2019年12月02日

米・中の新時代と日本の役割E

 ●日本はアジアで指導的立場に立てB
 日本経済は、この30年間、横ばいで、GDPも5兆ドル弱ラインをうろうろしている。
 GDPランキングは、一応、3位だが、ドイツやイギリス、フランスやインド、イタリア、ブラジル、カナダが、射程圏内で、後を追ってきている。
 アメリカの1位(20兆ドル弱)は、デジタル革命の覇者にしてインターネットインフラをつくりあげた国として、うなずける。
 驚くべきは、2009年まで3位だった中国が、わずか10年で、2位だった日本を追いこして、日本の3倍(12兆ドル強)までGDPをのばしてきたことである。
 スマートフォン(5G/通信システム)や人工頭脳(AI)の分野で、長足の進歩をとげた結果である。
 一方、日本のGDPが30年間も停滞した理由は、スマートフォンというハードとこれに関連する5GやAIというソフトの開発を怠ったからである。
 東芝やシャープ、ソニー、パナソニック、NEC、日立、富士通、三菱電機など、かつて、世界のトップ企業だった日本の電機大手が壊滅状態になったのは、スマートフォンをつくらなかった、否、つくれなかったからで、その理由は後段でのべよう。
 日本の電機大手が、通話やパソコン、デジカメ、オーディオ、ビデオなどの多機能がすっぽりおさまるスマートフォンをつくらなかったのは、登山にたとえるなら、九合目まで登って、頂上をきわめなかったようなものである。
 逆に、中国は、九合目まで日本企業の肩に乗って、そこから頂上まで単独で登攀して、現在、スマートフォンの世界市場をアップルやサムソンと分け合っている。
 需要創造が経済の原動力で、新製品の開発なくして、市場拡大や経済成長が実現するわけはない。
 事実、日本の高度経済成長や所得倍増計画、一億総中流意識は、三種の神器(白黒テレビ・洗濯機・冷蔵庫)に代表される需要創造にささえられていた。
 ところが、日本経済が足踏みした1990年〜2020年までの「失われた30年」には、国民の需要を喚起するスマホのようなハード(新製品)がなに一つでてこなかった。
 このかん、GDPが停滞したのは、日本経済に新製品をつくる力がなかったのか、新製品をつくらなかったから日本経済が停滞したのか、おそらく、その両方だったろう。

 それでも、精密部品や工作機械の分野で、日本は、依然として、世界ナンバーワンで、村田製作所やTDKらの中堅企業、町工場クラスの中小企業がスマートフォンの部品などの精密機械を世界に送りだしている。
 ところが、スマートフォンというハードがなければ、5GやAIなどのソフトの開発も軌道にのらない。
 日本が、第四次産業革命に乗り遅れたのは、すべてがインターネットにつながったクラウドの形成に失敗したからだった。
 第四次産業革命の主軸をなすのは、AIや5Gの他、モノのインターネット(IoT)など日常化されたコンピュータのネットワークサービスで、これをクラウドと呼ぶのは、雲のように地上を覆っているが、正体がさっぱりつかめないからである。
 5GやAI、IoTは、スマートフォンというハードとインターネット上のソフトの結合で、両者が一体化しなければ、クラウドを形成することはできない。
 その役割を担うべきだったのは、日本の電機産業と電話ネットワークの上に君臨する東京電力とNTT(日本電信電話公社)でなければならなかった。
 ところが、東京電力もNTTも、既得権の上に成立している国家的企業で、この二社が手をむすんで、クラウド形成にうごくことがなかったのは、渋沢栄一のような先見の明をもった指導者がいなかったからだった。
 アメリカで、大企業間のハードとソフトが融合したのは、半導体やコンピュータ、ソフトやハイテクのエンジニアが集結したシリコンバレーがあったからで、デジタル革命や第四産業革命の波は、シリコンバレーから世界へおよんでいった。

 現在、第四次産業革命は、一企業、一業態、さらに、一国をこえ、国境横断的に発展、相互の連携をつよめている。
 日本にもとめられるには、欧米とのタイアップを強化して、ソフトの充実をはかる一方、国産スマホの開発と製造を急ぐことに尽きる。
 第四革命をのりきるには、国家支援のもと、採算や効率を度外視して思い切った手を打たなければ、日本は、5年以内のGDPランキング10位圏外へ放り出されることになる。
 ファーウェイやシャオミなど中国のスマートフォン大手は、総額20兆円の5G投資を背景に、フィンランドのノキア、スウェーデンのエリクソン、アメリカのクアルコムやインテルなど欧米企業と協力関係をむすんで、世界市場へのりだしている。
 NTTドコモも、NECや富士通など国内の通信機器メーカー8社とともに5Gの技術開発にとりくみ、インテルやクアルコムなどとも共同研究をおこなっている。
 だが、NTTドコモとKDDIの研究開発費は、ファーウェイの18年度の研究開発費1・7兆円にたいして、5年間で1兆円程度と桁違いに少ない。
 2018年のAIの開発予算も、アメリカの7兆5000億円、中国の1兆500億円にたいして、日本は6770億円で、政府予算にいたっては、米中の15%というお粗末さである。
 AIの監視技術でも、50か国に売り込んだ中国(ファーウェイ)がトップで、11か国のアメリカ(IBM)が後を追っているが、日本は、実績ゼロとあって、番外である。
 日本には、そもそも、AIや5G、IoTの研究・開発分野が存在しない。
 日本中の大学や研究所などから、第四次産業革命をリードする精鋭を集めて世界に恥じないシンクタンクをつくるべき時期を、日本は、迎えているのである。
posted by office YM at 09:16| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする