2020年06月16日

官僚国家ニッポンの悲劇@

 ●日本を「IT後進国」にした官僚と労組
 新型コロナウイルスの影響で売上高が半減した中小企業に最大200万円を支給する「持続化給付金」の民間委託に不信の声があがっている。
 1つは、経済産業省が大手広告代理店の電通に丸投げした事業内容や構造が不透明なことと、給付金の支給が、例によって、遅滞していることである。
 2020年4月、経済産業省は、競争入札で一般社団法人サービスデザイン推進協議会へ「持続化給付金(769億円)」の委託をきめた。
 するとサービスデザイン推進協議会は、これを電通に再委託(749億円)した。
 そして、電通は、子会社5社に再々委託して、さらにそこから人材派遣会社パソナやITアウトソーシングの大手のトランスコスモス、大日本印刷などへ業務が外注された。
 サービスデザイン推進協議会ばかりか、電通の子会社らも、それぞれ、コミッションを抜いていたわけだが、国家の給付金事業に、多くのエージェントがくちばしをつっこんで利を漁る構造はいただけない。
 しかも、競争入札で指名をうけて、20億円を中抜きしたサービスデザイン推進協議会が、電通やパソナらがつくったペーパーカンパニーだったというのでは、この丸投げが、経産省ぐるみの悪だくみだったと白状したようなものである。
 もう1つは、業務の遅れで、全国民に一律10万円が支給される「特別定額給付金」と同様、事務処理に手間取って、振込みが遅々としてすすんでいないことである。
 アメリカでも、1人当たり最大1200ドル(約13万円)の給付金支給がきまったが、トランプ大統領が関連法に署名した半月後、対象者約8000万人の銀行口座へ現金が振り込まれた。
 ドイツでは、総額約7500億ユーロ(約90兆円)の経済対策を決定したのち、従業員の解雇や経営破綻を防ぐため、簡素化したオンライン申請方法を導入して、大半の対象者が、申請から2日後に助成金を受け取ったという。

 日本で、行政の事務処理が滞る最大の原因は、デジタル化の遅れにある。
 海外メディアは、厚生労働省と全国の自治体が、PCR検査のデータの一部をファックスでやりとりしている事実を、驚きをもって報じた。
 韓国の『中央日報』は日本を「IT(情報技術)後進国」と断じたが、その根拠の一つとされたのが、ITを知らない「IT政策担当相」の竹本直一(元建設省キャリア官僚/79)とパソコンを使ったことがないサイバーセキュリティー戦略本部担当相(五輪担当相と兼務)の桜田義孝(70)の登用だった。
 世界は「IT(情報技術)」や「AI(人工頭脳)」、「5G(第5世代移動通信システム)の時代で、欧米と中国の全面対決に韓国やアジア諸国が参戦する構図になっているが、日本は、世界から一周遅れとも二周遅れともいわれている。
 素材や部品、工作機械で、世界経済をリードする日本経済が、なぜ、ITやAI、5Gの分野で、ここまで、後退してしまったのであろうか。
 そのことと、日本が、世界の最たる官僚国家であることを切り離して考えることはできない。

 2007年、国会で、登録者が不明な年金記録が5000万件にもたっすることが明らかになって、大問題となった。
 年金記録漏れの原因は、手書き原簿からコンピュータに入力する際のミスが原因で、責任は、すべて、当事者たる社会保険庁にある。
 といっても、実際にパソコンを使って作業をおこなったのは、社会保険庁の職員ではなく、アルバイトの主婦や学生だった。
 社会保険庁の職員が、国民年金のオンライン化計画という重要な業務をアルバイトにまかせっきりで、十分な管理もおこなわなかったのは、コンピュータ導入にあたって、社会保険庁と自治労がとんでもない覚書を交わしていたからだった。
 その覚書には、労働強化にならない配慮とあって、具体的に「キーボードを45分操作したら15分休憩」「キーボードの入力は1日当たり平均5000字以内」と記載されている。
 5000字は、母音と子音からなる日本語では2500字で、30分ほどの作業で終わってしまう。
 社会保険庁の職員は、それ以上の作業は労働強化にあたると反発、職場に電動式の全身マッサージ器までおいて、残りの時間をサボっていたのである。

 パソコンを労働強化とする思想は、都道府県庁や市町村を仕切る自治労から国家公務員などが組織する国公労連にまで浸透していて、世界を動かしているITやAI分野が、日本の官僚や労働界にとって、民間や資本からのびてくる悪魔の手だったのである。
消えた年金≠アと年金記録問題の主犯は、民主党の支持母体だった自治労にあったわけだが、マスコミは、悪いのは自民党政権だと叩きに叩いて、自民党を政権からひきずりおろして、その自治労が支持する民主党政権を実現させることに成功した。
 世界がITやAIの研究開発に心血をつぎこんでいるさなか、日本の官僚と労組は、拳をふりあげて、ITやAIの排斥を叫び、自民党政権においても、ITやAIがなんのことやらわからない大臣が、IT担当相になるありさまである。
 中国や韓国、台湾などでは、ITやAIの国際的専門家が大勢、国家の担当部署につき、台湾で行政のデジタル化を担当するオードリー・タン(唐鳳)は国際的に名が知られたプログラマーである。
 台湾や韓国、東南アジアで、コロナ対策がうまくいったのは、ITやAIを駆使した行政システムが機能したからだった。
 ところが、日本では「マイナンバー」のオンライン化どころか、登録すら途中でとまっている。
 役人が働こうとしない日本では、左翼組合の追い風をうけて、壮大なる事務の停滞が生じてしまうのである。
 日本の大学や研究機関のITやAIが、世界に比べて、それほど劣っているわけではない。
 ところが、行政権を一手に握る役人は、けっして、民間の組織や団体に協力をもとめない。
 縦割り行政のなかで権限をふりまわしている役人は、ITやAIなどという世界のきびしい風に身をさらすのは真っ平なのである。

posted by office YM at 20:11| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする