●政治改革と自民党派閥の政治資金パーティ問題
政治資金パーティの問題と政治資金の問題は分けて考えなくてはならない。
パーティ券問題は、販売ノルマの超過分を個人にキックバックするシステムで、申告さえしていれば大きな問題にはならなかった。
清和会(旧安倍派)志公会(麻生派)宏池会(岸田派)志帥会(二階派)平成研究会(茂木派)の自民党の5派閥は、ひとしく、この問題をかかえている。
1994年に成立した政治改革では、小選挙区比例代表並立制/政治資金規正法改正案/政党助成法案が大きな柱で、このなかに、自民党派閥のパーティ問題はふくまれていない。
国民1人当たり250円、約320億円を政党の活動資金として、各政党に頭数でふりわけるのが政党助成金で、一方、派閥や個人の勉強会や食事会などのパーティ収入は、個人や派閥が必要経費を集めるための予備費のようなもので、昨年度は、820億円程度だった。
これが問題になったのは、派閥が集めた資金をおのおの派閥に所属する代議士に割り当てるシステムが違法ではないかというものだが、違法でもなんでもない。
力にある代議士は、割り当てられた数以上のパーティ券を売る。予定以上に売った場合、一種の割り戻し、キックバックがおこなわれる。申告をしておけばなんの問題もない。政治資金規正法によってきめられているやり方で税金がかかるわけじゃない。
無申告だったとしても、よくあることで、申告していなかった、申し訳ないと政治家が謝罪するシーンをこれまで何度みてきたことか。
今回、大問題になったのは、派閥がらみだったからで、個人が集めるカネはせいぜい800〜1000万円だが、派閥単位では億の単位になる。
だが、パーティ券の割り戻しは、それ自体、許容範囲内にあることを忘れてはならない。
森友学園や加計学園、桜を見る会で、安倍首相を取り逃がした検察が、その安倍派の根絶を狙ったのが、今回の自民党派閥の政治資金パーティ問題だったといわれるが、これで逮捕者がでなかったら、今回の騒ぎは、検察のうさばらしだったことになる。
無申告を横領事件であるかにようにミスリードしてきたマスコミは、情けない話だが、検察へ媚びているようにしか見えない。
わたしにいわせると、政党助成金がらみで、政治家が、国民を騙しつづけているもっと大きな問題がある。
政治家は、財界からカネをとらないと国民に約束したが、その約束がまもられていない。
政治改革は、小沢が黒幕的な存在だった94年の細川内閣できめられたことで、自民党総裁だった河野洋平も、いっしょになって、小選挙区比例代表並立制と政治資金規正法改正、政党助成法案の改革をすすめた。
当時、リクルート事件などのスキャンダルや財界との癒着が頻発していた。
5当3落といって、5億円使えば当選だが3億円なら落選という金権政治も横行していて、国民から批判を浴びてもいた。
95年の改正政治資金規正法の補則事項では、今後、企業や団体から献金をうけない、五年以内にやめますと政府は国民に約束している。
国民1人当たり250円程度の負担をしてもらい、合計320億円で政党の運営や活動をまかなう。
経費や維持費が必要なので、政治家個人や派閥のパーティはみとめる。
だが、癒着の温床となる企業や団体の献金はみとめないとしたのである。
ところが、どの政党も、この約束を反故にして、すずしい顔をしている。
若手の国会議員6人との食事会があったので、この話をした。
国民との約束はまもらなければならない。自民党総裁だった河野洋平も首相だった細川護熙も、これをまもらなければまずいとマスコミ発言をしている。
だが、いっしょに食事をした国会議員は、だれもこの法律を知らなかった。
政治家になって5年10年の国会議員にとって、30年前の法律は古い話なのかもしれないが、現在の政治にまで深い影響をあたえている悪名高き4政治改正である。
知らなかったですむ話ではないだろう。
そういう状況のなかで、自民党派閥の政治資金パーティの問題がでてきた。
ところで、わたしは、選挙改革とりわけ小選挙区制には反対である。
現在の小選挙区制のなかでは、政治家がじぶんの意見をいえない、じぶんの主張ができない。
自民党の政党助成金は、170億円ほどあるが、資金を握った党本部がこれを支部にふりわける。公認権も党本部が握っている。
公認権から資金まで党本部が握って、党員に縛りをかける。これでは党員は自由にモノがいえなくなる。
昔は、派閥があって、派閥の親分がカネを集めて、公認権から大臣や次官の役職まで、親分が子分の面倒をみた。
各派閥によって、多少、政策がちがう。わたしも、小沢一郎らと田中角栄の新政策総合研究会というところに所属していたので、朝八時半、ホテルオータニで勉強会にくわわった。自民党には派閥ごとの勉強会があって、当時、一人ひとりが自由にじぶんの意見がいえた。
現在の党本部体制は、当時にくらべて、事情が一変してしまった。
党本部とちがった意見や主張をもつと、公認をうけられなくなってしまうという一種の恐怖政治がまかりとおっているのである。
いまの自民党には、党の意向に反して、じぶんの意見をおしとおそうとする党員はいない。
中選挙区制のころは、派閥間の議論もあったが、いまは党議拘束がかかって党内の自由な議論が封殺される。
