2017年06月06日

 中国・北朝鮮発「アジア・中東危機」A

 ●世界経済を破壊する中国の一帯一路$略
 中国の真珠の首飾り≠ェ「マラッカ・ジレンマ」から脱却するための海洋戦略なら、陸上戦略が一帯一路≠ニ呼ばれる経済・外交圏構想である。
 マラッカ・ジレンマというのは、中東からの原油が通過するマラッカ海峡の安全保障を米軍に依存している弱点のことで、有事の際、米軍によって海峡を封鎖されると中国は海外からの補給ルートの80%が断たれることになる。
 マラッカ海峡を封鎖されても、原油を中国に運ぶ拠点港を確保しようというのが真珠の首飾り$略で、その4大拠点が、前項でのべたとおり、インド洋に面したパキスタン、スリランカ、バングラデシュ、ミャンマーである。
 とりわけ重要なのはパキスタンで、現在、同国のグワダル港から新疆ウイグル自治区(カシュガル)まで横断する鉄道や高速道路、石油・天然ガスパイプラインなどが建設中で、習近平とシャリフ首相とのあいだでは、輸送インフラのほか発電所建設、港湾開発などに450億ドル(約5兆4千億円)の投融資が合意されている。
 グワダル港が起点となる「中パ経済回廊」の構築もその一環で、イランへの経済制裁が解除されるとグワダル港に隣接するイランからの原油陸送が可能になる。
一帯一路≠ヘ、中国の経済・外交政策構想のことで、2013年に習近平が提唱して以来、中国の基本的な国家戦略になっている。
 目的は三つある。
 @国内の過剰生産能力を解消して内需不足を補う
 Aインフラ投資や経済援助をとおして中国経済圏を確立する
 B関連諸国との連携をとおして、安全保障と安定的な資源輸入をはかる
 中国からアジア、中東、アフリカなどをとおって欧州まで陸と海のルートでつなぐ現代版シルクロード≠フ影響をうける国はおよそ65カ国、世界人口の6割にもおよぶが、大半が発展途上国なので、中国は高い戦略的経済効果を上げることができる。
 インフラ投資で釣って、過剰生産で国内に余った資材を売りつけ、見返りにから資源を吸い上げるという植民地政策が、発展途上国相手では、中国の思惑どおりにうまく運ぶのである。
 懸念されるのが関係国の経済破壊で、中国から身の丈に合わないスケールの資金や物資がもちこまれることによって、伝統的な経済・産業構造がダメージをうけるばかりか、巨額の債務と金利で、財政が破綻してしまうことになる。

 一見、順風満帆とみえた中国の現代版シルクロード≠セが、目下、三つの難問に直面している。
 一つは、経済侵略にたいする発展途上国の抵抗で、二つ目が中国の仮想敵国とするインドの巻き返し、そして三つ目が日本の世界戦略(「自由と繁栄の弧」)である。
 中国マネーが猛威をふるう南太平洋のトンガ王国では、住宅・商業ビルから総理官邸、航空機にいたるまで、中国が建造したものばかりで、移住してくる中国人が急増していることからも、国が丸ごと中国に乗っ取られた観がある。
 ミャンマーやラオスなどアジアの発展途上国も同様で、中国マネーと中国の物資、中国人が土地や資源、富を収奪する中国化′サ象がすすんでいる。
 スリランカでは、親中派ラジャパクサ前政権が中国から高金利の巨額融資をうけて債務漬けになる始末で、結局、港の株式の80%を中国に譲渡、99年間の長期貸与を余儀なくされた。
 これに現地人が反発して、ミャンマー(合弁銅鉱山)やスリランカ(ハンバントタ港)では、抗議デモが警察と衝突、多数の負傷者や逮捕者が出る事態となった。
 中国の帝国主義的なやり方に関係国の首脳も危機感をかんじはじめている。
 英紙が「ミャンマーを失った傲慢な中国」と報じたように、中国の従属していたミャンマーは、2015年に民政(アウンサンスーチー政権)が誕生して以降、脱中国の方向へうごきだした。
 スリランカでも、大統領がシリセナに代わって、風向きが変わってきた。
 前政権の港湾プロジェクトは継続されるものの、中国べったりの外交姿勢が転換されて、現在、インドとの関係が修復されつつある。
 これまで中国に依存してきたバングラディッシュも、中国が開発を支援する予定だった深海港建設プロジェクト(ソナディア)を中止して、日本の支援でマタバリ港の開発にあたるほか、6000億円にのぼる日本の経済援助などをうけいれて、ベンガル湾産業地帯構想をすすめる。
 インドも、バングラデシュが提案した鉄道、道路建設、発電所など9部門のプロジェクト(20億ドル/2238億円)をうけいれると発表した。

 中国の植民地政策(真珠の首飾り/一帯一路)にたいするインドや日米欧の巻き返しの背後にあるのが、安倍内閣の「自由と繁栄の弧」戦略である。
「価値観外交」と呼ばれる世界戦略の対象は、東南アジアからインド、中東、コーカサス、中央アジア、バルト諸国から北欧へ至る広大な地域で、大東亜共栄圏の拡大版といってよい。
 共栄圏思想は、植民地政策にたいするアンチテーゼで、強国による支配構造を破って、発展途上国の独立自営を援助する。
 収奪を目的とする中国の一帯一路≠ノたいして、日本は、ODAを中心とした経済支援である。
 中国は、アジアインフラ投資銀行(AIIB)をとおしてバングラデシュに発電所建設など20項目以上、約240億ドル(約2兆5000億円)の経済協力を申し入れたが、バングラデシュは日本のODAをえらび、インドとの共同プロジェクトにものりだした。
 価値観外交の特質は「モラル」と「共栄思想」である。
 中国が北朝鮮を暴走させ、韓国の不安定を招いているのも、覇権主義の中国には、この二つの要因が欠落しているからである。
 中国のエゴイズムと反モラルが東南アジアや中東に飛び火すれば、新たな「危機の構造」をつくりだされる。
 予断をゆるさないのが半島情勢で、北朝鮮の核・ミサイルが世界的な脅威になっているにもかかわらず、韓国は反日の度合いをつよめ、一方、反米の北朝鮮は、中国の手に負えない存在となりつつある。
 特ア(中国・韓国・北朝鮮)の反モラルとウソが底なしの混迷を招いているのである。
 次回以降、日本の世界戦略(「自由と繁栄の弧」)の安全保障面に目をむけてみよう。
posted by office YM at 09:27| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする