●なぜ「日本学術会議」は処理水問題に沈黙するのか
旧民主党から自民党にくら替えした細野豪志がネットでこうつぶやいている。
「日本学術会議が福島原発処理水について科学的見解を出せば国民の見る目も変わってくると思うが…」
日本学術会議は「東日本大震災復興支援委員会」の時代から原発の処理水を汚染水と呼びつづけてきた。
日本政府に設置されている「日本学術会議」が汚染水≠ニ呼んでいる原発処理水を中国や韓国が汚染水と呼んで、日本がこれに文句をつけてどこに説得性があるだろう。
東南アジア諸国連合(ASEAN)プラス3(日中韓)外相会議で中国外交のトップといわれる王毅共産党政治局員は、福島の原発処理水を「汚染水」と表現して挑発、林芳正外相は、科学的根拠にもとづいて反論したが、王毅からはせせら笑いが返ってきただけだった。
処理水は科学的根拠に基づく安全な方法で放出されている。国際原子力機関(IAEA)も報告書で「国際的な安全基準に合致する」と結論づけている。
ところが中国は、科学的根拠もあげずに処理水に「汚染水」とのレッテルを貼って「海洋環境の安全と人類の生命、健康にかかわる重大問題」と批判している。中国のこの政治的プロパガンダに、日本の漁業者らは風評被害に悩まされ、大きな被害をこうむっている。
にもかかわらず、福島の処理水の海洋放出について、日本学術会議が提言や見解を出していないのはどういうわけか。
この深層構造をさぐるには、話はすこし飛躍するが、戦後のGHQ支配体制をふり返る必要がある。
●GHQが産みの親だった「日本弁護士連合会」と「日本学術会議」
終戦翌年の昭和21年、総選挙で自由党が勝利して、首相になる予定だった党首の鳩山一郎が、GHQの公職追放令によって、突如、政界から追放されるという衝撃的な事件がおきた。
鳩山に代わって、首相になったのが親米派の吉田茂で、戦後日本は、防衛はアメリカまかせにして、経済大国をめざすという「吉田ドクトリン」のもとですすめられてゆくことになる。
公職追放令を発した3年後の1949年、GHQは、公職追放や神道指令で壊滅させた日本精神を根絶やしにするべく「日本弁護士連合会」と「日本学術会議」の2団体を設立させた。
GHQの目的は、日本の軍事力を徹底的に排除して、2度とアメリカら自由主義陣営の国に歯向かう気概のない国にすることで、それには、マスコミなどへの検閲機関を強化するほか、世論形成に大きな力をもつ学者や弁護士などの知的機関をGHQの影響下におくことだった。
それが4000人の日本人が勤務していたGHQの検閲機関「CCD」(民間検閲支隊)とハリー・ケリー(GHQ科学技術課部長)がつくった「科学渉外連絡会」である。
戦後日本の思想環境は、すべてGHQによってつくりあげられたのである。
日本学術会議は、物理学者だったケリー博士の功績をたたえるが、ケリーは軍人でもあって、軍務に従って、学士院、学術研究会議(日本学術会議)、日本学術振興会の3団体をGHQの左翼路線に従わせただけである。
事実、日本学術会議法は、(科学技術行政協議会要綱)は、日本共産党系列の民主主義科学者協会と人文科学有志、科学渉外連絡会三者の折衷案で、日本国家のためには働かないという売国的テーゼはこのときすでにできあがっていたのである。
1949年の中華人民共和国成立以前、GHQがとっていたのは、占領政策というよりも事実上の共産化政策で、その最大の成果が憲法だった。
占領基本法だったGHQ憲法と教育勅語に代わる教育基本法、新聞マスコミの売国思想、そして「日本弁護士連合会」と「日本学術会議」の反日・反国家的な綱領が戦後日本の精神となったが、これらはすべて、GHQの日本弱体化戦略≠ゥらでてきたものだったのである。
●反日活動家をリベラルともちあげる日本のメディア
ところが、GHQによる日本赤化計画は、突如、終焉を迎える。
中国革命や朝鮮戦争の勃発で、日本の民主化・非軍事化をすすめていたアメリカが左翼路線(民主化)から防共路線(保守化)へと逆コース≠ヨ転じるのである。
日本の民主化・非軍事化を進めていたGHQも再軍備や共産主義パージへと舵を切ることになったが、この方針転換によって、占領政策が覆い隠していた民主主義と共産主義の対立があらかさまになった。
中華人民共和国成立(1949年)と朝鮮戦争(1950年)を目の当たりにしたアメリカでマッカーシー旋風(「赤狩り」)が吹き荒れたのは当然のなりゆきで、アメリカは、共和党の反共運動によって、民主主義と共産主義が別物であることを思い知らされたのである。
ところが、日本では、現在にいたるまで、民主主義と共産主義が混同されたままで、日本共産党らの野党は、民主主義によるブルジョワ革命と共産主義による暴力革命の二段階革命論≠奉っている。
ブルジョワ革命(市民革命)派がリベラルで、暴力革命(人民独裁)派が共産主義である。
福島原発のALPS処理水の海洋放出について、日本国内でも「処理水」を「汚染水」と表現して、放出に反対する日本共産党の小池晃書記局長のような人々がいる。一部メディアがかれらを『リベラル』と表現するが、まちがえてはならないのは、かれらは、風評被害をまきちらす扇動家であって、リベラルではない。さらに「汚染水」という表現を使う連中は、リベラルでも左派でもなく、悪質な反日主義者でしかない。
反日活動家をリベラルともちあげる一部メディアは、無知のきわみで、アメリカの民主党と共和党をたとえにあげるなら、民主党がリベラルなら共和党はリパブリカンで、ともに、社会自由主義を志向する思想である。リベラルにもリパブリカンにも祖国を貶めて他国の利益に与しようなどという汚い根性はみじんもない。
●4兆円の研究開発費を牛耳る日本学術会議
日本のマスコミや一部の高級官僚、日本学術会議や日本弁護士連合会が反日的なのは、GHQの「日本弱体化政策」の産物だったからで、かれらの脳ミソのなかに祖国や国体、同胞という観念はほとんどゼロである。
日本弁護士連合会は、オウム真理教が、史上最悪の犯罪集団と判明したのちにも、破防法適用棄却決定にたいして「破防法適用が回避されたことを心から歓迎する/1997年/日本弁護士連合会会長/鬼追明夫」という声明をだしている。
犯罪者や犯罪の弁護を職業とする弁護士連合会は反社(反社会的勢力)≠セったことがこのことからも明らかだが、日本学術会議と同様、社会の木鐸のような顔をしてふんぞりかえっている。
ちなみに、日本弁護士会は、福島原発の処理水を汚染水≠ニ呼称しており岸田首相への意見書では処理水といいかえているが、海洋放出にはつよく反対している。
80万人といわれる日本の研究者(大学教員55万人)のうち4兆円の研究予算配分に影響力(「マスタープラン」の策定など)をもっているのは、ほんの一握りで、それが会員210人で任期6年の日本学術会議である。
10億円の維持費がついているが、そんなものは屁のようなもので、狙っているのは予算4兆円の管理で、左翼が多い文部科学省は、ほとんど、日本学術会議の言いなりである。
元政府高官はこう嘆く。「日本学術会議は安全保障分野への予算配分についてきわめて慎重で、それが、防衛装備の技術開発で中国に後れを取っている最大の要因になっている」
●祖国の防衛に反対して、中韓の軍産複合体に貢献
菅義偉前首相は、2020年、6人の反日的学者「日本学術会議」の任命を拒否して、日本中のマスコミが狂ったように大騒ぎしたが、その数年前、日本学術会議は、中韓に接近して「合意書」や「協力覚書」に署名している。
2014年、日本学術会議は、韓国行政研究院と科学協力に関する合意書に署名したのにつづいて、2015年、中国科学技術協会と協力関係をつよめることを目的とした覚書を交わしている。
軍産複合体は、銃器や航空機、戦車、艦船にかぎった話ではなく、それらに関連する科学技術分野や建築、家電機器、自動車、医薬品・食料品など多岐にわたる。
アメリカのみならず中韓も軍産複合体で、したがって、技術協力をおこなえばそれが軍備・防衛産業につながることは目に見えている。
日本学術会議は、昭和25年と42年に「戦争を目的とする科学研究は絶対におこなわない」とする声明をまとめ、平成29年には、声明継承を宣言している。
日本学術会議のこの姿勢が日本の基礎研究にまでおよんで、若手の研究者の起訴研究が中止させられたという日本の学界に山ほどある。将来、軍事産業に転用されるおそれがあるという理由からで、それが、防衛力にかんする研究や日本の科学研究の大きな障害になっている。
その日本学術会議が中韓の軍産複合体に協力するということは、日本列島にむけられる極超音速ミサイルに日本の科学技術が利用されかねないということでもあって、任命拒否や民営化どころか、解散命令をだしても当然である。
福島原発処理水の問題から、戦後、アメリカが植えこんでいった日本弱体化政策の害毒が、各分野から、一気にあふれだしてきた観があるのである。