アメリカの核の傘≠ニいう幻想を捨てなければ、日本は世界の防衛戦略のレベルから大きく立ち後れる
加瀬英明はトルーマンの原爆投下の決定に参画したジョン・マックロイに「日本が核兵器をもっていたら日本に原爆を投下したか」とたずねた。マックロイの返事はNOだった。「日本が原爆を持っていたらアメリカは原爆の使用をあきらめた」
加瀬さんから直接うかがった話である。
核の抑止力は「相互確証破壊」にある。
核の傘≠ノ相互確証破壊は通用しない。
したがって核の傘≠ヘ破れ傘なのである。、
戦後日本は日米安保条約のなかでずっと核の傘ということばをつかってきた。冷戦構造が解けて、東西対立の時代が終わった。日米新時代になって、日米安保条約のかねあいからアメリカの核の傘≠ニいうことばが日常的に使われるようになった。
宏池会は外交や政治面の期待はできない。そのなかで小野寺五典は宮沢派にいながら防衛問題とよく勉強している。その小野寺さんがテレビでわが国はアメリカの核の傘の下にあるというような話をしていた。
ちょっとちがうぞ。核の傘などというものはない。
中国と日本が戦争になって、中国が日本に核を使った場合、同盟国のアメリカが中国に核で報復してくれるかといえばそれはありえない。
アメリカが核を北京に撃ち込んだら、北京はワシントンに核を撃ちこむ。
アメリカが同盟国日本のために何百万人の自国民を犠牲にするだろうか?
米中とも核保有国なので相互確証破壊≠ニいう論理がはたらく。
ということは、米中間で核戦争はおこらないということである。
日本をまもる「核の傘」の論理はすでに破綻していたのである。
日本のためどころから、世界戦争になっても、アメリカは核を使わない。
核の傘という幻想をふりまいているのは日本の政治家だけである。イギリスの外相は「同盟国は最後まで運命をともにしない」とのべたというが、それが同盟の本質で、政治は、あくまで、国民と国家をまもるためのものである。
他国のために核を使って、自国や自国民が多大な犠牲をこうむるというありえない話がすでに政治の原則から外れているのである。
フランスのドゴールは、フランスの核保有にアメリカが反対したとき、ロシア(当時はソ連)がフランスに核を撃ち込んできたときアメリカは報復としてロシアに核を撃ってくれるのかとたずねている。アメリカは黙ってしまった。そのやりとりのあとフランスは核武装したのである。
小野寺さんは運命共同体ということばを使ったが、認識が甘すぎる。
トランプはコストの問題からアメリカはNATOから抜けるなどの発言をしている。アメリカの経済的負担を軽減させようというハラで日本にも同じ姿勢をむけてくるだろう。
それが政治で、政治とはエゴイズムのかたまりのようなものである。
日本は、運命共同体と称する対米従属の姿勢で、核の傘に頼りきっていいものだろうか?
アメリカが日本のために核を使用することなどありえない。
ドイツ、イタリア、オランダ、ベルギー、トルコがニュークリア・シェアリングして、アメリカの核兵器を受け入れている。
ロシアが核を使ったら撃ち返すぞというわけだが、実際に使用できるわけではない。
持っているだけで抑止力になる〜それが核抑止力である。
対米従属の根本にあるのが1951年の日米安全保障条約である。
吉田茂がサンフランシスコ条約と同時に署名した旧安保条約では、日本のどこにでも米軍基地をつくれるばかりか、アメリカは、日本を防衛する義務すら負っていなかった。
岸の60年安保によって、対米従属から相互防衛と日本の主権尊重の現在の日米安保条約へ更新された。
日本が対米従属から脱皮するには「持たず、作らず、持ち込ませず」の非核三原則を緩和すべきだろう。
具体的には、持ち込ませずをゆるめて、核兵器を搭載したアメリカの原潜がつねに日本近海にいて、核装備した空母がいつでも日本の港に立ち寄れるような軍事的環境をつくることである。
戦略としても戦術としても、アメリカが同盟国のために原爆をつかうことはありえない。
核の傘の下で安全を保っているという日本の政治家はウソをやめるがよい。
核は二国間の抑止力としてはたらくが核の傘≠ニいう集団安保には機能しない。
アメリカは、世界のどの国にも核を使わせないというポリシーをもっている。
ウクライナ戦争でも核は使われなかったが、今後、使われる可能性もない。
ウクライナ戦争は、ウクライナのなかの戦争で、ウクライナはロシア本土を攻撃できない。
アメリカが止めているからで、世界戦争に歯止めをかけるためである。
ウクライナ人が、ウクライナをまもるためにウクライナ国内で死んでゆくのがウクライナ戦争で、ロシアの国内ではいかなる戦闘もおこなわれていない。
ウクライナの戦争は専守防衛の戦争だったのである。
ウクライナが敵基地攻撃能力をもっていれば様相はかわっていた?
専守防衛を叫ぶ日本が戦争をすればウクライナの二の舞になるのである。
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