●日本はアジアで指導的立場に立てA
米・中の新時代もしくは5極(米・中・日・欧・ロ)時代、これにカナダやオセアニア、ブラジル、インド、アフリカ、中東などをくわえた多極化時代になっても、日本にもとめられるのは、国家の独自性であって、マスコミ知識人がバカの一つ覚えのように吹聴する国際化ではない。
かつて、日本では、学識者やマスコミ知識人の言説に踊らされて、国際化を善としてきたが、それがまちがいだったことは、いまや、だれの目にも明らかだろう。
国際主義が破綻してうまれたのが、米中対立や5極体制、多極化である。
目下の国際情勢は、冷戦以前、大戦以前に近く、国家戦争がないのは、核の分散と主要国の軍事力強化で恐怖の均衡≠ェゆきわたって、どの国も戦争ができなくなってしまったという皮肉な作用の結果である。
大事なのは、国際性や協調性ではなく、存在感(プレゼンス)で、無防備と侮りを買うふるまいほど平和を脅かすものはない。
その論でいうと、日本の憲法第九条が平和を脅かす潜在的要因になっているのだが、日本人は、だれもそのことに気づいていない。
国際派は、マルクス主義から社民主義、アメリカ主義、中華主義まで多様にわたるが、共通しているのは、反日と反伝統で、日本は、明治維新の西洋化と第二次大戦後のアメリカ化を筆頭に国際派が大手をふってきた。
戦後、GHQの公職追放令の恩恵で、大学や公官庁にもぐりこんだマルクス主義者、渡部昇一が指摘した敗戦利得者もこのなかにふくまれる。
かれらの言い分は、終始一貫、自己否定で、改革主義もここにふくまれる。
改革主義の旗手が小泉純一郎元首相で、悠仁親王ご生誕によって万世一系を否定する皇室典範改悪(2005年)の危機はかろうじて免れた。
だが、日本の資本主義を否定する新自由主義の導入は阻止できなかった。
新自由主義が日本経済にあたえたデ・メリットを三つあげることができる。
1、株主の利益を優先して、生産と消費の振興、市場と雇用の拡大、国富や国民のゆたかさを犠牲にした
2、株主配当と株価の高値維持のため内部留保を優先して積極経営を捨てた
3、企業を株主の利得構造として、研究開発費や設備投資を怠った
その結果が、日本資本主義の停滞で、日本は、三つの段階をへて、沈没していった。
それが空白の30年で、最初の10年がバブル崩壊、2つ目がデフレ不況だった。
そして、最期の10年が新自由主義導入による沈滞で、バブル経済崩壊後の日本経済は、延々と30年もダメージをひきずってきたのだった。
30年前、世界の企業の時価総額ランキングで、NTTやメガバンク、東京電力などの日本の企業がトップ20のほとんど占めていた。
ところが、現在の世界の時価総額ランキングでは、アマゾンやマイクロソフト、フェイスブックなどのIT企業が上位を占め、日本企業は、42位にようやくトヨタがくいこんだだけというていたらくである。
ものづくり中心の日本企業が、アメリカがつくったインターネットインフラの上に構築された世界マーケットから放逐されてしまったのである。
日本経済が休眠状態にあったこの30年間で、世界でおきていたのが、AI(人工知能)や5G(次世代通信技術)の実用化などの新しい潮流だった。
AIは、モノ同士がインターネットでつながる(IOT)システムの頭脳部で、一時、凋落したマイクロソフトが復活したのが、クラウドと呼ばれるAI開発だった。
5G(第五世代移動通信システム)は、インターネット時代の中心的な技術で、AIとも深いかかわりがある。
中国とアメリカ、欧州の企業は、AIや5Gをめぐって、激しい開発競争をくりひろげ、とりわけ、中国は、10年以上前から、ITやAI、5Gなどの分野で優秀な人材をヘッドハンティングして、国家ぐるみで育ててきた。
5G関連の特許保有数で、中国が日米に大きく水をあけているのはその成果である。
IT産業革命で負けた日本は、あらゆるモノがインターネットに接続される第4次産業革命に勝てる見込みが薄い。
5Gの技術開発に、日米欧の協力が必要なのはいうまでもないが、それ以上に、日本という国家にもとめられているのは、米中に太刀打ちできるだけの研究費と人材育成の意欲であろう。
2018年のAIの開発予算は、アメリカが7兆5000億円、中国が1兆500億円なのにたいして、日本は6770億円で、政府予算にいたっては米中の15%というお粗末さである。
一方、日本企業の内部留保は460兆円で、それが、大企業に集中している。
これは、未来という材木を捨てて、目先の木っ端を拾っているにひとしい愚行である。
日本の企業の99・7%が中小企業(小企業が87%)で、製造業付加価値の半数を占める大企業は0・3%にすぎない。
日本企業のつよさは、工作機械や部品、ロボットや設備をつくっている中小企業にあって、AIや5Gの時代にあっても、その地位はゆるがず、世界的なシェアも落ちていない
日本経済が弱体化したのは、大企業が、内部留保に精を出して、研究開発や設備などの未来投資を怠ったからで、これこそが、株主資本主義といわれる新自由主義の最大欠点といえる。
米・中・欧・ロなどの強国がつぎつぎと国家資本主義的な政策をくりだしてくるなか、日本がとるべき国家戦略は、次の2つであろう。
1、AIやIOT(モノのインターネット)、5Gに特化した技術省庁の新設
2、大企業の内部留保をターゲットにした法人特殊税の新設
国家資本主義は、資本主義が、資本の論理だけではたちゆきならなくなった世界的な情勢を背景にしている。
次回は、国家経済と国際協調、安全保障のかねあいについても考えてみたい。