2020年07月01日

官僚国家ニッポンの悲劇B

 ●社会保険事務局の犯罪/静和病院冤罪事件
 伊豆半島で最大級の規模と設備を誇った静和病院(307床)が静岡県警や県医療室、社会保険事務局による強制捜査(100人規模)をうけたのは平成20年(2008年)4月23日のことである。
 数台のトラックがのりつけて、カルテなどの医療や医務、保険関係の資料を根こそぎ押収して、その後の診療や医療業務に支障をきたしたほどだった。
 容疑は、2年前の平成18年4月に改正された健康保険法の違反と同違反にもとづく詐欺罪だった。
 改正された健康保険法(「15対1入院基本料の施設基準」)は、看護師数の規定で、静和病院一般病棟(55床)では、看護師の員数がこの基準に足りていなかったというのである。
 そして、新健康保険法違反にもとづく診療報酬の不正受給が計画的だったとして、詐欺容疑が適用された。
 源泉徴収簿兼賃金台帳によると、当時、静和病院には、約82人の看護師が登録されていた。
 看護師の出勤日数は、平均22日なので、1日当たり出勤者数は60人強ということになる。
 源泉徴収簿兼賃金台帳には、健康保険料、厚生年金、所得税、住民税などの納付額や控除額が記載されている。
 給与明細のほか、勤務日数などの基礎データも記録されている。
 看護師の勤務実態を知るにあたって、源泉徴収簿兼賃金台帳以上に信憑性がある資料はない。
 源泉徴収簿兼賃金台帳をみるかぎり、静和病院において、全病棟にわたって看護師の不足はまったくみとめられない。
 ところが、吉田晃院長と水谷信子事務長に、有罪判決が判決が下された。
 罪状は、看護師が足りなかったとする健康保険法違反、および、同法違反にもとづく詐欺罪である。
 しかも、殺人罪並みの重刑で、吉田晃は懲役6年6月、水谷信子は懲役5月6月で、静和病院は、その後、廃院となって、巨大な廃墟が野ざらしになっている。
 看護師数が足りなかったかもしれないという、どこの病院でもかかえている容疑でこの仕打ちである。
 ちなみに、再審請求(榎本哲也弁護士)においては、看護師数が足りていたことが完全に証明されている。
 驚くべきことだが、本裁判では、看護師の勤務実態を示す唯一の公的資料というべき源泉徴収簿兼賃金台帳が証拠提出されていない。
 源泉徴収簿兼賃金台帳を証拠提出すれば、静和病院に健康保険法違反がなかったと一発でバレてしまうからである。
 有罪にするには、社会保険事務局から、健康保険法違反を宣告してものらうほかない。
 かかる経緯から、静岡県警の強制捜査に、社会保険事務局がくわわることになった。
 健康保険法違反があったか否かを判断できるのは、社会保険庁の地方機関である社会保険事務所だけである。
 健康保険法は、社会保険事務所の専管事項で、違反の判断から処分方法まで国から一任されているからである。
 健康保険法は、解釈や適用、手続きなどが複雑で、社会保険庁の判断に拠るしかない。
 強制捜査に社会保険事務所がくわわったのは、静和病院の健康保険法違反を既成事実とするためで、静岡社会保険事務所は、こうして、静岡県警の下請けとなった。
 なぜ、静岡県警が静和病院つぶしにまわったか、その事情や背景については、次回、詳説しよう。
 
 健康保険法のような社会法を根拠に、強制捜査をかけることはできない。
 警察が強制捜査をかけるには、詐欺罪のような刑法にもとづかなければならない。
 事実、静岡県警は、強制捜査に際して、詐欺容疑を立てている。
 詐欺罪を成立させるのは、健康保険法違反が確定していなければならない。
 健康保険法違反にもとづく診療報酬の不正受給が計画的だったことが明らかになって、はじめて、詐欺容疑が立つ。
 静岡社会保険事務所は、静岡県警に、静和病院が健康保険法に違反していることを担保するために強制捜査にくわわったのである。

 強制捜査の2か月前、静岡社会保険事務局は、静和病院の看護師数が足りている旨、静岡県警に報告している。
 静岡社会保険事務局が、平成20年2月26日、静岡県警の「捜査関係事項照会書(下田警察署長小林達視)」にたいして、回答した文書に、つぎのような数値が記載されている。

 看護要員の数:看護師35人、准看護師40人、看護補助者78人

 静和病院の看護師数が足りていると知っていた静岡社会保険事務局は、いかなる根拠、経緯から、強制捜査にくわわったのであろうか。
 ちなみに、平成20年2月26日以降、強制捜査に入った4月23日までの2か月間に、静岡社会保険事務局が静和病院に査察に入った形跡はない。
 それでは、静岡社会保険事務局は、いかなる根拠をもって、静和病院の健康保険法違反を判断したのであろうか。
 わたしは、令和2年2月10日、静和病院元院長吉田晃と同院元事務長水谷信子と連名のもと、加藤勝信厚生労働大臣へ質問状を送付した。
 内容は以下である。

 1、静岡社会保険事務局は、静和病院にたいする静岡県警の強制捜査(平成20年4月23日)にくわわったか否か
 2、静岡社会保険事務局は、捜査関係事項照会書に、静和病院の看護師数を75人と回答した平成20年2月26日以降、静岡県警の強制捜査(平成20年4月23日)までの間に、静和病院へ立ち入り検査をおこなったか否か
 3、強制捜査の段階(平成20年4月23日)で、静和病院(一般病棟55床)に健康保険法違反があると判断した根拠はなにか

 
 イエスかノーか、あるいは、箇条書きですむ回答だが、返事はまだない。
 次回は、静和病院がらみで、政と官が癒着して、日本の政治を歪めていったか、その経緯をもういちどながめてみよう。
posted by office YM at 02:35| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする