が関にべったり依存してきた。外交は、外務省の米中二元主義(アメリカンスクール/チャイナスクール)で、政治はマスコミの顔色をうかがってばかりのポピュリズム、経済は、財務省・日銀のいいなりとあって、日本の政治は、議員を養う公的機関にすぎなくなっていた。
岸田政権の支持率が下がったのは、国民に不人気のLGBT法案をとおして統一教会の解散命令にもたついたからで、マスコミ世論に媚びて、官僚主導とリベラルに傾いた宏池会の政治的非力が丸出しになったともいえよう。
とくに大きな問題は、宏池会が苦手の外交と防衛で、イスラエルとハマスの戦争拡大で、日本は、エネルギーと防衛の二面において窮地に追いやられる。
日本は、ハマスを支援しているイランから原油を輸入していないが、中東への依存度は92%で、イスラエルとハマスの戦争がペルシャ湾危機に拡大した場合、石油輸入がピンチに陥りかねない。
だが、中東一辺倒の外務省に策はない。埋蔵量が世界一のベネズエラの石油(オリノコタール)は、米系海外資本が撤退後、ほとんど採掘されていないのは、精製に必要な技術がないからだが、日本が本腰をいれればベネズエラの石油が日本のエネルギー事業の救世主になりうる。
日本とベネズエラの資源外交の突破口を開いたのが安倍晋三元総理大臣だったが、外務省にも政界にも、安倍の路線を継ぐ者はいない。
宏池会が政治に弱いのは、池田勇人の下、前尾繁三郎や大平正芳、鈴木善幸や宮澤喜一ら官僚出身者が主流を固めたからで、官僚を使うハラの座った政治家は一人もいなかった。
日本の税収は3年連続で70兆円をこえて、岸田首相が2〜30兆円規模の減税(消費・所得)と給付金を打ち出せば、いつ解散しても、現議席は保てるが、宏池会で宮沢の子分だった岸田はきりだせない。
日銀はインフレ、財務省は減税の恐怖症だからで、岸田には日銀や財務省につめよるハラはない。
次回以降、イスラエルとハマスの戦争と複雑きわまりない中東情勢、米軍が中東へシフトしたのち、単独で、ロシアと北朝鮮、中国と対峙しなければならなくなる日本の立ち位置についてものべよう。
2023年10月11日
「自由主義」と「民主主義」の相克と調和24
●領土感覚が狂っている鈴木宗男と玉城沖縄知事
岸田文雄首相と鈴木宗男がとんでもないアホをやらかした。
先に鈴木についてふれよう。鈴木がロシアにでかけて、ルデンコ外務次官に「100%ロシアが勝つ」と激励して「維新の会」から脱会させられるはめになったのは、ロシアにとりこまれた売国政治家のなれのはてだが、見逃しにできないもう一つ重大なチョンボがある。
「クリミア半島は住民投票をしてロシア派住民が過半数を占めたので、ロシアのもの」という発言である。
この一言によって、鈴木は、政界から永久追放されてよい。
国家の三要素が「領土」「国民」「主権」であることは中学生も知っている。
しかもこの三つには「恒久的に属し、一時の好悪で脱したり復したりすることができない」という大原則がある。「国民」の意思(住民投票など)によって「領土」や「主権」がかんたんに移動しないのが国際法のとりきめで、これがなかったら移民国家は、つねに国家転覆の危機にさらされる。
沖縄の玉城デニー知事は、これまで終始一貫、沖縄の日本やアメリカからの独立を訴えてきた。
その一方、中国にすりよる危険な政治家で、その玉城が、沖縄や尖閣ついてなんといっているか。
「琉球は明や清の時代に中国の属国だった」「琉球は日本に奪われた」「尖閣諸島も古来より中国の領土だった」という中国の主張にとことん同調しているのである。
県議会で、中国からそういう指摘をうけた場合、どう返答するかという質問(自民党・大浜一郎県議)についても、玉城知事は「即答しないことも一つの対応」と返答、口が腐っても日本の領土とこたえる気はないというのである。
げんに、河野洋平とともに中国を訪問した玉城沖縄知事は、中国ナンバー2の李強首相と面談した際、中国の度重なる尖閣諸島への領海侵犯に一言もふれなかった。
鈴木宗男の論理でいえば、玉城沖縄県知事が、沖縄の日本からの独立を宣言して、国民投票で過半数をとれば、沖縄は日本ではなくなるということになる。
したがって、自衛隊や米軍が沖縄から退却せざるをえなくなるが、そのとき中国海軍が尖閣と沖縄をふくむ南西諸島を丸ごと占領するだろう。
そして、丸腰となった台湾を中国の陸・海・空軍があっさり奪うことになる。
●ハマスとイスラエルを同列にあつかう岸田のアホ
ロシアべったりの鈴木宗男、中国べったりの玉城デニーにまして愚かだったのが、イスラム原理主義のテロ組織ハマスのイスラエル攻撃にたいして「すべての当事者に最大限の自制を求めます」という声明をだした岸田首相である。
フランス、ドイツ、イタリア、英国、米国は、これとはまったく反対の共同声明を発表している。
「わたしたち、フランスのマクロン大統領、ドイツのショルツ首相、イタリアのメローニ首相、英国のスナク首相、米国のバイデン大統領は、イスラエルにたいして、断固とした支持を表明し、ハマスとその恐ろしいテロ行為を明確に非難する」
ハマスとイスラエルにそれぞれ最大限の自制をもとめた岸田首相のとんちんかんな声明とはいかなるちがいか。
しかも、岸田首相は「ハマス等パレスチナ武装勢力」とハマスをパレスチナ武装勢力と呼んだ。
パレスチナ武装勢力などというものは存在しない。存在するのは、パレスチナ自治政府とこれに対立するテロ集団ハマスだけで、かつて、ハマスと連合を組んだ「ファタハ」も現在は消滅している。
ハマスは、パレスチナを軍事支配しているテロ集団で、パレスチナ人の敵でもある。
「ハマス等パレスチナ武装勢力」というのはいったいどこをさしているのか。
岸田声明を作成した外務省は、中東情勢の理解に乏しいのでなければ、テロ集団ハマスに親和感をもち、イスラエルにたいして敵愾心をもっているとしか考えられない。
「当事者に最大限の自制を求めます」とは何事か。イスラエルに国家の防衛をさしひかえろということなのか。なぜ、岸田首相は、一方的な殺戮をくりひろげるテロ集団ハマスの片をもつのか。
●イスラエル危機で激変した世界防衛版図
たしかに、日本には、パレスチナ同情論が多いが、パレスチナとテロ集団をいっしょにしてはならない。5か国声明にこうある。
「わたしたちはみな、パレスチナ人の正当な願望を認識して、イスラエル人とパレスチナ人にたいする平等な正義と自由を支持します。しかし、誤解しないでください。ハマスはそうした願望を代表するものではなく、さらなる恐怖と流血以外、パレスチナ人になにもあたえません」
外務省や岸田首相は、パレスチナとハマスの区別がつかないのか。あえて、ミスリードを誘っている可能性もあるが、ハナからわけがわかっていない可能性のほうが高い。
こんなわけのわからないことをいっていて、日本は、動乱するこの世界をのりきってゆけるのか。
現在、世界は、ロシアとウクライナ、そして、イスラエルとハマス(イスラム原理主義テロ集団)の二つの戦争をかかえることになって、世界の力関係が大きく揺らいでいる。
イスラエルとアメリカは兄弟なので、アメリカはもうウクライナにかまってなどいられない。
アメリカが抜けると、ウクライナを支援するのは、イギリスとドイツだけになってしまうが、ロシアも、親ハマスのイランなどからの支援が減って最大の援助国が北朝鮮だけになる。
中東へシフトしはじめた米海軍を見込んで、中国は、さっそく、台湾侵攻の手ぐすねを引くだろう。
韓国は北朝鮮の対応が精一杯で、したがって、台湾をまもるのは、日本だけということになる。
そこで、マスコミ左翼が反戦平和と騒ぎに騒いで、自衛隊出兵を妨害する。
したがって、中国は、なんの妨害もうけず台湾を手に入れることができる。
おおわらいするのが、親中反米・反日左翼と沖縄の玉城デニー知事である。
ハマスのイスラエル襲撃を画策したのはいったいどこの国だったのだろう?
岸田文雄首相と鈴木宗男がとんでもないアホをやらかした。
先に鈴木についてふれよう。鈴木がロシアにでかけて、ルデンコ外務次官に「100%ロシアが勝つ」と激励して「維新の会」から脱会させられるはめになったのは、ロシアにとりこまれた売国政治家のなれのはてだが、見逃しにできないもう一つ重大なチョンボがある。
「クリミア半島は住民投票をしてロシア派住民が過半数を占めたので、ロシアのもの」という発言である。
この一言によって、鈴木は、政界から永久追放されてよい。
国家の三要素が「領土」「国民」「主権」であることは中学生も知っている。
しかもこの三つには「恒久的に属し、一時の好悪で脱したり復したりすることができない」という大原則がある。「国民」の意思(住民投票など)によって「領土」や「主権」がかんたんに移動しないのが国際法のとりきめで、これがなかったら移民国家は、つねに国家転覆の危機にさらされる。
沖縄の玉城デニー知事は、これまで終始一貫、沖縄の日本やアメリカからの独立を訴えてきた。
その一方、中国にすりよる危険な政治家で、その玉城が、沖縄や尖閣ついてなんといっているか。
「琉球は明や清の時代に中国の属国だった」「琉球は日本に奪われた」「尖閣諸島も古来より中国の領土だった」という中国の主張にとことん同調しているのである。
県議会で、中国からそういう指摘をうけた場合、どう返答するかという質問(自民党・大浜一郎県議)についても、玉城知事は「即答しないことも一つの対応」と返答、口が腐っても日本の領土とこたえる気はないというのである。
げんに、河野洋平とともに中国を訪問した玉城沖縄知事は、中国ナンバー2の李強首相と面談した際、中国の度重なる尖閣諸島への領海侵犯に一言もふれなかった。
鈴木宗男の論理でいえば、玉城沖縄県知事が、沖縄の日本からの独立を宣言して、国民投票で過半数をとれば、沖縄は日本ではなくなるということになる。
したがって、自衛隊や米軍が沖縄から退却せざるをえなくなるが、そのとき中国海軍が尖閣と沖縄をふくむ南西諸島を丸ごと占領するだろう。
そして、丸腰となった台湾を中国の陸・海・空軍があっさり奪うことになる。
●ハマスとイスラエルを同列にあつかう岸田のアホ
ロシアべったりの鈴木宗男、中国べったりの玉城デニーにまして愚かだったのが、イスラム原理主義のテロ組織ハマスのイスラエル攻撃にたいして「すべての当事者に最大限の自制を求めます」という声明をだした岸田首相である。
フランス、ドイツ、イタリア、英国、米国は、これとはまったく反対の共同声明を発表している。
「わたしたち、フランスのマクロン大統領、ドイツのショルツ首相、イタリアのメローニ首相、英国のスナク首相、米国のバイデン大統領は、イスラエルにたいして、断固とした支持を表明し、ハマスとその恐ろしいテロ行為を明確に非難する」
ハマスとイスラエルにそれぞれ最大限の自制をもとめた岸田首相のとんちんかんな声明とはいかなるちがいか。
しかも、岸田首相は「ハマス等パレスチナ武装勢力」とハマスをパレスチナ武装勢力と呼んだ。
パレスチナ武装勢力などというものは存在しない。存在するのは、パレスチナ自治政府とこれに対立するテロ集団ハマスだけで、かつて、ハマスと連合を組んだ「ファタハ」も現在は消滅している。
ハマスは、パレスチナを軍事支配しているテロ集団で、パレスチナ人の敵でもある。
「ハマス等パレスチナ武装勢力」というのはいったいどこをさしているのか。
岸田声明を作成した外務省は、中東情勢の理解に乏しいのでなければ、テロ集団ハマスに親和感をもち、イスラエルにたいして敵愾心をもっているとしか考えられない。
「当事者に最大限の自制を求めます」とは何事か。イスラエルに国家の防衛をさしひかえろということなのか。なぜ、岸田首相は、一方的な殺戮をくりひろげるテロ集団ハマスの片をもつのか。
●イスラエル危機で激変した世界防衛版図
たしかに、日本には、パレスチナ同情論が多いが、パレスチナとテロ集団をいっしょにしてはならない。5か国声明にこうある。
「わたしたちはみな、パレスチナ人の正当な願望を認識して、イスラエル人とパレスチナ人にたいする平等な正義と自由を支持します。しかし、誤解しないでください。ハマスはそうした願望を代表するものではなく、さらなる恐怖と流血以外、パレスチナ人になにもあたえません」
外務省や岸田首相は、パレスチナとハマスの区別がつかないのか。あえて、ミスリードを誘っている可能性もあるが、ハナからわけがわかっていない可能性のほうが高い。
こんなわけのわからないことをいっていて、日本は、動乱するこの世界をのりきってゆけるのか。
現在、世界は、ロシアとウクライナ、そして、イスラエルとハマス(イスラム原理主義テロ集団)の二つの戦争をかかえることになって、世界の力関係が大きく揺らいでいる。
イスラエルとアメリカは兄弟なので、アメリカはもうウクライナにかまってなどいられない。
アメリカが抜けると、ウクライナを支援するのは、イギリスとドイツだけになってしまうが、ロシアも、親ハマスのイランなどからの支援が減って最大の援助国が北朝鮮だけになる。
中東へシフトしはじめた米海軍を見込んで、中国は、さっそく、台湾侵攻の手ぐすねを引くだろう。
韓国は北朝鮮の対応が精一杯で、したがって、台湾をまもるのは、日本だけということになる。
そこで、マスコミ左翼が反戦平和と騒ぎに騒いで、自衛隊出兵を妨害する。
したがって、中国は、なんの妨害もうけず台湾を手に入れることができる。
おおわらいするのが、親中反米・反日左翼と沖縄の玉城デニー知事である。
ハマスのイスラエル襲撃を画策したのはいったいどこの国だったのだろう?
2023年10月08日
「自由主義」と「民主主義」の相克と調和23
●節度ある自由≠ェささえてきた先進国の経済
かつてゆたかだったが、現在、極貧国となった10か国のリストがある。
アンゴラやギリシャ、カンボジア、フィリピン、キューバ、イラク、ラトビア、ナウル、ベネズエラ、アルゼンチンの10国である。
共通点は、資源国家か独裁国家、企業の国有化、あるいは、ポピュリズムに走った国で、このことからも、資本主義の発展には、自由と民主主義、節度の3つが必要だったとわかる。
地下資源やコーヒーなどの産出でゆたかだったアンゴラは、企業の国有化と内戦で、国中に地雷が埋まった貧しい紛争国になり、シアヌーク殿下のもとでゆたかな生活を享受していたカンボジアはポルポト革命で2百万の善男善女が殺されて(キリングフィールド)極貧国に転落した。
フィリピンやイラク、キューバは、独裁と非民主義化によって、資本主義が息絶えて貧困化したが、バルト三国(エストニア、ラトビア、リトアニア)の雄だったラトビアもソ連に呑みこまれてかつての栄華を失った。
地上の楽園と呼ばれたナウルは、国家経済を支えていた世界一のリン鉱石が枯渇して貧困化したが、石油埋蔵量が世界一のベネズエラも、ポピュリズムによって、現在、国民の4分の3が食うか食わずの飢餓状態にある。
ポピュリズムによって貧困化したのは、かつて高度成長を誇ったギリシャや南米最大の富める国アルゼンチンも同様で、経済の発展には、自由と民主主義にくわえて、大衆迎合を制御するモラル、規制が必要だったとわかる。
資本には「資本の論理」というものがあって、これは、資本の自己増殖運動ということができる。
資本主義とは、資本を投下し、そのうえで、投下資本以上の資本を回収するメカニズムで、その過程において、製品・商品の製造、雇用や設備投資、価格安定などが図られる。
その全体のバランスをたもつのが近代経済学で、そこに、ケインズ経済学もふくまれる。
これにたいして、マルクス経済学は、近代経済学における利潤を労働価値の収奪(ドロボー)と見て、そこから、人民から労働価値を盗むドロボー(資本家)を倒せという革命思想がうまれる。
新自由主義や市場原理主義、小沢・小泉改革もマルクス主義の亜流で、これが失敗したのは、政治や経済の一局面しか見ないからで、その視野狭窄こそが唯物論=マルクス主義の一大欠陥である。
●均衡とバランスから成り立つ経済原理と保守主義
政治も経済も均衡とバランスによって成り立っている。
このバランスが保守主義で、このバランスを壊そうというのがマルクス主義に立つ左翼やリベラルである。かれらの革新や改革が不毛なのは、革新や改革が、保守という土台の上にあることに気がついていないからである。
保守政治の根幹をゆさぶった30年前の小沢の政治改革や自民党をぶっつぶせ≠フ小泉改革、鳩山の民主党政権が壮大なる失敗だったことは「失われた30年」が如実に物語っている。
この30年間、日本がとってきた政治経済はマルクス主義にのっとったもので、政治は、徹頭徹尾、改革主義、そして、経済はマルクス経済一辺倒だった。
新聞マスコミは、円高になると円高によって日本はつぶれる、円安になると日本は破産すると騒ぎ、1200兆円の財政赤字によって、日本に未来がないと吹聴してまわる。
これがバランス感覚を失ったマルクス経済の論法である。マルクス経済には為替レートも貸借対照表(バランスシート)も、マネタリーベース(資金供給量)も金利政策も、インフレやデフも、雇用と失業に関する知識さえろくにもちあわせない。
あるのは、労働価値説と賃金論、独占資本論と帝国主義論だけで、これが革命のマルクス主義につながって、資本主義を倒せという理屈がうみだされる。
日本の大学では、90%がマルクス経済なので、財務省や日銀に入った東大出身の高級官僚は、近代経済学に転向するのに3年以上かかるという。
円高や円安によって日本はつぶれる、財政赤字によって日本に未来がないというのは、為替レートを知らないマルクス経済の言いぐさで、アメリカが金融の引き締めでドル高になれば、日米のマネタリーベースは、為替レートでバランスをとりあうため、円安にふれて、輸出が好調になって、好況になる。
そんなかんたんな仕組みさえわからないのがマルクス経済学なのである。
●絶好調だった日本経済を潰したマルクス経済の霞が関
この好況がつづいたのが30年前の日本経済で、当時、税法の不備で不動産高になった以外、経済状態はきわめて良好だった。
これに腹を立てたのが、霞が関に巣食うマルクス主義者たちで、マルクスの予言どおりに経済破綻しないのは、なにかのまちがいだといって、総量規制という暴力的な金融引き締めに走って、日本経済をつぶした。
そして、日銀・財務省は、その後、マルクス経済のデフレ政策をとりつづけて「失われた30年」をつくりあげた。
円安になるとインフレになって、国富が失われるというのは、マルクス経済(帝国主義論)の最大の誤りで、為替レートによって、国がゆたかになったり貧しくなったりするはずなどない。まして、円安が高じてハイパーインフレになるなどというのは言語道断である。
ハイパーインフレは、貨幣価値が下がることではなく、生産能力が壊滅して価格が高騰、金銭でモノが買えなくなることで、為替とはなんの関係もない。
だが、日銀のマルクス主義者たちは、ハイパーインフレをおそれて、過剰なインフレ防衛(デフレ政策)をとりつづけて日本経済の息の根をとめた(「失われた30年」)。
それまで、世界のトップに君臨していた半導体などを中心としたIT企業(NTT、NEC、日立、東芝、富士通、三菱電機、SONY、SHARP、京セラ、パナソニック、ソフトバンクなど)が凋落したのは円高(デフレ)で国際競争力を失ったからで、競争相手がいなかった半導体の材料(半導体製造装置/半導体ウェハー)の分野において、日本がいまだに世界のトップの座にあるのがその証左である。
●アベノミクスをささえた二人のノーベル経済学者
巨額の財政赤字で、日本に未来がないというのもマルクス学者の無知によるもので、マルクス経済学には、貸借対照表の観念がないので、1200兆円の財政赤字で日本経済の首がまわらなくなったなどの俗説をふりまく。
一般会計の複式簿記では「貸借平均の原理」がはたらくので、借方の合計と貸方の合計がつねに一致する(貸借対照表/損益計算書)。したがって、借方(資産+費用)=貸方(負債+資本+収益)となって、経済の規模が大きくなるほど、借方・貸方とも額が大きくなる。
日本の場合、国と地方の借金(国債の発行残高)は1200兆円といわれるが、国債の引き受け手の45%は、政府の子会社である日銀である。日銀への金利はすべて国庫納付金(日本銀行法第53条)として返ってくるので、政府は腹が痛まない。
残りの国債をもっているのも、保険・年金基金(35%)なので、売りとばされたり価格が暴落したりする懸念はない。
国債を借金と考え、デフレ政策をとって「失われた30年」をつくったのがマルクス主義経済しか知らない霞が関の役人で、これを断ち切ったのがアベノミクスだった。
だが、残念なことに、コロナと消費税で、アベノミクスにブレーキがかかってしまった。
アベノミクスの根幹をつくったベン・バーナンキ(「デフレ退治」)とポール・クルーグマン(「インフレ目標理論)」は二人ともノーベル経済学賞を受賞しているが、高橋洋一以外、マルクス主義にこりかたまっている日本の経済学者と交流がない。
現在、アベノミクスで脱デフレに成功した日本は、半導体の8社連合(トヨタ自動車、デンソー、ソニー、NTT、NEC、ソフトバンク、東芝系列キオクシア、三菱UFJ銀行)で世界に挑戦するが、もはや、円高という最大の壁はとりはらわれている。
日本のマルクス経済学者らは「失われた30年」の原因が円高だったことをみとめないが、世界の近代経済学の学者は、多くが、円高(デフレ)から脱出しつつある日本の躍進を予言している。
次回は、日本経済の展望と、マルクス主義に縛られたままの中国とロシアの経済の行く末をながめてみよう。
かつてゆたかだったが、現在、極貧国となった10か国のリストがある。
アンゴラやギリシャ、カンボジア、フィリピン、キューバ、イラク、ラトビア、ナウル、ベネズエラ、アルゼンチンの10国である。
共通点は、資源国家か独裁国家、企業の国有化、あるいは、ポピュリズムに走った国で、このことからも、資本主義の発展には、自由と民主主義、節度の3つが必要だったとわかる。
地下資源やコーヒーなどの産出でゆたかだったアンゴラは、企業の国有化と内戦で、国中に地雷が埋まった貧しい紛争国になり、シアヌーク殿下のもとでゆたかな生活を享受していたカンボジアはポルポト革命で2百万の善男善女が殺されて(キリングフィールド)極貧国に転落した。
フィリピンやイラク、キューバは、独裁と非民主義化によって、資本主義が息絶えて貧困化したが、バルト三国(エストニア、ラトビア、リトアニア)の雄だったラトビアもソ連に呑みこまれてかつての栄華を失った。
地上の楽園と呼ばれたナウルは、国家経済を支えていた世界一のリン鉱石が枯渇して貧困化したが、石油埋蔵量が世界一のベネズエラも、ポピュリズムによって、現在、国民の4分の3が食うか食わずの飢餓状態にある。
ポピュリズムによって貧困化したのは、かつて高度成長を誇ったギリシャや南米最大の富める国アルゼンチンも同様で、経済の発展には、自由と民主主義にくわえて、大衆迎合を制御するモラル、規制が必要だったとわかる。
資本には「資本の論理」というものがあって、これは、資本の自己増殖運動ということができる。
資本主義とは、資本を投下し、そのうえで、投下資本以上の資本を回収するメカニズムで、その過程において、製品・商品の製造、雇用や設備投資、価格安定などが図られる。
その全体のバランスをたもつのが近代経済学で、そこに、ケインズ経済学もふくまれる。
これにたいして、マルクス経済学は、近代経済学における利潤を労働価値の収奪(ドロボー)と見て、そこから、人民から労働価値を盗むドロボー(資本家)を倒せという革命思想がうまれる。
新自由主義や市場原理主義、小沢・小泉改革もマルクス主義の亜流で、これが失敗したのは、政治や経済の一局面しか見ないからで、その視野狭窄こそが唯物論=マルクス主義の一大欠陥である。
●均衡とバランスから成り立つ経済原理と保守主義
政治も経済も均衡とバランスによって成り立っている。
このバランスが保守主義で、このバランスを壊そうというのがマルクス主義に立つ左翼やリベラルである。かれらの革新や改革が不毛なのは、革新や改革が、保守という土台の上にあることに気がついていないからである。
保守政治の根幹をゆさぶった30年前の小沢の政治改革や自民党をぶっつぶせ≠フ小泉改革、鳩山の民主党政権が壮大なる失敗だったことは「失われた30年」が如実に物語っている。
この30年間、日本がとってきた政治経済はマルクス主義にのっとったもので、政治は、徹頭徹尾、改革主義、そして、経済はマルクス経済一辺倒だった。
新聞マスコミは、円高になると円高によって日本はつぶれる、円安になると日本は破産すると騒ぎ、1200兆円の財政赤字によって、日本に未来がないと吹聴してまわる。
これがバランス感覚を失ったマルクス経済の論法である。マルクス経済には為替レートも貸借対照表(バランスシート)も、マネタリーベース(資金供給量)も金利政策も、インフレやデフも、雇用と失業に関する知識さえろくにもちあわせない。
あるのは、労働価値説と賃金論、独占資本論と帝国主義論だけで、これが革命のマルクス主義につながって、資本主義を倒せという理屈がうみだされる。
日本の大学では、90%がマルクス経済なので、財務省や日銀に入った東大出身の高級官僚は、近代経済学に転向するのに3年以上かかるという。
円高や円安によって日本はつぶれる、財政赤字によって日本に未来がないというのは、為替レートを知らないマルクス経済の言いぐさで、アメリカが金融の引き締めでドル高になれば、日米のマネタリーベースは、為替レートでバランスをとりあうため、円安にふれて、輸出が好調になって、好況になる。
そんなかんたんな仕組みさえわからないのがマルクス経済学なのである。
●絶好調だった日本経済を潰したマルクス経済の霞が関
この好況がつづいたのが30年前の日本経済で、当時、税法の不備で不動産高になった以外、経済状態はきわめて良好だった。
これに腹を立てたのが、霞が関に巣食うマルクス主義者たちで、マルクスの予言どおりに経済破綻しないのは、なにかのまちがいだといって、総量規制という暴力的な金融引き締めに走って、日本経済をつぶした。
そして、日銀・財務省は、その後、マルクス経済のデフレ政策をとりつづけて「失われた30年」をつくりあげた。
円安になるとインフレになって、国富が失われるというのは、マルクス経済(帝国主義論)の最大の誤りで、為替レートによって、国がゆたかになったり貧しくなったりするはずなどない。まして、円安が高じてハイパーインフレになるなどというのは言語道断である。
ハイパーインフレは、貨幣価値が下がることではなく、生産能力が壊滅して価格が高騰、金銭でモノが買えなくなることで、為替とはなんの関係もない。
だが、日銀のマルクス主義者たちは、ハイパーインフレをおそれて、過剰なインフレ防衛(デフレ政策)をとりつづけて日本経済の息の根をとめた(「失われた30年」)。
それまで、世界のトップに君臨していた半導体などを中心としたIT企業(NTT、NEC、日立、東芝、富士通、三菱電機、SONY、SHARP、京セラ、パナソニック、ソフトバンクなど)が凋落したのは円高(デフレ)で国際競争力を失ったからで、競争相手がいなかった半導体の材料(半導体製造装置/半導体ウェハー)の分野において、日本がいまだに世界のトップの座にあるのがその証左である。
●アベノミクスをささえた二人のノーベル経済学者
巨額の財政赤字で、日本に未来がないというのもマルクス学者の無知によるもので、マルクス経済学には、貸借対照表の観念がないので、1200兆円の財政赤字で日本経済の首がまわらなくなったなどの俗説をふりまく。
一般会計の複式簿記では「貸借平均の原理」がはたらくので、借方の合計と貸方の合計がつねに一致する(貸借対照表/損益計算書)。したがって、借方(資産+費用)=貸方(負債+資本+収益)となって、経済の規模が大きくなるほど、借方・貸方とも額が大きくなる。
日本の場合、国と地方の借金(国債の発行残高)は1200兆円といわれるが、国債の引き受け手の45%は、政府の子会社である日銀である。日銀への金利はすべて国庫納付金(日本銀行法第53条)として返ってくるので、政府は腹が痛まない。
残りの国債をもっているのも、保険・年金基金(35%)なので、売りとばされたり価格が暴落したりする懸念はない。
国債を借金と考え、デフレ政策をとって「失われた30年」をつくったのがマルクス主義経済しか知らない霞が関の役人で、これを断ち切ったのがアベノミクスだった。
だが、残念なことに、コロナと消費税で、アベノミクスにブレーキがかかってしまった。
アベノミクスの根幹をつくったベン・バーナンキ(「デフレ退治」)とポール・クルーグマン(「インフレ目標理論)」は二人ともノーベル経済学賞を受賞しているが、高橋洋一以外、マルクス主義にこりかたまっている日本の経済学者と交流がない。
現在、アベノミクスで脱デフレに成功した日本は、半導体の8社連合(トヨタ自動車、デンソー、ソニー、NTT、NEC、ソフトバンク、東芝系列キオクシア、三菱UFJ銀行)で世界に挑戦するが、もはや、円高という最大の壁はとりはらわれている。
日本のマルクス経済学者らは「失われた30年」の原因が円高だったことをみとめないが、世界の近代経済学の学者は、多くが、円高(デフレ)から脱出しつつある日本の躍進を予言している。
次回は、日本経済の展望と、マルクス主義に縛られたままの中国とロシアの経済の行く末をながめてみよう。
2023年10月01日
「自由主義」と「民主主義」の相克と調和22
●ロシア苦戦を読めなかった日本の識者たち
ロシアがウクライナへ侵攻した当時、多くの識者は、小国ウクライナは大国ロシアに歯が立つわけはないので、さっさと降参すべきと口を揃えた。
ロシアとウクライナの国力差は、経済力で10〜15倍、軍事力で5〜10倍の較差があるので、ウクライナの首都キーウ(キエフ)を陥落させるには3日もあれば十分というプーチンのことばを多くの日本人は真にうけた。
だが、実際は、1年半たっても戦線は膠着したままで、ロシアでは、多くの高級将校を失ったばかりか、侵攻した4州とクリミア半島で苦戦を強いられている。
そのうえ、ウクライナは、アメリカの最強戦車「エイブラムス」やF16戦闘機(61機)、長距離地対地ミサイルATACMSを供給される予定なので、それでなくとも劣勢のロシアがさらに追いこまれる可能性が高い。
日本人がロシア圧勝と読んだのは、総合力から判断したからで、日米戦争で日本に勝ち目がなかったというのと同じ発想である。日米戦争で日本が負けたのは、ミッドウエー海戦で大敗してサイパン島や硫黄島をとられたからで、それ以上の理由はない。
日露戦争と日米戦争当時の両国の国力の差は、似たようなもので、ハワイやフィリピンをとられると、旅順をとられて降参したロシアのように、アメリカは、白旗をあげるしかなかった。はじめから日本に勝ち目がなかったというのは、勝ち馬にのった結果論で、ムードで語っているだけである。
戦争は、すべて、局地戦なので、総合戦力が勝っていても戦争に勝てるとはかぎらない。局地戦でモノをいうのは、作戦にくわえて個人の戦闘力と武器の破壊力で、たとえ世界2位の軍事力をもっていても、6000発の核をもっていても、局地戦にはなんの役にも立たない。
核を使えば勝負がつくというのは短絡で、核を使えば、地球共存者としての資格を失って、すべての国から国交を断たれる。世界は複雑な関係の上になりたっているので、交易から通貨、文化や人的な交流までの国際関係を断たれると、たとえ、戦争に勝っても、国家は亡びる。
●総合戦と局地戦の仕分けができない戦争評論家
総論がすきな日本人は、中国は世界第2位の経済大国で、日本は世界第3位の経済大国といいたがる。
だが、経済大国だからといって、経済戦争に勝てるわけではない。半導体やパソコン、スマホ、太陽電池といったデジタル分野の局地戦で、日本が韓国や中国、台湾に負けつづけてきたのは、技術で優先していながら、生産や資金の局面で後れをとったからである。
GDPは人口と付加価値(儲け)を掛け算した総額で、決定的にモノをいうのは、人口である。
したがって、人口の多い国のGDPが大きいのは当然である。
世界の人口比を見てみよう。
1位 中国 約14・4億人
2位 インド 約14・1億人
3位 アメリカ 約3・4億人
4位 インドネシア 約2・8億人
5位 パキスタン 約2・3億人
6位 ナイジェリア 約2・2億万人
7位 ブラジル 役2・2億万人
8位 バングラデシュ 約1・7億人
9位 ロシア 1・5億人
10位 メキシコ1・3億人
ちなみに日本は1・2億人で11位である。
つぎに国別GDPに目をむけよう。
1位 アメリカ 約25・5兆億ドル
2位 中国 約18・1兆億ドル−
3位 日本 約4・2兆億ドル
4位 ドイツ 約4・1兆億ドル
5位 インド 約3・4兆億ドル
6位 イギリス 約3・1兆億ドル
7位 フランス 約2・8兆億ドル
8位 ロシア 約2・2兆億ドル
9位 カナダ 約2・1兆億ドル
10位 イタリア約2・0兆億ドル
人口と国別GDPがほぼ一致しているのはアメリカと中国、日本だけである。
人口の多い国にもかかわらずGDPが低いのは、民主化・自由化がすすんでいないからでそれを如実にあらわしているのが一人当たりGDPである。
国別GDPで2位の中国と5位のインド、11位のロシアが一人当たりGDPでは50位にすら入っていない。ロシアが63位、中国が68位、インドにいたっては、国家破産したベネズエラやスリランカよりも低い147位である。
たとえ、IT先進国であろうと、カースト制が足をひっぱって、資本主義の健全な発展を妨げているわけだが、イスラム教の大国も、宗教的戒律によって資本主義の水と空気≠ナある民主主義と自由が封じこまれている。
●人間の戦闘力と文明力が戦争の勝敗を決する
日本の一人当たりGDPは30位で英独仏伊のやや下位である。
日本のGDP3位は、一人当たり30位のGDPに世界11位の人口を掛けた数字で、いわば、幻の経済大国なのである。
日本の新聞は、日本のGDPは世界3位と吹聴するが、国力は、人間の数Χ付加価値ではなく、人間の能力Χ付加価値である。そのことに気がつけば、GDP世界第3位などと威張っているわけにはいかなくなる。
世界の一人当たりGDPのトップ30を見るとおもしろいことに気がつく。
1位のルクセンブルクからノルウェー、アイルランド、スイス、カタール、シンガポール、アメリカ、アイスランド、デンマーク、オーストラリア、オランダ、スウェーデン、カナダ、イスラエル、オーストリア、アラブ首長国連邦、フィンランド、ベルギー、サンマリノ、香港まで、アメリカとカナダ、オーストラリアを除いて人口が少ない先進的な小国ばかりで、したがって一人当たりの所得は、当然、高い。
このなかに中立国家(スイス・ベルギー・オーストリア)やタックス・ヘイブン(ルクセンブルク)がふくまれているのは、多国籍企業や富裕層が膨大な資金をもちこむからだが、これもまた国際資本主義の一側面である。
20位以下は、ドイツからニュージーランド、イギリス、フランス、イタリア、日本、台湾、韓国などがつづく。
これが正しいGDPで、国の大きさと経済力はかならずしも一致しない。
軍事力も同様で、国が大きいからといって、戦争に勝つとはかぎらない。
戦争が、核戦争以外、すべて局地戦で、勝敗を決するのは、人間の戦闘力と文明力である。
