2023年12月17日

 山本峯章チャンネル/苦言直言3

 ●政治改革と自民党派閥の政治資金パーティ問題
 政治資金パーティの問題と政治資金の問題は分けて考えなくてはならない。
 パーティ券問題は、販売ノルマの超過分を個人にキックバックするシステムで、申告さえしていれば大きな問題にはならなかった。
 清和会(旧安倍派)志公会(麻生派)宏池会(岸田派)志帥会(二階派)平成研究会(茂木派)の自民党の5派閥は、ひとしく、この問題をかかえている。
 1994年に成立した政治改革では、小選挙区比例代表並立制/政治資金規正法改正案/政党助成法案が大きな柱で、このなかに、自民党派閥のパーティ問題はふくまれていない。
 国民1人当たり250円、約320億円を政党の活動資金として、各政党に頭数でふりわけるのが政党助成金で、一方、派閥や個人の勉強会や食事会などのパーティ収入は、個人や派閥が必要経費を集めるための予備費のようなもので、昨年度は、820億円程度だった。
 これが問題になったのは、派閥が集めた資金をおのおの派閥に所属する代議士に割り当てるシステムが違法ではないかというものだが、違法でもなんでもない。
 力にある代議士は、割り当てられた数以上のパーティ券を売る。予定以上に売った場合、一種の割り戻し、キックバックがおこなわれる。申告をしておけばなんの問題もない。政治資金規正法によってきめられているやり方で税金がかかるわけじゃない。
 無申告だったとしても、よくあることで、申告していなかった、申し訳ないと政治家が謝罪するシーンをこれまで何度みてきたことか。
 今回、大問題になったのは、派閥がらみだったからで、個人が集めるカネはせいぜい800〜1000万円だが、派閥単位では億の単位になる。
 だが、パーティ券の割り戻しは、それ自体、許容範囲内にあることを忘れてはならない。
 森友学園や加計学園、桜を見る会で、安倍首相を取り逃がした検察が、その安倍派の根絶を狙ったのが、今回の自民党派閥の政治資金パーティ問題だったといわれるが、これで逮捕者がでなかったら、今回の騒ぎは、検察のうさばらしだったことになる。
 無申告を横領事件であるかにようにミスリードしてきたマスコミは、情けない話だが、検察へ媚びているようにしか見えない。
 
 わたしにいわせると、政党助成金がらみで、政治家が、国民を騙しつづけているもっと大きな問題がある。
 政治家は、財界からカネをとらないと国民に約束したが、その約束がまもられていない。
 政治改革は、小沢が黒幕的な存在だった94年の細川内閣できめられたことで、自民党総裁だった河野洋平も、いっしょになって、小選挙区比例代表並立制と政治資金規正法改正、政党助成法案の改革をすすめた。
 当時、リクルート事件などのスキャンダルや財界との癒着が頻発していた。
 5当3落といって、5億円使えば当選だが3億円なら落選という金権政治も横行していて、国民から批判を浴びてもいた。
 95年の改正政治資金規正法の補則事項では、今後、企業や団体から献金をうけない、五年以内にやめますと政府は国民に約束している。
 国民1人当たり250円程度の負担をしてもらい、合計320億円で政党の運営や活動をまかなう。
 経費や維持費が必要なので、政治家個人や派閥のパーティはみとめる。
 だが、癒着の温床となる企業や団体の献金はみとめないとしたのである。
 ところが、どの政党も、この約束を反故にして、すずしい顔をしている。
 若手の国会議員6人との食事会があったので、この話をした。
 国民との約束はまもらなければならない。自民党総裁だった河野洋平も首相だった細川護熙も、これをまもらなければまずいとマスコミ発言をしている。
 だが、いっしょに食事をした国会議員は、だれもこの法律を知らなかった。
 政治家になって5年10年の国会議員にとって、30年前の法律は古い話なのかもしれないが、現在の政治にまで深い影響をあたえている悪名高き4政治改正である。
 知らなかったですむ話ではないだろう。
 そういう状況のなかで、自民党派閥の政治資金パーティの問題がでてきた。
 ところで、わたしは、選挙改革とりわけ小選挙区制には反対である。
 現在の小選挙区制のなかでは、政治家がじぶんの意見をいえない、じぶんの主張ができない。
 自民党の政党助成金は、170億円ほどあるが、資金を握った党本部がこれを支部にふりわける。公認権も党本部が握っている。
 公認権から資金まで党本部が握って、党員に縛りをかける。これでは党員は自由にモノがいえなくなる。
 昔は、派閥があって、派閥の親分がカネを集めて、公認権から大臣や次官の役職まで、親分が子分の面倒をみた。
 各派閥によって、多少、政策がちがう。わたしも、小沢一郎らと田中角栄の新政策総合研究会というところに所属していたので、朝八時半、ホテルオータニで勉強会にくわわった。自民党には派閥ごとの勉強会があって、当時、一人ひとりが自由にじぶんの意見がいえた。
 現在の党本部体制は、当時にくらべて、事情が一変してしまった。
 党本部とちがった意見や主張をもつと、公認をうけられなくなってしまうという一種の恐怖政治がまかりとおっているのである。
 いまの自民党には、党の意向に反して、じぶんの意見をおしとおそうとする党員はいない。
 中選挙区制のころは、派閥間の議論もあったが、いまは党議拘束がかかって党内の自由な議論が封殺される。
 今回のLGBT法案でも、党議拘束がかかって、保守派も牙を抜かれた。
 公認権や資金を党本部が握って、政治信条まで一本化してしまおうとするのが現在の自民党の体質である。
 だから、わたしは、小選挙区体制はダメだというのである。

 次回予告
 山本峯章チャンネル/苦言直言4
 ●日本の保守を骨抜きにした吉田政治と池田宏池会

posted by office YM at 21:06| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする