2017年06月16日

 中国・北朝鮮発「アジア・中東危機」B

 ●世界を戦場化≠ウせる北朝鮮のミサイルと核
 前世紀まで、米大陸を射程に入れた北朝鮮の核ミサイルが世界を震撼させるなどとだれが想像できたろうか。
 北朝鮮のような小国がアメリカと渡りあえるのは、核やミサイルが空間的に移動が可能な唯物論的文明だからで、近い将来、アルカイダやイスラム国が核ミサイルを保有する可能性も否定できない。
 一方、歴史や習俗、宗教などの唯心論的文化は、移動することも他国と共有することもできない。
 そこに現在の「危機の構造」がある。
 民族や国家、価値観や宗教の対立をひきずったまま、北朝鮮のような小さな独裁国家までが核やミサイルをもつことができ、しかも、米ソ冷戦構造崩壊や米一極支配の終焉にともなって、文化や宗教、利害が異なる国や地域、集団の対立が先鋭化しているのである。
 ハンティントンのいう文明圏(西欧文明/中華文明/インド文明/ユダヤ文明/イスラム文明/日本文明/ロシア文明/ラテンアメリカ文明/アフリカ文明)は、衝突の可能性をひめた文化の壁≠ナ、しかも、同じ文明圏であっても、イスラムのシーア派とスンニ派、北朝鮮と韓国のように一触即発の危機をはらんでいる。
 文化・宗教的に対立する多くの国や民族、集団がいっせいに文明の象徴たるミサイルや核兵器をもてば、核戦争の危機が一挙に拡大される。

「危機の構造」を招いた二つ目の原因に大国の凋落があげられる。
 米ソ冷戦構造の時代、国や地域、集団の紛争は、米ソの代理戦争におきかえられて多くが泥沼化したものの相互確証破壊≠フ論理がはたらき、核戦争にブレーキがかかった。
 この構造があやしくなったのは、アフガニスタン紛争以降である。
 1979年、旧ソ連がアフガニスタン人民民主党政権の安定をはかって軍事介入すると、アフガニスタンの共産化を阻止したいアメリカが、のちに最大の敵となるイスラム原理主義の「アルカイダ(オサマ・ビン・ラディン)」や「ムジャーヒディーン(イスラム戦士・民兵組織)」に武器や資金を援助してソ連に対抗した。
 アフガニスタン紛争への介入がソ連邦崩壊を招き、9・11同時多発テロの原因となったが、それ以上に大きな失点は、アフガン紛争に勝利できなかったことで、以後、米ソ(ロ)は、大国としての指導力を失い、イスラム過激派は武闘(テロ)路線を突っ走ることになる。
 アフガン介入から湾岸戦争(1991年)からアフガン空爆(2001年)イラク戦争(2003年)へ突進したアメリカにあったのは、軍事国家の驕りと国家エゴだけで、世界和平への努力はないにひとしかった。

 ソ連崩壊後、アメリカの一極支配が約20年間つづくが、「9・11同時多発テロ」以降、アメリカのプレゼンスに翳りがでてくると、復活の兆しがみえてきたロシアと台頭が著しい中国がくわわって、パックス・アメリカーナ(一極支配)から米・ロ・中の三極支配へとパラダイムが変わっていった。
 一極支配も多極支配も、結局、大国主義で、核を保有する国連常任理事国5か国(米・英・仏・ロ・中)による世界支配の構造である。
 五大強国のうち、米・中の二国が覇権国家である。
 そのなかで、覇権主義をひときわ露骨にしているのが中国である。
 経済力と軍事力で周囲の弱小国をねじふせる中国の覇権主義は、チベットやウイグル、南シナ海などで成功をおさめ真珠の首飾り≠竍一帯一路$略でも一応の成果をあげたが、ここにきて、足元がぐらつきはじめた。
 北朝鮮の離反と覇権主義にたいする南アジア諸国の抵抗である。
 覇権主義の失敗は、アフガニスタンで、米ロが経験済みである。
 力の論理は、真の勝利や和平をえられないばかりか、軍事主義の分散を招いて、周辺や状況を戦場化≠オてしまうのである。
 アメリカのアフガン攻撃は、タリバンの勢力圏を拡大したにすぎず、イラク戦争はIS(イスラム国)というテロ国家をつくりだしただけだった。
 北朝鮮もテロ国家で、アメリカを敵視するのは、南朝鮮(北は韓国を国家とみとめていない)の宗主国だからである。
 北朝鮮にとって、米軍は、アフガン紛争へ二度介入した異教徒の軍隊だったのである。
 金正恩は、国内に従軍慰安婦像を建てることを禁止し、戦争記念館(中央階級教養館)に予定されていた反日的な宣伝物の展示を不許可とした。
 韓国が「独立記念館」に反日的な展示物を並べているのとは対照的である。
 北朝鮮にとって、朝鮮戦争に関与していない日本は敵ではないので、韓国の反日教育と日本の嫌韓感情はむしろ望ましい。
 中国や韓国が対日敵対政策をつよめると「敵の敵は味方」「味方の敵は敵」という論理がはたらくのである。

 北朝鮮が中国から距離をおいているのは、中国の覇権主義と韓国への接近を警戒してのことで、北にとって敵と味方のボーダーラインは、覇権的か否かと親韓的か嫌韓的かの二点である。
 中国がアメリカや韓国に接近して北朝鮮をしめつけると、ますますロシアへ傾斜してゆく。
 トランプから要請されても、中国が北朝鮮に強硬な措置をとれないのはそのせいで、一方、アメリカは、中国からOKがでなければ、西太平洋に展開中の三隻の空母「カール・ビンソン」「ロナルド・レーガン」「ニミッツ」から一機の攻撃機も出撃させることができない。
 プーチンとの電話会談後、トランプが腰砕けになった理由もそこにある。

 北朝鮮がミサイル発射実験をくり返している理由は二つあるだろう。
 一つは、アメリカと韓国、日本、中国にたいする警告で、ロシアは対象外である。
 事実、ロシア(国防省)はミサイルが領海近くに落ちても「危険はない」と平然としたものである。
 もう一つの理由は、商売のためである。
 北朝鮮が高度2千キロ(ロフテッド軌道)を超える高性能ミサイルの発射を成功(2017年5月)させたが、これは、北朝鮮の軍事的脅威という問題にとどまらない。
 商談がまとまれば、イスラム圏や第三世界が、迎撃不能な高性能ミサイルを北朝鮮から入手できることになって、先進国の都市圏は一挙に危機にさらされる。
 秘密裏におこなわれるミサイルの国際取引は、無原則で、中国製(東風21)がサウジアラビアへ、北朝鮮製がイラン、パキスタン、エジプト、リビア、シリア、イエメンからミャンマーにまで渡っている。
 北朝鮮のミサイルの輸出額は、わかっているだけで、年15億ドル(約1440億円/2009年/ロイター通信)にたっするが、国連制裁がなかったら、取引の総額は、この数倍以上になるだろう。
 インドの核保有に対抗するパキスタンの核が、中国から供給されたのは疑えないが、北朝鮮も、イランやミャンマー(軍事政権)の核開発に関与してきた形跡がある。
 オーストラリア紙(シドニー・モーニング・ヘラルド)によると、ミャンマー軍事政権が北朝鮮の協力の下で北部山岳地帯の地下に原子炉とプルトニウム抽出施設を建設、5年以内の核爆弾開発を目指していた(亡命者2人の証言)という。
 韓国誌の週刊誌(「週刊朝鮮」)も、亡命ミャンマー人の証言として、北朝鮮が2003年から技術者を派遣して、巨大な地下施設(700前後)の建設を支援してきたと報じている。
 イランが核協議の「最終合意(イランと米欧6か国/2016年)」をむすんでも、核弾頭やミサイルの輸入をとめることはできない。
 ということは、核開発をおこなわなくても、北朝鮮から輸入すれば、いつでも核装備をもてるわけで、その結果、イスラエルの核が無力化され、サウジアラビアの核装備が正当化される。
 スンニ派の盟主サウジアラビアは、シーア派の大国イランが核をもてば核装備をおこなうと明言しており、そうなれば、中東情勢が一挙に緊迫化する。
 米・中・ロなどの大国が「世界の安定」という選択肢を捨て、力による支配と覇権主義に走った結果、世界の戦場化≠ニいう最悪のシナリオが書かれてしまったのである。
posted by office YM at 14:15| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする