2024年04月20日

 山本峯章チャンネル 苦言直言第22回

 ●民主主義国家と権威主義国家
 スウェーデンの調査機関が冷戦後の世界情勢を調べたところ 民主主義国家群の比率が 権威主義国家群に比べて 大幅に下がっていたことが判明した。
 179か国の人口比で 民主主義国家が29%(23億人)だったのにたいして 権威主義の国家が71%(57億人)で 二倍以上のひらきがあったのである。
 アメリカの政治学者フランシス・フクヤマが『歴史の終わり』で 民主主義の勝利を宣言した。
 民主主義が勝利した 民主主義によって理想や平和が実現すると書いて 世界的なベストセラーになったのだが、先の統計では、現在、逆に、民主主義が減ってきている。
 大国の中国もロシアも 民主主義の国家群にふくまれていない。
ペレストロイカのあと 民主主義へむかうかと思われていたロシアは 権威主義国家へ逆戻りした。
 中国も ケ小平が改革開放をうったえて民主主義へむかうかと期待をいだかせたが、天安門事件ののち ケ小平が失脚して 習近平の時代になると 中国は権威主義へむかった。
 鈴木宗男がテレビで ロシア大使の前で ロシアにもりっぱな民主主義があると力説した。
 ばかな話で あきれるほかない。
  民主主義とはいったいなんなのか。
 まず 第一に法治国家でなければならない。
 法律で 国家を治めていく能力があること。
人事国家ではだめ ヒトが治めると独裁になる。
 権力の分散も必要で 三権分立が 民主主義の基本である。
なかでも、もっとも望まれるのは自由、自由主義である。
 法治主義と三権分立、自由主義が 現代の民主主義にもとめられているのである。
 
 いま インドが総選挙の準備に入っている。インドは 社会主義的な非同盟中立国で ロシアとの付き合いが深く、兵器もロシア産が多かった。
 冷戦構造崩壊後、民主化すすんで インドも民主主義国家とみなされつつあった。
 ところが先の調査では 権威主義国家に仕分けされている。
 その結果、権威主義国家の人口総数が50億という数字になったのである。
 インドの選挙で 候補者の制限があるか否か明らかではないが、民主主義では 立候補の自由は制限されない。
 ところが、権威主義的な国家では 思想や政府にたいする姿勢によって 立候補をみとめない 圧力や妨害をかけるという非民主主義的なことがおこなわれる。
 中国もロシアもそれがおおっぴらで そこに、権威主義国家と民主主義国家の大きなちがいがある。
 
 中国の習近平がとっている経済政策は「共同富裕論」で これは毛沢東主義である。
 すべての人がゆたかになることをめざすわけだが、これは、理想論で 空想である。
 これにたいして「先富論」を唱えたのがケ小平だった。先に富んだ者たちが落伍者を救って、時間をかけて全体がゆたかになる。
 これで中国の進路もきまったと思っていたところで 習近平の共同富裕論がでてきて 中国は 共産主義を逆もどりしつつある。
 習近平は しばしば 中国には中国の民主主義があると発言する。
 そんな強弁はやめたほうがいい。
 中国には 民主主義はないからである。
 中国は 中国には 中国の民主主義があるという言い方をする。
 なにも、民主主義がすべてで、それがベストの体制ではない。
 中国の大きい領土と14億の人口のあの国家を、民主主義では治められないかもしれない。
 権威主義的な要素がはたらいて 中国は やっと治まっている。
 中国の周囲にあるチベットやウイグル 内モンゴルは 歴史的に見て 独立した国家や民族である。
 中国の領土は、古来、万里の長城の内側にあって、長城の外は 化外の地で 蛮族の国だった。
 清朝も 台湾を化外の地とした。
 中国の領土は 清国の延長だった。
 清国は満州国、女真族の国で 中国ではない。その前の明は 中国王朝。明の時代は チベットやウイグル 内モンゴルが 版図に入っていなかった。
固有の文化、伝統や歴史がまもられて 国家の独立が尊重されていたのである。
 これら3つの国々を中国化しようとしたのは 中華民国の蒋介石で 戦後、これを中国共産党がこれをひきつだ。
 チベットやウイグル 内モンゴルの3つの国で 中国大陸の40%にもなる。
 万里長城の外側の国を欲しかった中国がこれに手を出さないわけはなかった。
 だが、漢民族がこの3つの国を支配した歴史は存在しない。
 明から清になって 3つの国は 清国の版図にふくまれた。
 といっても地図に描かれただけで 清の支配をうけることはなかった。
 わたしは、これまで、中国倒すに刃物はいらない といってきた。
 自由主義をとりいれると 中国は 現在の絶対体制を維持することができなくなる。
 3つの国には それぞれ 国外に亡命国家があって 中国に叛旗を掲げている。
 中国は 民主主義国家と主張しているが 他民族を弾圧しておいて、民主主義はないだろう。
 といっても、民主主義は 理想ではなく、一つの政治体制でしかない。
 そして、それが自由主義国家のなかでベストの体制であろうといわれているだけである。
 民主主義だからしあわせになれるわけではない。
 中国はこのあたりを誤解しないほうがよい。
 次回はこの議論の延長として 中国領土論にふれる。

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2024年04月14日

 山本峯章チャンネル 苦言直言第21回

 岸田首相は「政治とカネ」の問題に決着をつけて 安倍外交をひきつげるか?
「政治とカネ」の問題についてこのチャンネルで すでに2回にわたって 提言してきた。
 そして 政治維新で この問題は解決できないと はっきりと指摘してきた。
 罰則も強制力もない政治的な議論で 前向きな結論がでるはずがない。
 政治家は じぶんに不利なことはいわず、じぶんに不利な法もつくらない。
 このままで 国民が納得する方法が はたしてみつかるのか。
 自民党は これまでのようなザル法では もはやっていけない。
 政治改革の意味でも 政治資金規正法をもっと重たいものにして 罰則を強化する方向へむかわなければダメだ。
 自民党は 4月以内に法令改正をやりたいといっているが 本気でとりかからなければ大きな政治問題に発展する。
 自民党の支持率26% 立憲民主党が16%で、支持率が接近しつつある。
 政治改革にかんして いままで自民党は いいかげんだった。
 94年の政治改革で 自民党は 企業団体からの献金をやめるといった。
 だが、やめていない 。政党助成金と企業献金の両取りをやっている。
 そういうことでは 国民は納得しない。
 それに気づかなければ 自民党の凋落傾向に歯止めはかからない。

 いま岸田首相はアメリカへ行っている(4月9日)。
 そして、米議会で演説をおこなう(4月11日)。
 戦後 国賓待遇で呼ばれて アメリカ議会で演説したのは 安倍晋三元首相が最初だった。
 安倍さんの演説には 議員が感動して 総立ちになったとつたえられる。
 岸田さんは 2回目(議会演説)になるが、岸田さんが 今回 米議会で演説できるようになった根拠を2つあげることができる。
 戦後、日本は、対米従属のなかで 経済だけをやってきた。
 防衛や安全保障は アメリカまかせという甘えの構造のなかで、ヤンキーゴーホームを叫んできたのである。
 昨年の暮れ 岸田さんは「敵基地攻撃能力」を完全に政策化した。
 そして、これにともなう兵器についても購入を決定した。
 これが1つ目なら もう一つの理由は 防衛費を1パーセントから2倍の2パーセントにしたことだった。
 戦後 日本は 甘えの構造のなかで 経済一辺倒でやってきた。
 そして じぶんの国はじぶんでまもるべきという原則を忘れてきた。
 日本は これまで 防衛費1パーセントという 韓国より低い防衛費でやってきた。
 ところが岸田は、防衛費を一挙2倍にした。
 これがクワッド(日米豪印)とりわけ アメリカとオーストラリアから高い評価をえた。
 日本は 防衛や外交に責任をもつようになったというのである。
 その事情もあって 今回 岸田さんが 安倍さんに次いで 米演説ができるようになった。
 岸田首相は 日本がアメリカをサポートする時代になったというビジョンを打ち出した。
 ホントですか 日本の国がそんなことができますか? 
 岸田さんも それなりの意志や決断心をもって アメリカにむかったはずである。
 岸田さんは 案外、 安倍さんの流れをくむような防衛、安保政策をとっている。
 LGBT法などとんでもないものを 党拘束をかけてきめてしまうようなところもある反面 オッと思わせるところもある。
 今回の岸田さんの演説がどういうものになるかわからないが、わたしは岸田首相が日米関係に新しい流れをつくってくれるのではないかとひそかに期待を寄せている。

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2024年04月07日

 山本峯章チャンネル 苦言直言第20回

 国際連盟と国際連合
 国際連盟は、第一次世界大戦後の1919年、アメリカのウィルソン大統領の提案によって、世界平和の確保と国際協力の促進を目的として結成された。
 ところが、当のアメリカは、国際連盟に加盟できなかった。
 孤立主義をとる議会によって加盟案が否決されたからだった。
 国際連盟は 国際秩序の形成にいくらか貢献したが、ロシアが未加盟で、ドイツ、日本、イタリア、スペインが脱退して、戦争抑止力を失った。
 国際連盟の失敗の原因は、提案者のウィルソンがノーベル賞をもらったにもかかわらずアメリカが参加しなかったことにつきる。
 くわえて、国際連盟は、議会の決定権が満場一致の原則に縛られていた。
 一国でも反対すれば議案は流れてしまう。これではなにもきまらない。
 理想を高く掲げたものの実際にはなにもできなかった。
 そして、ついに、第二次世界大戦がはじまってしまったのである。
 1944年の第二次世界大戦末期に日本と敵対する25か国のあいだで国際連合結成のうごきがでてくると、1945年8月の終戦2か月後の10月には51か国加盟による国際連合が結成された。
 国際連盟の欠陥を補うべく、国際連合は 非常任常任理事国10か国、常任理事国5か国の集団指導体制となったが、大きな欠陥もあった。
 常任理事国の五か国が新たに拒否権をもったのである。
 米、英、仏、露、中の戦勝5か国が拒否権を発動すればどんな法案が流れてしまう。 
 今回、イスラエルがアメリカに抗議したのはこの拒否権に関してであった。
「ラマダン(絶食)期間中の即時停戦」という安保理決議にアメリカが拒否権を行使しなかったというのである。
 イスラエルは戦争をつづけたい。ところが同盟国のアメリカは、停戦決議に拒否権を発動することなく、棄権に回ってしまったので即時停戦がきまった。
 識者のなかには、パレスチナ イスラエル戦争は、ラマダン停戦を契機に終結にむかうのではないかという意見もある。
 国連にはそんな影響力も強制力もない。国連は 本来であれば「国際連合軍」をつくって紛争に介入すべきだった。
 ところが、国連結成以来、国際連合軍が結成されたことはいちどもない。
 アメリカ、ロシア、中国の利害が対立する情勢のなかで、つねに、拒否権が発動されるからである。
 国連改革が叫ばれているが大きな効果はあがっていない。
 加盟国も 当時 日本に宣戦布告した25か国、結成時の51か国から現在は193か国になっている。
 常任理事国を10国にふやすべきなど多くの改革委案がでてきている。
 拒否権についても批判があるが、拒否権は、戦勝国の既得権なので、5常任理事国は手放そうとしない。
 国際連盟はわずか26年しかもたなかった。
 国連はすでに70年近くもっている。国連が長持ちしているのは、拒否権をもっているせいといえる。
 拒否権を行使すれば案件はつぶれる。
 したがって、常任理事国は、国連を脱退する必要はない。
 脱退せずに居残って 拒否権を発動したほうが自国の利害にむすびつく。
 その政治的効果によって、国連は長持ちしているのである。

 日本の政治家でいちばんの国連中心主義者は小沢一郎である。
 小沢は 湾岸戦争当時 自民党幹事長として1兆数千億円のも戦費を支出した。
 だが、日本は戦争祝賀会に招待されなかった。
 アメリカは日本も兵を出せといってきた。
 だが、日本は、自衛隊をだすわけにはゆかない。
 小沢はそのかわりに戦費に相当する1兆5千億円をさしだした。
 湾岸戦争はアメリカを中心とした国連有志軍によってあっさり片がついた。
 戦後の国連連合軍の祝勝会に日本が招待されなかった。一方、カネは出さなかったが数百人の兵を送った国はパーティに招かれて感謝状を贈られた。
 1兆5千億円をだした日本は無視されて兵を出した国が感謝される。
 それが国際常識で、カネさえだせばよいという話ではなかったのである。
 小沢さんはかつてこういったことがある。
 敵が攻めてきたらまず自衛隊がたたかう。
 そのあとから国連軍が援けにきてくれると。
 だが、国連軍はいちども結成されたことがない。
 じぶんの国はじぶんたちでまもるという原則を忘れては国防にならない。
 日米安保条約があるのでアメリカは日本を援けてくれるでしょう。
 その前に、日本はじぶんたちの力でじぶんたちをまもる気概を持たなければ一人前の国家にはなれない。
 国連も今回の「ラマダン期間中の即時停戦」くらいのことはできるでしょう。
 国連は、食糧問題から保健機構、貿易問題まで多くの問題を抱えている。
 だが、基本は安全保障理事会にあって、紛争をやめさせるため 国連軍をつくって介入するのが国連の理想である。
 それがいかにむずかしいかいまさらいうまでもないが。

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