今回のLGBT法案でも、党議拘束がかかって、保守派も牙を抜かれた。
公認権や資金を党本部が握って、政治信条まで一本化してしまおうとするのが現在の自民党の体質である。
だから、わたしは、小選挙区体制はダメだというのである。
次回予告
山本峯章チャンネル/苦言直言4
●日本の保守を骨抜きにした吉田政治と池田宏池会
2023年12月17日
2023年12月10日
山本峯章チャンネル(YOU-TUBE)を開設しました
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ご参考までに、これから、山本峯章チャンネルであつかう予定のテーマをノートから書きだしてみました。(順不同)。
【政治】
●「政治改革四法」と形骸化された政治資金規正法〜政治家は約束をまもれ
●「宏池会」の5人の宰相が引きずってきた霞が関経済と政治的無能の系譜
●創価学会、旧統一教会、神道政治連盟〜自民党が「宗教で票集め」の現実
【経済】
●「日本の借金1000兆円」のうそ〜経済は資産と債務のイコールバランス
●ナノインプリント技術の導入で日本が半導体王国≠フ座を奪還する日
●日本のインターネットソフト「トロン」〜国産OSが世界標準になる日
●地下資源に乏しい日本は付加価値¢n造にもとづく経済大国をめざせ
●日本主導のTPPにイギリスが参加して日本式交易が世界ルールになった
●時価総額ランキングで米国の巨大IT企業(GAFA)に完敗した日本企業
●経済法則やルールが存在しない中国資本主義が破綻すれば世界経済も共倒れ
【天皇/皇室】
●旧宮家の男系男子に皇族復帰していただいて立憲君主国の体制を整えよ
●皇室や皇族に尊敬心をもたない皇宮警察に伝統国家の格式をまもれるか
●遺伝子DNAは男系〜ミトコンドリアDNAの女系は次世代に相続されない
●歴史や伝統よりも戦後のGHQ憲法を重視する秋篠宮殿下にあえて提言する
【国家】
●スパイ防止法や破壊活動防止法、国家反逆罪がないのは国家主権がないから
●スパイ罪や国家転覆罪にたいして、死刑が適用される外患誘致罪を援用せよ
●人民と市民、国民〜国民は国家の恩恵をうけ、国家に義務を負う存在である
●法は国家をもたない〜「全国弁護士連合会」が反日・反体制を叫ぶ理由
●独立国はすべて建国記念日と「建国神話(日本では皇国史観)」をもっている
【防衛】
●核ミサイル搭載のSLBM(潜水艦発射型弾道ミサイル)の装備を急げ
●アメリカの核の傘≠ニいう幻想をふりまく自民党リベラル派の妄言
●世界最強だったイスラエルのミサイル防衛網がテロ集団に破られた教訓
●自衛隊を国軍に昇格させて、軍隊・軍人としての地位と名誉をあたえよ
●敵基地攻撃能力のポテンシャルをもってこそ現実のものとなる専守防衛
●1000キロの長距離ミサイルJASSMで中国のすべての基地が射程内に
●国産にむけてうごきだした〜F35戦闘機に搭載される長距離巡航ミサイル
●対中安全保障になっている「日本は七日間で核兵器をつくれる」という神話
【北方領土】
●講和条約で放棄した千島列島に北方四島をふくめた旧ソ連の火事場泥棒
●日本共産党の北方領土認識と「樺太・千島交換条約」の千島列島の範囲
●サンフランシスコ会議で「択捉と国後を『千島南部』と口走った吉田茂
【歴史】
●ケンペル日本誌がひきおこした日本ブームと薩長の西洋コンプレックス
●天皇と豪族の関係/権威と権力の分離/「君臣共治」と「君民一体」
●日本の天皇制「君民共冶」は社会契約論のルソーが理想とした国家だった
●いちども他国に侵犯されたことがない国の国号〜倭国から大和国、日本
●戦争の痕跡がない古墳時代350年と大和朝廷、4700基の前方後円墳
【文化】
●ジェンダーフリーは人間を労働力としてしか見なかったマルクス史観
●夫婦や親子、家系や係属の断絶をはかる夫婦別姓の目的は家族解体
●稲作文化との農本主義、麦の文化と商業主義、大航海時代と重商主義
●学習院を中韓への属国思想・反天皇・左翼に染めこんだ諏訪哲郎と佐藤学
●日本考古学協会は世界最古の縄文文化と三内丸山遺跡になぜ冷淡なのか
●神道が土台の日本の心(文化)〜キリスト教が土台の西洋の精神(文明)
●男女共同参画社会基本法と夫婦別姓は「家族解体基本法」というべき悪法
●なぜ「日本学術会議」は日本の安全を脅かす危険で有害な存在になったのか
●島田洋一教授「日本学術会議は虚飾の肩書と小銭が欲しい古い学者のもの」
【戦後の思想】
●「ウォー・ギルト・プルラム」に洗脳されつづけている日本の平和主義
●吉田茂につぶされた木村篤太郎の「反共抜刀隊構想」と共産主義への危機感
●公職追放によって消えた21万人にとって代わった共産主義者=敗戦利得者
●目的は戦前日本の完全否定〜NHK「真相箱」に見るGHQの対日洗脳工作
●アメリカ左翼の実験台だったGHQによる「日本改造計画」と「八月革命」
●条件つき降伏だったポツダム宣言を左翼が無条件降伏≠ニ強弁する理由
●反代々木系と三派全学連、革共同、赤軍と日本共産党は戦術がちがうだけ
●終戦直後、天皇制支持が95%にたっしてGHQが度肝を抜かれた理由
●「憲法9条信奉」「空想的平和主義」の代用語になった日本のリベラル派
●賃金闘争から文化闘争へ転換して賃金据え置きの日本の労働運動は健全か?
●地下鉄サリン事件のオウム真理教への破防法適用を拒否した公安審査委員会
●「表現の自由」という権利が存在すると思いこんでいる日本人の頭のお粗末
【マスコミ】
●ロッキード事件で大騒ぎした新聞がダグラス・グラマン事件で沈黙した理由
●なぜ反日・反国家に狂奔するのか〜体制内革命団体としてマスコミ文化労連
●「放送法4条」に反対するマスコミの左翼人たちが陥った自己矛盾
●橋下徹の「ウクライナ降伏」やら「パレスチナ勝利」やらの口からでまかせ
●新聞労連(マスコミ労連)はなぜ平和主義と憲法教条主義に陥ったか
●南京大虐殺から教科書、従軍慰安婦とウソばかり書いてきた朝日の良心?
●日本のメディアがくり返す「だから日本はダメなのだ」という自虐の呪詛
●世論を形成している日本マスコミ文化情報労組会議という巨大な左翼集団
●日本を貶めることがマスコミの良心≠ニいう反国家主義=民主主義
●「権力とたたかうため」に記者になった者に欠落している公平な視点
●日本新聞労働組合連合/なぜ日本の新聞は左翼の応援団になったのか
【世界情勢】
●「IPEF=インド太平洋経済枠組み」と日本がリードするアジア安保
●「経済」と「安保」が表裏一体の関係になっている多層的な世界情勢
●クアッドがNATOのような軍事同盟になって歯止めがかかる中国の軍拡
●バイデンの台湾侵攻に軍事介入明言〜ハマスのイスラエル攻撃との関連
●国連改革〜戦勝国連合の内ゲバで機能停止となった国連に存在価値はない
●新「日英同盟」の時代〜日本と英国の連携〜日英同盟はなぜ成功したか
●太平洋を巡る新たな協力枠組み、米主導で創設へ〜日豪英仏など参加
●台湾海峡の平和と安定〜軍事のバランスと積極的な現状維持が唯一の選択肢
●日英の急接近で現実味を帯びてきた「シックスアイズ」への加盟と付帯義務
【アメリカ】
●アメリカの民主主義が壊れはじめた〜リベラリズムという左翼風
●核共有〜日本の核保有をいちばんこわがっているのはアメリカだ
●ヤルタ協定でソ連の対日参戦と戦果を約束したアメリカの大失態
●安保条約とロッキード事件、バブル崩壊〜アメリカ発の三大国難
●日本人が知らない二つのアメリカ/リベラリズムとキリスト原理主義
【民主主義】
●民主主義にテロがゆるされない、ではなく、民主主義だからテロがおきる
●日本の「国体の本義」から民主主義と伝統主義のバランスを読みとる
●輸入品の「民主主義」を日本の「君民一体」「君民共冶」に馴染ませる
●全体主義の「民主」と個人主義の「自由」の区別がつかない日本人
【中国/韓国】
●「中国を恐れない」韓国・尹政権とのあいだに日韓のきずなを築け
●「白村江の戦」「元寇」からはじまっていた中韓との摩擦と緊張関係
●中華思想にどっぷりの中国人〜いまだに李朝の世界観にある韓国人
●共存共栄の大東亜共栄圏と拡張主義にもとづく中国の一帯一路のちがい
●韓国が日本を侮る二つの根拠〜儒教の事大主義と小中華思想の華夷秩序
●従軍慰安婦を戦場売春婦≠ニ断じたハーバード大学教授の世界的常識
●負債総額9700兆円〜個人債務と失業、勤労意欲の欠如に悩む中国
●中国の人材招致プロジェクト「千人計画」に馳せ参じた日本の学者たち
●経済崩壊を政治で処理するしかなくなった習近平が真似る毛沢東の文化革命
●経済思想や人間観が異なる中国の「AIIB」と日本が主導する「ADB」
●「情の日本」と「恨の韓国」〜文化がちがう韓国とは永遠にわかりあえない
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●「政治改革四法」と形骸化された政治資金規正法〜政治家は約束をまもれ
●「宏池会」の5人の宰相が引きずってきた霞が関経済と政治的無能の系譜
●創価学会、旧統一教会、神道政治連盟〜自民党が「宗教で票集め」の現実
【経済】
●「日本の借金1000兆円」のうそ〜経済は資産と債務のイコールバランス
●ナノインプリント技術の導入で日本が半導体王国≠フ座を奪還する日
●日本のインターネットソフト「トロン」〜国産OSが世界標準になる日
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【天皇/皇室】
●旧宮家の男系男子に皇族復帰していただいて立憲君主国の体制を整えよ
●皇室や皇族に尊敬心をもたない皇宮警察に伝統国家の格式をまもれるか
●遺伝子DNAは男系〜ミトコンドリアDNAの女系は次世代に相続されない
●歴史や伝統よりも戦後のGHQ憲法を重視する秋篠宮殿下にあえて提言する
【国家】
●スパイ防止法や破壊活動防止法、国家反逆罪がないのは国家主権がないから
●スパイ罪や国家転覆罪にたいして、死刑が適用される外患誘致罪を援用せよ
●人民と市民、国民〜国民は国家の恩恵をうけ、国家に義務を負う存在である
●法は国家をもたない〜「全国弁護士連合会」が反日・反体制を叫ぶ理由
●独立国はすべて建国記念日と「建国神話(日本では皇国史観)」をもっている
【防衛】
●核ミサイル搭載のSLBM(潜水艦発射型弾道ミサイル)の装備を急げ
●アメリカの核の傘≠ニいう幻想をふりまく自民党リベラル派の妄言
●世界最強だったイスラエルのミサイル防衛網がテロ集団に破られた教訓
●自衛隊を国軍に昇格させて、軍隊・軍人としての地位と名誉をあたえよ
●敵基地攻撃能力のポテンシャルをもってこそ現実のものとなる専守防衛
●1000キロの長距離ミサイルJASSMで中国のすべての基地が射程内に
●国産にむけてうごきだした〜F35戦闘機に搭載される長距離巡航ミサイル
●対中安全保障になっている「日本は七日間で核兵器をつくれる」という神話
【北方領土】
●講和条約で放棄した千島列島に北方四島をふくめた旧ソ連の火事場泥棒
●日本共産党の北方領土認識と「樺太・千島交換条約」の千島列島の範囲
●サンフランシスコ会議で「択捉と国後を『千島南部』と口走った吉田茂
【歴史】
●ケンペル日本誌がひきおこした日本ブームと薩長の西洋コンプレックス
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●いちども他国に侵犯されたことがない国の国号〜倭国から大和国、日本
●戦争の痕跡がない古墳時代350年と大和朝廷、4700基の前方後円墳
【文化】
●ジェンダーフリーは人間を労働力としてしか見なかったマルクス史観
●夫婦や親子、家系や係属の断絶をはかる夫婦別姓の目的は家族解体
●稲作文化との農本主義、麦の文化と商業主義、大航海時代と重商主義
●学習院を中韓への属国思想・反天皇・左翼に染めこんだ諏訪哲郎と佐藤学
●日本考古学協会は世界最古の縄文文化と三内丸山遺跡になぜ冷淡なのか
●神道が土台の日本の心(文化)〜キリスト教が土台の西洋の精神(文明)
●男女共同参画社会基本法と夫婦別姓は「家族解体基本法」というべき悪法
●なぜ「日本学術会議」は日本の安全を脅かす危険で有害な存在になったのか
●島田洋一教授「日本学術会議は虚飾の肩書と小銭が欲しい古い学者のもの」
【戦後の思想】
●「ウォー・ギルト・プルラム」に洗脳されつづけている日本の平和主義
●吉田茂につぶされた木村篤太郎の「反共抜刀隊構想」と共産主義への危機感
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●目的は戦前日本の完全否定〜NHK「真相箱」に見るGHQの対日洗脳工作
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●条件つき降伏だったポツダム宣言を左翼が無条件降伏≠ニ強弁する理由
●反代々木系と三派全学連、革共同、赤軍と日本共産党は戦術がちがうだけ
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【マスコミ】
●ロッキード事件で大騒ぎした新聞がダグラス・グラマン事件で沈黙した理由
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●南京大虐殺から教科書、従軍慰安婦とウソばかり書いてきた朝日の良心?
●日本のメディアがくり返す「だから日本はダメなのだ」という自虐の呪詛
●世論を形成している日本マスコミ文化情報労組会議という巨大な左翼集団
●日本を貶めることがマスコミの良心≠ニいう反国家主義=民主主義
●「権力とたたかうため」に記者になった者に欠落している公平な視点
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【世界情勢】
●「IPEF=インド太平洋経済枠組み」と日本がリードするアジア安保
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●新「日英同盟」の時代〜日本と英国の連携〜日英同盟はなぜ成功したか
●太平洋を巡る新たな協力枠組み、米主導で創設へ〜日豪英仏など参加
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【アメリカ】
●アメリカの民主主義が壊れはじめた〜リベラリズムという左翼風
●核共有〜日本の核保有をいちばんこわがっているのはアメリカだ
●ヤルタ協定でソ連の対日参戦と戦果を約束したアメリカの大失態
●安保条約とロッキード事件、バブル崩壊〜アメリカ発の三大国難
●日本人が知らない二つのアメリカ/リベラリズムとキリスト原理主義
【民主主義】
●民主主義にテロがゆるされない、ではなく、民主主義だからテロがおきる
●日本の「国体の本義」から民主主義と伝統主義のバランスを読みとる
●輸入品の「民主主義」を日本の「君民一体」「君民共冶」に馴染ませる
●全体主義の「民主」と個人主義の「自由」の区別がつかない日本人
【中国/韓国】
●「中国を恐れない」韓国・尹政権とのあいだに日韓のきずなを築け
●「白村江の戦」「元寇」からはじまっていた中韓との摩擦と緊張関係
●中華思想にどっぷりの中国人〜いまだに李朝の世界観にある韓国人
●共存共栄の大東亜共栄圏と拡張主義にもとづく中国の一帯一路のちがい
●韓国が日本を侮る二つの根拠〜儒教の事大主義と小中華思想の華夷秩序
●従軍慰安婦を戦場売春婦≠ニ断じたハーバード大学教授の世界的常識
●負債総額9700兆円〜個人債務と失業、勤労意欲の欠如に悩む中国
●中国の人材招致プロジェクト「千人計画」に馳せ参じた日本の学者たち
●経済崩壊を政治で処理するしかなくなった習近平が真似る毛沢東の文化革命
●経済思想や人間観が異なる中国の「AIIB」と日本が主導する「ADB」
●「情の日本」と「恨の韓国」〜文化がちがう韓国とは永遠にわかりあえない
2023年12月04日
「自由主義」と「民主主義」の相克と調和32
●一神教の西洋と多神教の日本では真逆のセックス観
西洋は一神教で、日本は多神教である。
キリスト教とユダヤ教はヤハウェ、イスラム教ではアッラーを唯一神とする一神教で、この3つ宗教は同じ教典(旧約聖書)から生まれたので、基本的に同じ神を信仰していることになる。
西洋では、一神教、唯一神、絶対神信仰が、一元論の根本理念となっている。
一方、日本は、多神教で、ユダヤ教やキリスト教、イスラム教の啓示宗教にたいして、自然宗教と呼ばれる。
多神教には、神話(古事記)信仰や祖霊信仰、すべてものに精霊がやどるとするアニミズムや八百万信仰、神道があるが、自然がゆたかな日本では、縄文時代から、自然崇拝が主たる宗教観だった。
自然崇拝は、おしべとめしべ、雄(オス)と雌(メス)、男と女の組み合わせでもあって、生殖や繁栄、子孫繁栄を弥栄とする、自然の摂理に合致した宗教といえる。
そこが啓示宗教と異なるところで、自然宗教が、生命や人間、自然や生活と一体化しているのにたいして、ユダヤ教やキリスト教、イスラム教では、神が人間と断絶している。
イエス・キリストは「神の子」である。人類が「原罪」を背負わされているのは、アダムとイブが「エデンの園」で(禁断の実=セックス)を食べて子孫を残す汚れた存在だからで、イエス・キリストは、そんな汚れた罪人の人間を救うために神より遣わされた救世主とされる。
マリアの処女懐胎は、神の子であるイエスが、セックスという性欲(原罪)をとおして生まれた「人間」ではないという根拠からで、キリスト教は、性を徹底的に害悪視するのである。
●日本の自然主義が西洋の理性主義にくつがえされた
西洋で精神がとくに重視されるようになったのは、神を発見した精神が神とつながっていたからである。神と手をむすんだ自我や意識、思考がたどったのが、ルネサンスから宗教革命、啓蒙主義、市民革命、合理主義、科学主義へとむかった理性主義だった。
神の恩恵たるその理性主義が、牙をむいて襲いかかったのが、自然だった。
自然や理性をもたない動物は、神が人間にあたえたもう糧なので、どう料理しようと人間の勝手というのがキリスト教の理屈で、自然崇拝の日本とは、世界観において天と地の隔たりがある。
明治時代、日本では、この西洋思想の影響をうけて、文化革命がおきた。
鎮守の森の90%が破壊されて、さらに、廃仏棄釈令(神仏分離令/1868年)によって、上野東照宮本地塔や久能山東照宮のほか北野天満宮多宝塔や鶴岡八幡宮大塔など全国でおびただしい数の歴史的名刹が廃墟と化した。
そして、夜な夜な鹿鳴館なる西洋館で、西洋式の舞踏会がひらかれた。
この狂気≠ェ文化革命の本質で、鎖国という文化防衛政策でまもってきた日本の伝統的な価値観や世界観、歴史観がこのとき180度転回する。
それが西洋をマネた帝国主義だった。ロシア脅威論のセオドア・ルーズベルトの仲介がなく、日露戦争で、国力ではるかにロシア以下だった日本が、下馬評のとおりに負けていれば日本は、ロシアの一部、ロシア邦ニッポンになっていたはずである。
その後も、日本は、薄氷を踏むような西洋化のみちを歩んで、1945年の第二次世界大戦の敗戦にいたって、ついに、日本は国体の危機を迎える。
このときも、神風がふいて、国体がまもられた。
「ポツダム宣言」が国体護持の条件つきだったことと、マッカーサーが天皇の処罰をきらったこと、中国革命や北朝鮮や独立によって、アメリカが対日政策を「逆コース(保守勢力の復活)」へきりかえたことで、戦争にまけたにもかかわらず日本は伝統国家としての地位をまもることができた。
●反伝統に立つ左翼反日、国際主義者、法関係者
これにたいして、左翼反日、国際主義者、法関係者ら反伝統主義が、異議を申し立てて、わが国を共和制国家や社会主義・共産主義国家、無政府共同体に変更しようとして、さかんにイチャモンをつけている。
伝統国家である日本で、人権や民主、自由や平等が侵害されているというのだが、それは、西洋の価値観に立つからで、普遍的な見方に立てばお門ちがいもいいとこである。
「ジェンダーギャップ調査(ダボス会議)」で、日本の男女格差は、フィリピンシンガポールやベトナム、タイやインドネシア、韓国や中国より大きい(ランキング最下位125位)とされて、左翼は「日本は女性差別の国だ」と騒いでいるが、日本は、4つの調査項目「政治」「経済」「教育」「健康」のうち教育と健康の2つについては世界のトップである。
日本の女性は、十分に教育を受けて、健康にもなんの問題もないのである。
だが、政治と経済については、世界最低である。世界には、日本の専業主婦という概念がないからである。したがって、代議士に立候補しない勤労女性をふくめて、専業主婦は「政治」「経済」の分野で、世界最低にランクされている。
世界の女性が工場や売り場、事務所で働いているあいだ、日本の主婦は家庭で主婦業に精を出し、趣味や習い事などの文化活動をおこなう。
そのような日本の女性が、工場で油まみれになって、あるいは、政治活動に走りまわる女性より下位におかれるのがヨーロッパ思想のエッセンスたるダボス会議の精神で、そんなものを相手にしても仕方がない。
その西洋思想の代表が「ジェンダー(社会的・文化的性差)」で、ジェンダーフリーというのは、女が男のように働き、男が女にようにふるまうことで、男女の性別や性差がないことが西洋人の理想なのである。
性の否定は「エデンの園」や「マリアの処女懐妊」以来、キリスト教の伝統で、キリスト教の本にも禁断の実≠ェ性行為をさすと書かれていない。
自然を克服すべきものとしたキリスト教=理性主義では、おしべとめしべや男と女の組み合わせ、性や性行為が悪魔(「エデンの園ではヘビ)にそそのかされた邪悪な行為になってしまうのである。
●究極の目的は性差なきアダムとイブ≠フ創出
日本の自然崇拝は、西洋の啓示宗教とは真逆で、性や性行為は、自然現象の花形である。
花が咲き、タネをもって、新芽をふく、その自然の原理が信仰の対象で、啓示宗教が唯一神に手を合わせるように、自然崇拝では、太陽に手を合わせるのである。
アダムとイブの「禁断の実」の実体がなにをさして、聖マリアの夫がだれであったかが隠されているのは、性行為が悪魔の邪悪な誘惑で、キリスト教最大の禁忌だったからだった。
一方、日本で、性におおらかなのは、自然崇拝・宗教では、性は、隠し立てするものではなかったからで、ギリシャ神話でも、神々の像は男性器や乳房をまる出しにして、男根の神や生殖の女神も存在する。
日本の建国神話でも、天の高天原より降った男神イザナギと女神イザナミが「わたしの余っている部分(男根)で、あなたの足りていない部分(女陰)を刺し塞いで(性交して)国土を生み出しましょう」と語りあって、天の御柱の周囲を回ったのちに寝所で交わりをおこなっている。
日本神話の最高神、女神アマテラスが、弟のスサノオの乱暴のせいで岩屋に籠って世界が暗闇につつまれたとき、アマテラスを外に引き出すために重要な役割を果たしたのが女神アメノウズメだった。
アメノウズメが衣をはだけて踊りだすと、それを見ていた神々が一斉に笑いだす。その声を聞いて、天照大神が岩戸をあけたその瞬間、岩戸のかげで待ち構えていた天手力雄命が渾身の力を込めて岩戸を引き開けて、天照大神を岩屋から外へ引き出す。
『古事記』ではアメノウズメの踊りをつぎのように記述している。「槽伏の台の上に乗り、背をそって胸乳をあらわにし、裳の紐を女陰まで押したれて、低く腰を落として足を踏みとどろかし」
女神アメノウズメがストリップショーをやったのである。
だが、性がタブーになっていない自然崇拝の日本では、神話における大事なシーンで、性が神的な領域まで高められている。
だが、性がタブーの西洋なら、これは、神的領域どころか、悪魔のしわざということになる。
そこで、西洋では、性の否定(性の無化)という新たな教条主義をつくって人々の目を性からそらそうとした。
それがジェンダーフリー(「性差なき社会」)というドグマで、LGBT法というのは第二の「マリア処女懐妊」なのである。
岸田首相は「オカマ(LGBT)法」を性や性差にたいする多様性といったが、実際は、その逆で、キリスト教的な視野狭窄である。
LGBT法は、現代によみがえった「エデンの園」で、人間は、禁断の実を食べる前のアダムとイブにもどって、性差なき人間になれというのである。
西洋は一神教で、日本は多神教である。
キリスト教とユダヤ教はヤハウェ、イスラム教ではアッラーを唯一神とする一神教で、この3つ宗教は同じ教典(旧約聖書)から生まれたので、基本的に同じ神を信仰していることになる。
西洋では、一神教、唯一神、絶対神信仰が、一元論の根本理念となっている。
一方、日本は、多神教で、ユダヤ教やキリスト教、イスラム教の啓示宗教にたいして、自然宗教と呼ばれる。
多神教には、神話(古事記)信仰や祖霊信仰、すべてものに精霊がやどるとするアニミズムや八百万信仰、神道があるが、自然がゆたかな日本では、縄文時代から、自然崇拝が主たる宗教観だった。
自然崇拝は、おしべとめしべ、雄(オス)と雌(メス)、男と女の組み合わせでもあって、生殖や繁栄、子孫繁栄を弥栄とする、自然の摂理に合致した宗教といえる。
そこが啓示宗教と異なるところで、自然宗教が、生命や人間、自然や生活と一体化しているのにたいして、ユダヤ教やキリスト教、イスラム教では、神が人間と断絶している。
イエス・キリストは「神の子」である。人類が「原罪」を背負わされているのは、アダムとイブが「エデンの園」で(禁断の実=セックス)を食べて子孫を残す汚れた存在だからで、イエス・キリストは、そんな汚れた罪人の人間を救うために神より遣わされた救世主とされる。
マリアの処女懐胎は、神の子であるイエスが、セックスという性欲(原罪)をとおして生まれた「人間」ではないという根拠からで、キリスト教は、性を徹底的に害悪視するのである。
●日本の自然主義が西洋の理性主義にくつがえされた
西洋で精神がとくに重視されるようになったのは、神を発見した精神が神とつながっていたからである。神と手をむすんだ自我や意識、思考がたどったのが、ルネサンスから宗教革命、啓蒙主義、市民革命、合理主義、科学主義へとむかった理性主義だった。
神の恩恵たるその理性主義が、牙をむいて襲いかかったのが、自然だった。
自然や理性をもたない動物は、神が人間にあたえたもう糧なので、どう料理しようと人間の勝手というのがキリスト教の理屈で、自然崇拝の日本とは、世界観において天と地の隔たりがある。
明治時代、日本では、この西洋思想の影響をうけて、文化革命がおきた。
鎮守の森の90%が破壊されて、さらに、廃仏棄釈令(神仏分離令/1868年)によって、上野東照宮本地塔や久能山東照宮のほか北野天満宮多宝塔や鶴岡八幡宮大塔など全国でおびただしい数の歴史的名刹が廃墟と化した。
そして、夜な夜な鹿鳴館なる西洋館で、西洋式の舞踏会がひらかれた。
この狂気≠ェ文化革命の本質で、鎖国という文化防衛政策でまもってきた日本の伝統的な価値観や世界観、歴史観がこのとき180度転回する。
それが西洋をマネた帝国主義だった。ロシア脅威論のセオドア・ルーズベルトの仲介がなく、日露戦争で、国力ではるかにロシア以下だった日本が、下馬評のとおりに負けていれば日本は、ロシアの一部、ロシア邦ニッポンになっていたはずである。
その後も、日本は、薄氷を踏むような西洋化のみちを歩んで、1945年の第二次世界大戦の敗戦にいたって、ついに、日本は国体の危機を迎える。
このときも、神風がふいて、国体がまもられた。
「ポツダム宣言」が国体護持の条件つきだったことと、マッカーサーが天皇の処罰をきらったこと、中国革命や北朝鮮や独立によって、アメリカが対日政策を「逆コース(保守勢力の復活)」へきりかえたことで、戦争にまけたにもかかわらず日本は伝統国家としての地位をまもることができた。
●反伝統に立つ左翼反日、国際主義者、法関係者
これにたいして、左翼反日、国際主義者、法関係者ら反伝統主義が、異議を申し立てて、わが国を共和制国家や社会主義・共産主義国家、無政府共同体に変更しようとして、さかんにイチャモンをつけている。
伝統国家である日本で、人権や民主、自由や平等が侵害されているというのだが、それは、西洋の価値観に立つからで、普遍的な見方に立てばお門ちがいもいいとこである。
「ジェンダーギャップ調査(ダボス会議)」で、日本の男女格差は、フィリピンシンガポールやベトナム、タイやインドネシア、韓国や中国より大きい(ランキング最下位125位)とされて、左翼は「日本は女性差別の国だ」と騒いでいるが、日本は、4つの調査項目「政治」「経済」「教育」「健康」のうち教育と健康の2つについては世界のトップである。
日本の女性は、十分に教育を受けて、健康にもなんの問題もないのである。
だが、政治と経済については、世界最低である。世界には、日本の専業主婦という概念がないからである。したがって、代議士に立候補しない勤労女性をふくめて、専業主婦は「政治」「経済」の分野で、世界最低にランクされている。
世界の女性が工場や売り場、事務所で働いているあいだ、日本の主婦は家庭で主婦業に精を出し、趣味や習い事などの文化活動をおこなう。
そのような日本の女性が、工場で油まみれになって、あるいは、政治活動に走りまわる女性より下位におかれるのがヨーロッパ思想のエッセンスたるダボス会議の精神で、そんなものを相手にしても仕方がない。
その西洋思想の代表が「ジェンダー(社会的・文化的性差)」で、ジェンダーフリーというのは、女が男のように働き、男が女にようにふるまうことで、男女の性別や性差がないことが西洋人の理想なのである。
性の否定は「エデンの園」や「マリアの処女懐妊」以来、キリスト教の伝統で、キリスト教の本にも禁断の実≠ェ性行為をさすと書かれていない。
自然を克服すべきものとしたキリスト教=理性主義では、おしべとめしべや男と女の組み合わせ、性や性行為が悪魔(「エデンの園ではヘビ)にそそのかされた邪悪な行為になってしまうのである。
●究極の目的は性差なきアダムとイブ≠フ創出
日本の自然崇拝は、西洋の啓示宗教とは真逆で、性や性行為は、自然現象の花形である。
花が咲き、タネをもって、新芽をふく、その自然の原理が信仰の対象で、啓示宗教が唯一神に手を合わせるように、自然崇拝では、太陽に手を合わせるのである。
アダムとイブの「禁断の実」の実体がなにをさして、聖マリアの夫がだれであったかが隠されているのは、性行為が悪魔の邪悪な誘惑で、キリスト教最大の禁忌だったからだった。
一方、日本で、性におおらかなのは、自然崇拝・宗教では、性は、隠し立てするものではなかったからで、ギリシャ神話でも、神々の像は男性器や乳房をまる出しにして、男根の神や生殖の女神も存在する。
日本の建国神話でも、天の高天原より降った男神イザナギと女神イザナミが「わたしの余っている部分(男根)で、あなたの足りていない部分(女陰)を刺し塞いで(性交して)国土を生み出しましょう」と語りあって、天の御柱の周囲を回ったのちに寝所で交わりをおこなっている。
日本神話の最高神、女神アマテラスが、弟のスサノオの乱暴のせいで岩屋に籠って世界が暗闇につつまれたとき、アマテラスを外に引き出すために重要な役割を果たしたのが女神アメノウズメだった。
アメノウズメが衣をはだけて踊りだすと、それを見ていた神々が一斉に笑いだす。その声を聞いて、天照大神が岩戸をあけたその瞬間、岩戸のかげで待ち構えていた天手力雄命が渾身の力を込めて岩戸を引き開けて、天照大神を岩屋から外へ引き出す。
『古事記』ではアメノウズメの踊りをつぎのように記述している。「槽伏の台の上に乗り、背をそって胸乳をあらわにし、裳の紐を女陰まで押したれて、低く腰を落として足を踏みとどろかし」
女神アメノウズメがストリップショーをやったのである。
だが、性がタブーになっていない自然崇拝の日本では、神話における大事なシーンで、性が神的な領域まで高められている。
だが、性がタブーの西洋なら、これは、神的領域どころか、悪魔のしわざということになる。
そこで、西洋では、性の否定(性の無化)という新たな教条主義をつくって人々の目を性からそらそうとした。
それがジェンダーフリー(「性差なき社会」)というドグマで、LGBT法というのは第二の「マリア処女懐妊」なのである。
岸田首相は「オカマ(LGBT)法」を性や性差にたいする多様性といったが、実際は、その逆で、キリスト教的な視野狭窄である。
LGBT法は、現代によみがえった「エデンの園」で、人間は、禁断の実を食べる前のアダムとイブにもどって、性差なき人間になれというのである。