2023年03月09日

「自由主義」と「民主主義」の相克と調和8

 ●東洋のペルシャ湾となるか東シナ海の資源
 日本の陸地面積は世界の62番目だが、領海と排他的経済水域(EEZ)の合計面積は国土の約12倍、世界で6番目に大きい。
 日本の地下資源は、この広大な海域にあるが、多くは1000級の深い海の底である。
 1000メートルの深海は、ピンポン玉が破裂する水圧(100気圧)なので、資源採掘には想像を絶するほどの困難さがともなう。
 これまで、日本が資源小国と呼ばれてきたのは、露天掘りの鉱脈がすくなく海底や地下深くにある資源を発掘する技術が完成していなかったからだった。
 だが、新技術の開発が見込まれる2030年以降、日本は世界の十指に入る資源大国になる可能性がある。
 日本のEEZにはペルシャ湾並みの地下資源が眠っているが、採掘できないのは、工法が未完成という技術的な問題があって、採掘しても経済的に採算がとれないという障壁あるからだが、この問題はいずれ解決される。
 その好例がアメリカである。シェールガス埋蔵量がロシアに次いで世界2位だったが、地下2000メートルの採掘が困難なので、長いあいだ放置されてきた。たとえ、技術的に可能でも、採掘コストが採掘量の価格をこえるために経済的価値がなかったのである。
 ところが10年ほど前、高圧破砕法という技術が開発されて、採掘コストと産出利益が逆転、アメリカはシェールガスの大生産国になった。
 その逆のケースがベネゼラである。世界一の石油埋蔵量をもちながら国家が経済破綻したのである。オリノコタールと呼ばれる粘着状の原油を精製する技術をもっていなかったからで、技術提供をうけるべき欧米と断絶した結果、技術があれば国家的資産となったはずのタールの海に沈没してしまったのである。

 ●日本のEEZ海底資源を狙う韓国と日本
 地下資源の宝庫で、東洋のペルシャ湾といわれる東シナ海の大部分は、日本の排他的経済水域で、ここに中国が領有権を主張する尖閣諸島や韓国が宣言する「第7鉱区」がある。
 中国が領有を主張する尖閣諸島は石垣島の一部で、韓国のいう「第7鉱区」は、九州の南西沖、沖縄トラフの北側で日本の排他的経済水域というより日本近海である。
 韓国はかつて李承晩ラインをひいて、島根県の一部だった竹島をその内側にとりこんで略奪した。このとき、竹島の周辺で漁をしていた日本の漁船328隻を拿捕、漁師3929人を拘束して、44人死傷(抑留死亡8人)させている。
 自衛隊ができる前の出来事で、当時、戦勝国を名乗っていた韓国や北朝鮮は日本を敗戦国として差別的な外交を展開、日本の政治家や外務省も両国にたいして土下座外交に終始した。
 竹島強奪も「第7鉱区」の設定も、その産物で、日本は「戦勝国が敗戦国に軍事的制裁を課すことができる」という国連の「敵国条項」に縛られて韓国の横暴にたいして経済援助停止を告げることくらいのことしかできなかった。
「第7鉱区」占有を宣言した朴正煕(パク・チョンヒ)大統領にたいして当時の佐藤栄作首相は、経済援助停止で対抗、ようやく、同鉱区を共同開発とする「日韓大陸棚協定(1978年)」にこぎつけた。
 同協定が事実上の開発凍結となったのは、当時、海底資源を発掘する技術がなかったからで、その技術が完成するのは、それから50年後、来る2028年前後なのである。
 その時点で「日韓大陸棚協定」が失効する。そもそも、大陸棚という概念(自然延長説)じたいが過去のもので、1985年の国際司法裁判の判決の判断(リビア・マルタ大陸棚事件)によって、海洋支配権の基準が大陸棚から等距離中間線に変わっている。
 じじつ、2018年、オーストラリアと東ティモールの海底資源共同開発においても、国連が調整して、東ティモール側に開発権が移っている。
 
 ●海底資源採掘をリードする日本の潜水艦技術
 茨城県五浦(いづら)沖の海底に石油や天然ガスが埋蔵されている可能性が高いという調査結果が注目されているが、採掘に成功すれば数百年分の消費をまかなえるという。
 日本列島周辺のメタンハイドレート埋蔵量は世界有数で、日本は、渥美半島の80キロメートル沖、水深約1000メートルのメタンハイドレート層から天然ガスを取り出すことにも成功している。
 メタンハイドレートは、低温高圧下で天然ガスの主成分であるメタンと水が結合したシャーベット状の燃える氷状の物質で、燃焼時に排出する炭酸ガスは石油の半分、エネルギー量はシェールガスの2倍以上にという理想的な燃料である。
 メタンハイドレートの試掘に成功したのは、地球深部探査船「ちきゅう」と命名された掘削潜水艇だが、これは望ましいきざしである。
 というのも、この深海工作艇が石油プラットフォーム建設の主役になるはずだからで、水深1000メートル(100気圧)のなかで1000メートルの掘削構造を建設するのは、ロケットを打ち上げて宇宙船を軌道にのせるよりもむずかしいといわれる。
 日本は、この超高度な技術をクリアしなければ資源来国にはなれないが、日本の潜水艦技術は、世界一で、海上自衛隊の潜水艦は、潜航可能深度(400メートル)の100メートル下を潜航でき、深度1000メートルでも救助活動が可能な深海救難艇をもっている。
 それでも、深海での土木作業には、なお技術改良が必要だが、数年以内には、1000メートル級の深海潜水艇に海底掘削ロボットを装備する計画もすすんでいる。

 ●幻想だった? 水素やメタンハイドレートのエネルギー化
 石化資源を露天掘りできる時代が終わって、いまや、天然資源は、地下深くにもとめなければならない時代になった。この流れにともなって必要となったのが技術の先鋭化で、その好例が、高圧破砕という新工法で、シェールオイルの大量採掘に成功したアメリカだった。
 日本には、シェールオイルはないが、メタンハイドレートの埋蔵量が多い。
 だが、個体であるメタンハイドレートからメタンをとりだす新技術はいまだ確立されていない。
 理論的に採掘が可能でも、採算性や経済性には問題が多く、試験採掘では杭井内に砂が詰まるトラブルによってなんども中止をやむなくされている。
 現在、メタンハイドレードの堆積層にポンプでCO2を封入、水とメタンガスに分離させたのちメタンだけをとりだす減圧法がとられているが、実用化にはまだ時間がかかる。
 日本周辺のメタンハイドレードや茨城県五浦沖の海底油田も、展望はゆたかでも、採掘がはじまったわけではない。次世代エネルギーといわれる水素エネルギーも、日本は、高い技術をもっているが、クリーンエネルギーやらカーボンニュートラルやらと、手放しでもちあげてよいものではない。
 水素をつくるには、化石燃料を燃焼させる方法と、水を電気分解する二つの方法があるが、その二つとも、天然のエネルギーを必要とする。
「エネルギー保存の法則」からも、太陽エネルギー以外、エネルギーからもっと大きいエネルギーをつくりだすことは不可能で、水素エネルギーは幻想に終わる可能性もある。

 ●原発再稼働のコストが火力発電の十分の一
 もっとも有望で、もっとも現実的なのは、唯一の国産エネルギー、原子力である。
 2000年代の日本の電源構成は、原子力が30%台だったが、2011年の東日本大震災以降、電源シェアは数%にとどまっている。
 原子力の発電コストは、原発が完成したあとでは、火力発電の約十分の一ですむ。政府試算では一キロワットあたりの燃料費が液化天然ガスの16円なのにたいして、原子力はわずか1・7円である。
 その発電コストなら、水素エネルギーの製造エネルギーとして十分に使える。
 水素エネルギーは、水素が空気中の酸素と反応してうまれる熱エネルギーで単位当たりの熱量もガソリンの3倍と高く、化石燃料と違って資源量に限りがなく,反応後にはまた水になるので、環境への負荷もない。
 水は自然界に大量に存在し,石油に代わる人類究極のエネルギーとも言われているが、水素はそのままの形では自然界に存在しないため、水や石油などを分解して取り出さなければならない。
 現在、水素を大量かつ安価に製造する技術がないため、エネルギー転換率がわるく、水素をつくるための燃料費や電気代と、水素の価格のあいだに差益のメリットがうまれないのである。
 2022年、川崎重工業の液化水素運搬船「すいそふろんてぃあ」がオーストラリアから水素(褐炭から製造)をはこんできた。
 原発を再稼働させ、安い電気代で、大量の水素をつくることができるようになれば、日本のエネルギー事情は大きく変わってくる。
 技術の革新と向上によって、日本は、資源立国になれるのである。
posted by office YM at 22:56| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする