2018年03月06日

 神道と世界最古の文明「縄文文化」35

 ●天皇と民主主義「勅と法」(6)
 歴史と現在性の関係は、わかっているようで、案外、理解されていない。
 歴史はタテに連続する時間軸で、一方、現在は横に広がる空間軸である。
 われわれが生きているのは、現在という空間軸だが、現在は、過去や歴史という時間軸の上に成り立っている。
 ひとは、現在を生きる空間的な存在でありながら、一方では、歴史を生きる文化的な存在で、言語から習俗、文化、文明に至るまで、現在あるものは、すべて過去からひきつがれた歴史の恩恵である。
 人類は、歴史という時間軸と現在という空間軸の両方を生きることによって人類たりえている。
 したがって、だれもが、生来的な保守主義者といえる。
 何人といえども、過去を否定することはできない。
 過去は、過去の人々によって築かれたからで、これを否定するなら、過去の人々にも投票権があたえられるべきである。
 死者が投票場へ足を運べないなら、現在を生きる者たちは、ひたすら、過去を受け継がなければならない。
 現在が、過去の集積であるとするならば、現在を生きる人々も過去に生きた人々も、ともに歴史的国民だからである。
 現在を生きている人々の身勝手な都合によって、歴史や伝統を否定するのは歴史や先人らへの冒瀆であって、死者と生者が共にある歴史的国民の原則に反する。
 保守主義は、歴史を継承することにあって、これは、歴史を破壊するよりもはるかに価値があり、はるかに困難な仕事なのである。

 万世一系を否定した「皇室典範に関する有識者会議」(2005年)の吉川弘之座長(元東京大学総長)は「伝統は無視した」と堂々と言い放ったものである。
 昨今の女系天皇論も、歴史の不可逆性を無視した暴論で、現在を生きているにすぎない者たちが歴史を変更できるとするのは、無知でなければ傲岸不遜なる思い上がりというしかない。
 人々は、過去の事跡や伝統、文化的価値などの歴史の遺産に目もくれない。
 そして、歴史的存在であることを忘れて、目先の利害に右往左往している。
 生きているのは、現在という瞬間ではなく、過去から現在、現在から未来へつながっていく歴史の連続性という自覚がないのである。
 そこに、保守主義者と左翼・革新・反日を隔てるボーダーラインがある。
 国民と人民・市民のちがいもそこからでてくる。
 国民は、歴史や文化、民族性などの同一性を共有する歴史的国民で、人民や市民は、歴史や国家から切り離された孤独な人々の群れである。
 歴史が失われるのは、革命によって、時間軸が断ち切られたからで、残るのは、現在という過去を失った空間だけである。
 民主主義が革命イデオロギーになったのは、民主の民≠ェ歴史や文化から断絶した民≠セったからである。
 左翼が民主主義をもてはやすのは、革命の武器だからで、民主主義を立てて歴史から国体までをかえてしまおうというのは悪魔の思想というしかない。
 民主主義こそが過去殺しで、革命で歴史を断ち切った英・仏・米・ロが民主主義を標榜したのは、歴史の叡智を捨てると、チャーチルが「独裁よりマシなだけ」といった民主主義しか残らないからである。
 民主主義は、多数決のことで、国民主権の国民と同様、多数派の正義ということである。
 すべて多数決できめる民主主義は究極の衆愚政治で、戦後、この民主主義が大手をふってきたのは、戦争に負けたからである。
 それでも、日本が三流国家へ転落しなかったのは、君民一体の天皇がおられたからで、したがって、民主主義が暴走することなく、伝統国家としての品格や叡智、誇りもまもられたのである。

 歴史と現在の落差は、宗教や政治、思想などの分野で、さまざまな二元論をつくりだしてきた。
 保守と革命、伝統と革新、唯心論と唯物論、生と死などである。
 歴史は過去で、死でもあるが、その過去に根源的価値をみるのが保守主義である。
 現在を生きる人々が、エゴをむきだしにして生きれば「万人の戦争がおこる」(ホッブス)ので、国家や法、常識などのかつてつくられた制度やシステムの網をかけようというのが保守主義なら、過去ではなく、人間の頭の中で考えたイデオロギーで人民を支配しようというのが革命主義である。
 革命や改革主義は、美辞麗句や美しい観念論を並べるが、所詮、歴史や伝統を断ち切った過去殺しで、過去を失った世界には、一滴の血も流れていない。
 歴史のタテ軸と現在の横軸を、聖俗二元論に置き換えることもできる。
 ひとはパンのみに生きずに非ずで、俗にどっぷり漬かりながら、聖をもとめるのが人間なのである。
 伝統は、天皇中心の平和な国民国家を形成するが、天皇が政治利用されると、この構図が逆転する。
 次回以降、天皇と国家の関係について、近代以降をふり返ってみよう。
posted by office YM at 11:40| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする