2008年07月21日

不透明なCO2排出量取引とCDM

 ●先進国の環境問題は途上国の政治問題
<地球温暖化・石化エネルギー・食糧問題>がテーマとなった洞爺湖サミットで、福田康夫首相は、2050年までに、世界全体の温室効果ガス排出量を50%削減する議長総括(長期目標)を発表、排出量取引についても、本格的な導入を表明した。
 地球温暖化の元凶といわれている二酸化炭素(CO2)を減らすには、先進国の排出量を抑えるのが先決で、今後、紆余曲折が予想されるものの、排出量が多い先進諸国では、すでに、政策化にうごきだし、日・欧では、一応の効果があがっている。
 これを補佐するのが、CO2を吸収する熱帯雨林の保護育成で、福田首相も、排出量取引に、前向きの姿勢をみせた。
 よくわからないのが、この排出量取引である。
 最近、よく耳にすることばで、経済雑誌でも、たびたび、特集にとりあげられているが、排出量取引が地球全体のCO2削減にどう貢献するのか、福田首相の口から、明瞭な説明はなかった。
 排出量取引は、CO2の排出削減目標を達成して、なおかつ、余剰分をもっている国から余剰分を購入する(ホットエア)方法と、開発途上国で、CO2削減につながる事業をおこない、その削減量を先進国へ還元するCDM(クリーン開発メカニズム)という二つの方法があるという。
 前者のホットエアは、たんなるトレードなので、地球全体のCO2は減らない。
 有望なのは、CDMで、亜熱帯の発展途上国で、植林などをおこなえば、その分、自国のCO2削減数値目標へくりこめ、地球全体のCO2削減にも貢献できる。
 日本国内で、森林を増やそうとしても、森林化できる土地が少なく、人件費などのコストも高くつく。
 ところが、亜熱帯の発展途上国には、土地が十分にあり、人件費も安い。日照がゆたかで気温が高いので、樹木の成長も早い。コスト面でも効率面でも、日本国内で植林をおこなう数倍の効果が見込める。
 植林(熱帯雨林)とCO2削減をからめたCDMは、地球全体のCO2を減少させるほかにも、焼き畑から定地農業への転換や食糧自給、雇用創出など、発展途上国にとって大きなメリットがある。
 焼き畑によって失われている熱帯雨林は、年間ベースで、毎年、日本の国土の3分の1(約1、250万ha)といわれる。このまま、破壊がすすめば、70〜80年後には、地球上から熱帯雨林が消滅する。
 くわえて、食糧問題がある。焼き畑でえられるタロイモやヤムイモ類では、ふえつづける人口を養えず、勢い、中国などの外資がすすめる大規模な商業伐採に従事して、現金収入をもとめることになる。
 これでは、数十年で、地球上から熱帯雨林が消えてしまうことになる。
 焼き畑をやめさせ、代わりに、定地農業を指導して、植林事業にかかる雇用をつくりだすという事業は、焼き畑などで失われた広大な森林跡があるパプアニューギニア、インドネシアやフィリピンなどが有力な候補地となりうる。
 問題は、これを排出量取引という枠内でおこなうことが、ふさわしいか否か、である。
 一連の事業を「排出量取引」の枠内でやると、効果測定(国連CDM理事会)に申請して、認定後、トン当たり単位のトレードが可能になる。
 だが、効果測定の科学的プログラムが、発展途上国の手に負えず、くわえて、測定基準の作成、測定にあたる専門家の育成などに何年もかかるため、多くのプロジェクトが、いまだ、手つかずの状態だという。
 熱帯雨林の保護や植林、定地農業の促進は、発展途上国にたいする政策として、おこなわれるべきものであろう。
 日本には、かつて、伐りっぱなしで、丸裸になっていた朝鮮半島のハゲ山に数億本の植林をおこなって、緑をとり返した実績がある。
 日本は、中国に、のべ数兆円のODAをおこない、中国の核武装に手を貸した。
 その何十分の一のコストで、パプアニューギニア、インドネシア、フィリピンなどの亜熱帯の国々で、失われた熱帯雨林の修復や植林、定地農業の開発ができる。
 植林は、大きな雇用をつくりだす。木の成長がはやい亜熱帯で、計画的な植林をおこなえば、自然破壊をともなわない商業伐採も可能だ。
 排出量取引にかかる効果測定は、そのあとで、カウントすればよいことで、日本が、環境立国をめざすなら、発展途上国からの申請をうけて、申請国とともに、基礎データの作成、開発企画、アクションプランを作成する態勢を整えるべきであろう。

posted by office YM at 08:00 | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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