そのことは、今回のウクライナ戦争によって、イヤというほど思い知らされたはずである。
日本の評論家は、総合力から判断して、台湾は中国の比ではないというのだが、かれらは、ウクライナ戦争で犯した見とおしの甘さをふたたびくり返している。
こういう識者にかぎって、日米安保や「核の傘」「核共有(ニュークリア・シェアリング)」などについて、不毛な議論をふっかけてくる。
アメリカは、日本に代わって敵と戦ってくれないというのだが、当たり前である。
アメリカはアテにならず、日本もみずから戦う気がさらさらない。中国に攻められて、かなうわけはなく、イノチも惜しいので中国の属国になる(玉城デニー沖縄知事)というのが総論(=結果論)というもので、これが橋下徹らを中心に日本中に蔓延する敗北主義である。
●すぐれていた安倍元首相のアジア防衛論
『自由で開かれたインド太平洋』の安倍晋三元首相が唱えた「戦後レジームからの脱却」は、日本がアジア安保の中心軸になるという構想で、アメリカ(2015年4月29日連邦議会演説)をはじめ欧豪印らからつよい支持をうけた反面、中国をはじめ日本の反日左翼、親中派、新聞マスコミから猛烈な反発を買った。
安倍構想は、自衛隊を国家公務員から軍人に昇格させ、日米のほか、日英や日豪とも軍事同盟をむすんでオーカス(アメリカ、イギリス、オーストラリア)の関係を密にする。そして、クワット(日米豪印)への連結を固めて、ファイブ・アイズ(アメリカ/カナダ/イギリス/オーストラリア/ニュージーランド)にくわわって最終的にはNATO(北大西洋条約機構)に参入、東京にNATO事務局を置くというものだった。
これにたいして中国は「ブリックス(南アフリカ、ブラジル、インド、ロシアなど)」や「グローバルサウス」をひきいれて日本に対抗しようとしているが、そんなものはほうっておけばよい。
グローバルサウスは、1955年の「アジア・アフリカ会議」の延長線上にあって、原点は、大東亜共栄圏である。AA会議で、インドのネルー、エジプトのナセル、インドネシアのスカルノ、ビルマのウー=ヌーらが、第三世界の結束は、日本の大東亜共栄思想が土台になったとのべている。
戦後からはじまったODA(政府開発援助)も、1970〜2000年代まで日本がアメリカをおさえて世界一(アンタイド率約90%)で、これを高く評価するグローバルサウスの対日感情がわるいはずはない。
グローバルサウスのなかで対日感情がわるいのは、中国の資金注入をうけた国々ばかりで、日本をきらっているのは、中国とロシア、北朝鮮、韓国野党と日本の工作員(左翼と平和主義派)だけだが、かれらの狙いは日本の軍事力の弱体化にある。
左翼化したドイツ(ショルツ首相/社会民主党)すらウクライナ戦争をみて防衛費を倍増させたが、日本の反日左翼や平和主義者は、防衛費増強によって日本が中国・台湾戦争にまきこまれると主張している。
次回以降、中国・台湾戦争と、これをとりまく国内および世界情勢についてのべよう。
ロシアがウクライナへ侵攻した当時、多くの識者は、小国ウクライナは大国ロシアに歯が立つわけはないので、さっさと降参すべきと口を揃えた。
ロシアとウクライナの国力差は、経済力で10〜15倍、軍事力で5〜10倍の較差があるので、ウクライナの首都キーウ(キエフ)を陥落させるには3日もあれば十分というプーチンのことばを多くの日本人は真にうけた。
だが、実際は、1年半たっても戦線は膠着したままで、ロシアでは、多くの高級将校を失ったばかりか、侵攻した4州とクリミア半島で苦戦を強いられている。
そのうえ、ウクライナは、アメリカの最強戦車「エイブラムス」やF16戦闘機(61機)、長距離地対地ミサイルATACMSを供給される予定なので、それでなくとも劣勢のロシアがさらに追いこまれる可能性が高い。
日本人がロシア圧勝と読んだのは、総合力から判断したからで、日米戦争で日本に勝ち目がなかったというのと同じ発想である。日米戦争で日本が負けたのは、ミッドウエー海戦で大敗してサイパン島や硫黄島をとられたからで、それ以上の理由はない。
日露戦争と日米戦争当時の両国の国力の差は、似たようなもので、ハワイやフィリピンをとられると、旅順をとられて降参したロシアのように、アメリカは、白旗をあげるしかなかった。はじめから日本に勝ち目がなかったというのは、勝ち馬にのった結果論で、ムードで語っているだけである。
戦争は、すべて、局地戦なので、総合戦力が勝っていても戦争に勝てるとはかぎらない。局地戦でモノをいうのは、作戦にくわえて個人の戦闘力と武器の破壊力で、たとえ世界2位の軍事力をもっていても、6000発の核をもっていても、局地戦にはなんの役にも立たない。
核を使えば勝負がつくというのは短絡で、核を使えば、地球共存者としての資格を失って、すべての国から国交を断たれる。世界は複雑な関係の上になりたっているので、交易から通貨、文化や人的な交流までの国際関係を断たれると、たとえ、戦争に勝っても、国家は亡びる。
●総合戦と局地戦の仕分けができない戦争評論家
総論がすきな日本人は、中国は世界第2位の経済大国で、日本は世界第3位の経済大国といいたがる。
だが、経済大国だからといって、経済戦争に勝てるわけではない。半導体やパソコン、スマホ、太陽電池といったデジタル分野の局地戦で、日本が韓国や中国、台湾に負けつづけてきたのは、技術で優先していながら、生産や資金の局面で後れをとったからである。
GDPは人口と付加価値(儲け)を掛け算した総額で、決定的にモノをいうのは、人口である。
したがって、人口の多い国のGDPが大きいのは当然である。
世界の人口比を見てみよう。
1位 中国 約14・4億人
2位 インド 約14・1億人
3位 アメリカ 約3・4億人
4位 インドネシア 約2・8億人
5位 パキスタン 約2・3億人
6位 ナイジェリア 約2・2億万人
7位 ブラジル 役2・2億万人
8位 バングラデシュ 約1・7億人
9位 ロシア 1・5億人
10位 メキシコ1・3億人
ちなみに日本は1・2億人で11位である。
つぎに国別GDPに目をむけよう。
1位 アメリカ 約25・5兆億ドル
2位 中国 約18・1兆億ドル−
3位 日本 約4・2兆億ドル
4位 ドイツ 約4・1兆億ドル
5位 インド 約3・4兆億ドル
6位 イギリス 約3・1兆億ドル
7位 フランス 約2・8兆億ドル
8位 ロシア 約2・2兆億ドル
9位 カナダ 約2・1兆億ドル
10位 イタリア約2・0兆億ドル
人口と国別GDPがほぼ一致しているのはアメリカと中国、日本だけである。
人口の多い国にもかかわらずGDPが低いのは、民主化・自由化がすすんでいないからでそれを如実にあらわしているのが一人当たりGDPである。
国別GDPで2位の中国と5位のインド、11位のロシアが一人当たりGDPでは50位にすら入っていない。ロシアが63位、中国が68位、インドにいたっては、国家破産したベネズエラやスリランカよりも低い147位である。
たとえ、IT先進国であろうと、カースト制が足をひっぱって、資本主義の健全な発展を妨げているわけだが、イスラム教の大国も、宗教的戒律によって資本主義の水と空気≠ナある民主主義と自由が封じこまれている。
●人間の戦闘力と文明力が戦争の勝敗を決する
日本の一人当たりGDPは30位で英独仏伊のやや下位である。
日本のGDP3位は、一人当たり30位のGDPに世界11位の人口を掛けた数字で、いわば、幻の経済大国なのである。
日本の新聞は、日本のGDPは世界3位と吹聴するが、国力は、人間の数Χ付加価値ではなく、人間の能力Χ付加価値である。そのことに気がつけば、GDP世界第3位などと威張っているわけにはいかなくなる。
世界の一人当たりGDPのトップ30を見るとおもしろいことに気がつく。
1位のルクセンブルクからノルウェー、アイルランド、スイス、カタール、シンガポール、アメリカ、アイスランド、デンマーク、オーストラリア、オランダ、スウェーデン、カナダ、イスラエル、オーストリア、アラブ首長国連邦、フィンランド、ベルギー、サンマリノ、香港まで、アメリカとカナダ、オーストラリアを除いて人口が少ない先進的な小国ばかりで、したがって一人当たりの所得は、当然、高い。
このなかに中立国家(スイス・ベルギー・オーストリア)やタックス・ヘイブン(ルクセンブルク)がふくまれているのは、多国籍企業や富裕層が膨大な資金をもちこむからだが、これもまた国際資本主義の一側面である。
20位以下は、ドイツからニュージーランド、イギリス、フランス、イタリア、日本、台湾、韓国などがつづく。
これが正しいGDPで、国の大きさと経済力はかならずしも一致しない。
軍事力も同様で、国が大きいからといって、戦争に勝つとはかぎらない。
戦争が、核戦争以外、すべて局地戦で、勝敗を決するのは、人間の戦闘力と文明力である。
そのことは、今回のウクライナ戦争によって、イヤというほど思い知らされたはずである。
日本の評論家は、総合力から判断して、台湾は中国の比ではないというのだが、かれらは、ウクライナ戦争で犯した見とおしの甘さをふたたびくり返している。
こういう識者にかぎって、日米安保や「核の傘」「核共有(ニュークリア・シェアリング)」などについて、不毛な議論をふっかけてくる。
アメリカは、日本に代わって敵と戦ってくれないというのだが、当たり前である。
アメリカはアテにならず、日本もみずから戦う気がさらさらない。中国に攻められて、かなうわけはなく、イノチも惜しいので中国の属国になる(玉城デニー沖縄知事)というのが総論(=結果論)というもので、これが橋下徹らを中心に日本中に蔓延する敗北主義である。
●すぐれていた安倍元首相のアジア防衛論
『自由で開かれたインド太平洋』の安倍晋三元首相が唱えた「戦後レジームからの脱却」は、日本がアジア安保の中心軸になるという構想で、アメリカ(2015年4月29日連邦議会演説)をはじめ欧豪印らからつよい支持をうけた反面、中国をはじめ日本の反日左翼、親中派、新聞マスコミから猛烈な反発を買った。
安倍構想は、自衛隊を国家公務員から軍人に昇格させ、日米のほか、日英や日豪とも軍事同盟をむすんでオーカス(アメリカ、イギリス、オーストラリア)の関係を密にする。そして、クワット(日米豪印)への連結を固めて、ファイブ・アイズ(アメリカ/カナダ/イギリス/オーストラリア/ニュージーランド)にくわわって最終的にはNATO(北大西洋条約機構)に参入、東京にNATO事務局を置くというものだった。
これにたいして中国は「ブリックス(南アフリカ、ブラジル、インド、ロシアなど)」や「グローバルサウス」をひきいれて日本に対抗しようとしているが、そんなものはほうっておけばよい。
グローバルサウスは、1955年の「アジア・アフリカ会議」の延長線上にあって、原点は、大東亜共栄圏である。AA会議で、インドのネルー、エジプトのナセル、インドネシアのスカルノ、ビルマのウー=ヌーらが、第三世界の結束は、日本の大東亜共栄思想が土台になったとのべている。
戦後からはじまったODA(政府開発援助)も、1970〜2000年代まで日本がアメリカをおさえて世界一(アンタイド率約90%)で、これを高く評価するグローバルサウスの対日感情がわるいはずはない。
グローバルサウスのなかで対日感情がわるいのは、中国の資金注入をうけた国々ばかりで、日本をきらっているのは、中国とロシア、北朝鮮、韓国野党と日本の工作員(左翼と平和主義派)だけだが、かれらの狙いは日本の軍事力の弱体化にある。
左翼化したドイツ(ショルツ首相/社会民主党)すらウクライナ戦争をみて防衛費を倍増させたが、日本の反日左翼や平和主義者は、防衛費増強によって日本が中国・台湾戦争にまきこまれると主張している。
次回以降、中国・台湾戦争と、これをとりまく国内および世界情勢についてのべよう。