2019年07月18日

タテマエ政治から脱却せよ@

 ●丸山議員問題と日韓外交危機
 北方領土返還で「戦争」に言及した丸山穂高衆院議員をめぐって、ドタバタ劇がくりひろげられた。
 日本維新の会の除名から国会の「糾弾決議」、自民・公明の「譴責決議案」、野党6党派の「辞職勧告決議案」に至るまで、丸山議員叩きは、すべてタテマエ論で、ホンネの現実感覚ゼロという空虚さであった。
 テレビ朝日コメンテーターの玉川徹は「羽鳥慎一モーニングショー」でこう叫んだ。
「戦争しないっていうのは国是なんです。日本は戦争をしないと決めた国なんですよ。『戦争という手段しかないんじゃないですか』というような発言をする人間には国会議員の資格はないと思います」
 日本が戦争をしないと決めた国なら、他国が日本の領土を奪おうと、日本人をいくら殺そうと、遠慮はいらないということになる。
 国家には自衛権があって、それはゆるさないというのなら、二枚舌で、そうなら、日本は戦争をしない国などというタテマエはいわぬがよい。
 丸山議員は「北方領土を不法占拠しているロシアに糾弾決議を出すなら分かるが、わたしに出すというのは遺憾だ。任期をまっとうしていきたい」とのべた。
 除名、糾弾、譴責、辞職勧告でつるし上げられた丸山のホンネのほうがよほど正気ではないか。
 丸山発言は、ロシアの「北方領土は戦争でとった」にたいする売りことばの買いことばで、丸山が悪いというのなら、ロシアの言い分、ロシアの言い分を垂れ流してきたメディアに落ち度はないのか。
 ロシア外務省のザハロワ情報局長が丸山議員をさして「言語道断だ。一人の政治家の極端な意見なのか、日本のエリート(丸山は東大卒)の感覚を反映したものかどうか調べる」と恫喝した。
 この脅しを耳にしたのかどうか、維新の会がソ連大使館へのこのこと謝罪にでかけた。
 百田尚樹は怒り心頭に発してこうのべる。
「旧ソ連が(北方領土を)強盗したのだ。被害者が強盗に『すいませんでした』って言うのはおかしいだろ」
 ネットはもっと過激で、「言語道断は、お前らロシアだ! お前らが、大東亜戦争終結後、日ソ中立条約を一方的に破って、火事場泥棒で日本の北方領土を占領、略奪、強姦、殺人のかぎりをつくし、極寒のシベリアに60万人の日本人を抑留して殺した。ふざけるな! 」という調子である。
 ネットウヨが悪評紛々なのは、タテマエを忘れて、このようにホンネを吐くからである。
 ちなみに、「丸山穂高議員の議員辞職は必要ですか?」という質問には90パーセント近くがノーと答えている。
 投票総数6053票/議員辞職の必要ない88%/議員辞職するべき12%
 頭に血がのぼった日本の政界・マスコミ・TVタレントの対応にたいして、ウクライナ気鋭の政治学者アンドリー・グレンコの観察は冷静なもので、日本の「二島返還」に反対論を展開しただけのことはある。
「丸山議員の発言は、戦争が不可能なら返還も不可能、というロシアにとって有利な論理をひきだした。失敗だ。ロシア経済には好材料がない。日ロ交渉のタイミングは、将来、日本とロシアの立場が逆転して、ロシアが日本に援助をもとめてきたときだ」
 これまで日本には、現実的なスタンスに立って、ストレートにホンネを吐くグレンコのような識者は皆無だった。
 もって回った口ぶりで、きれいごとのタテマエを並び立て、ホンネを隠すのがこれまでの日本人のやりかただった。
 その悪癖によって、日本は、いままで、どれほど、損をしてきたことか。
 大義名分やタテマエを立て、前大戦では、世界を敵に回して、原爆まで落とされた。
 日本人は、タテマエとホンネの両方を使い分けているつもりでも、外国人にとっては、ただの嘘か二枚舌でしかない。
 タテマエには、世界から理解をえる真実も普遍性もないのである。
 アメリカは、韓国抜きで北朝鮮と交渉でき、中国とは四つに組んで、貿易摩擦という相撲をとっている。
 韓国も日韓同盟も、いまや無用というわけで、これが、アメリカのホンネである。
 ちなみに、ロシアの「北方領土は戦利品」というのもホンネである。
 日本人は嘘つきといった外国人外交官がいたというが、タテマエは、ウソよりも罪が深い。
 ウソは個人の出来心だが、タテマエは、全体主義で、中国や北朝鮮は、タテマエだけでできている国である。
 ファシズムも民主主義も、全体主義も官僚主義も、儒教とりわけ朱子学の大義名分論も国家スローガンも、赤信号みなで渡ればこわくないジョークも戦争放棄も、すべて、タテマエである。
 日本が、外交で失策をかさねてきた原因が、このタテマエ主義だった。
 タテマエを捨てて、ホンネをずけずけいう政治家が丸山議員である。
 レーザー照射問題では岩屋防衛相にこう注文をつけている。
「うそでも百回言っていったらこれが正しいみたいなことになりかねませんので、しっかりこれは主張していただきたい」
 北方領土問題では、河野太郎外相への質問をこうしめくくっている。
「領土が戦争や武力以外で返ってきたというのは稀なケースと思います。その稀なケースに挑戦しなければなりません。外相や総理の手腕にも期待しております」
 そのほか、国会議員の「国籍条項」や生活保護法の「国民条項」など、これまで、馴れ合いですまされてきた問題についても鋭いつっこみをいれている。
 一連の丸山バッシングにのっかったタレントにもホンネをぶつけた。
「上西小百合氏の末期症状に酷似」と丸山議員を批判した東国原英夫にたいしては、「『おまゆう(おまえがいうか)』に思わず大爆笑」「暴行容疑の現行犯で逮捕、傷害容疑で書類送検、淫行関係で事情聴取されたことのある芸人にえらそーに言われてもねぇ」と一蹴。
 フジTVバイキングへの出演を誘った坂上忍には「飲酒運転で器物破損逃亡劇の件をやるなら検討しますけど、残念」とこばかにした風情。
 顔も見たくないと丸山を批判した和田アキ子にたいしても「わたしも和田さんが出たらチャンネル変えます。一緒で光栄です。最近はテレビで姿を見ません。紅白すら出てないようですね」と揶揄している。
 それだけではない。フジテレビには、人気番組「志村けんのバカ殿様」を「肉布団番組(水着の女性たちが布団代わり)」と批判した上で、「そのほか、持ち株会社の税金無駄遣いクールジャパン機構出資とか放送法上の問題にからめて言うべきことが数多くある」とフジテレビ上層部にゆさぶりをかけた。
 日本人は、頭でっかちに、意味や価値、原理などの抽象論ばかりいって、現実的なモノやコト、具体的な事象には目をむけてこなかった。
 それがタテマエ主義で、タテマエが横行すると、現実機能や現実にたいする適応力が害われる。
 観念論的なタテマエ主義から脱するには、丸山議員のような実在論的個人主義者の登場が必要なのである。
 次回以降、タテマエ外交で、泥沼化した日韓関係をふりかえってみよう。

posted by office YM at 10:23| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする