2019年04月15日

神道とはなにか@

 神道とはなにか@
 ●国家神道と復古神道
 神道と聞いて、国家神道を思いうかべるひとがいるかもしれない。
 国家神道は、国家と天皇をむすびつけて、神道の国教化をはかったイデオロギーで、縄文時代に始原をもつ神道ほんらいのすがたから、大きくかけ離れている。
 思想家で、神道家でもあった葦津珍彦は、国家神道について、「神道的神霊を無視するもので、神社と神道の信仰をふみにじった」と慨嘆した。
 国家の保護によって、却って、神道本来の宗教的霊性が失われてしまったというのである。
 いずれにせよ、国家神道が、日本人の宗教観からみて、異様なものだったのは疑いがない。
 明治政府の神道分離令、太政官制における神祇官の設置、大教宣布の詔から廃仏毀釈へつきすすんだ国家神道の源流を遡れば、平田篤胤の「復古神道」にたどりつく。
 平田がうけついだのが、江戸時代中後期、儒教や仏教を退けて、日本固有の精神を研究した国学だった。
 その四大家が、契沖(けいちゅう)と荷田春満(かだのあずままろ)、賀茂真淵、本居宣長である。
 万葉・記紀研究の基礎をつくった契沖と荷田春満の跡をついだのが、日本の古代精神「いにしえごころ」「ますらおぶり」を謳った賀茂真淵だった。
 賀茂の門人にあたるのが、源氏物語の「もののあはれ」の本居宣長で、宣長は、30余年をかけて「古事記」を解読した。
 本居宣長没後、門人を自称したのが平田篤胤で、平田の復古神道が、幕末の尊王攘夷運動につながったのは、平田は、当時のベストセラー作家でもあったからだった。
 平田の神道観は、宣長のそれとはまるっきり異なっている。
 本居宣長の神道が「何にまれ、尋常(よのつね)ならずすぐれたる徳(こと)のありて、可畏(かしこ)き物を迦微(かみ)とは云なり」とカミを日本的な感性でとらえたのにたいして、平田は、キリスト教の「最後の審判」の影響をうけた幽明審判思想を唱えた。
 さらに、その門人らが、天之御中主神を創造神とする一神教的な宗教理論を展開するにいたって、宣長の古道(古神道)精神は、根こそぎ書きかえられてしまった。
 国家神道が、日本の伝統的な精神である神道の異端児だったことは、明らかだが、さりとて、神道について、明確な定義があるわけではない。
 神道には多くの分派諸派があって、それぞれ、独自の主張をおこなっている。
 神道は、仏教との接触、神仏習合、神話や皇室神道、神社神道、伊勢神道や吉田神道などの教義的発展と、これまで、大きな節目をいくつもこえてきた。

 ●日本人的思考の根底にある神道
 だが、神道のもともとの形は、自然崇拝である。
 万物に精霊が宿っているとするアニミズム、シャーマンが霊的存在と交信するシャーマニズム、神と自然が同一であるとするパンセイズム(汎神論)が、神人合一の空間をつくりあげ、それが、現代にまで、つづいている。
 正月の初詣、初宮詣、七五三、建築関係では地鎮祭、上棟祭、人生の転機におこなわれる厄払い、合格祈願に至るまで、日本人の生活のなかに神社への参詣がそっくりとけこんでいるのである。
 神道と民俗・風習が、分かちがたく接している。
 神道という宗教があるというより、生命や生活の活動が、そのまま、神道という信仰空間になっているのである。
 神道は、自然や日本の風土にもとづいた原始信仰で、無意識なのは、キリスト教や仏教のような人格神がいないからである。
 それが、「神ながら言挙げせぬ国」ということである。
 縄文時代から弥生時代、古墳時代にかけて、原型がつくられた神道は、日本人の生活や日本文化、日本人的思考の根底にあるもので、宗教であって、文化的・精神的な基盤でもあった。
 ところが、一神教は、神道のカミが、自然崇拝や庶物崇拝、祖先崇拝などの古代宗教に属するとして、劣等自然教とみなそうとする。
 多神教から一神教、自然神から人格神、精霊的な神から理性的な神、集団の神から個人の神へと、宗教が発達してきたとする進歩史観をもちだすのである。
 クリスチャンにとって、自然は神からあたえられた生活材である。
 自然合一などかれらにとって、なんの意味もなかったろう。
 一神教的な価値観に慣れた現代人は、合理や理性、論理に走る。
 だが、ヒトが、宗教へむかうのは、超越性や神秘性、卓絶したものをもとめるからである。
 すぐれた芸や作品から、人間の領域をこえたものをみると、ひとは、宗教的な感動をおぼえる。
 偉人は、祭られて、カミになるが、生きていても、神になる。
 国民栄誉賞や人間国宝がそれで、長嶋茂雄は野球の神さま≠ニ呼ばれた。
 日本では、超越的な力をもったひとは神さまなのである。
 次回以降、神道と一神教の比較信仰論を展開してゆこう。
posted by office YM at 03:16| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする