国際連盟と国際連合
国際連盟は、第一次世界大戦後の1919年、アメリカのウィルソン大統領の提案によって、世界平和の確保と国際協力の促進を目的として結成された。
ところが、当のアメリカは、国際連盟に加盟できなかった。
孤立主義をとる議会によって加盟案が否決されたからだった。
国際連盟は 国際秩序の形成にいくらか貢献したが、ロシアが未加盟で、ドイツ、日本、イタリア、スペインが脱退して、戦争抑止力を失った。
国際連盟の失敗の原因は、提案者のウィルソンがノーベル賞をもらったにもかかわらずアメリカが参加しなかったことにつきる。
くわえて、国際連盟は、議会の決定権が満場一致の原則に縛られていた。
一国でも反対すれば議案は流れてしまう。これではなにもきまらない。
理想を高く掲げたものの実際にはなにもできなかった。
そして、ついに、第二次世界大戦がはじまってしまったのである。
1944年の第二次世界大戦末期に日本と敵対する25か国のあいだで国際連合結成のうごきがでてくると、1945年8月の終戦2か月後の10月には51か国加盟による国際連合が結成された。
国際連盟の欠陥を補うべく、国際連合は 非常任常任理事国10か国、常任理事国5か国の集団指導体制となったが、大きな欠陥もあった。
常任理事国の五か国が新たに拒否権をもったのである。
米、英、仏、露、中の戦勝5か国が拒否権を発動すればどんな法案が流れてしまう。
今回、イスラエルがアメリカに抗議したのはこの拒否権に関してであった。
「ラマダン(絶食)期間中の即時停戦」という安保理決議にアメリカが拒否権を行使しなかったというのである。
イスラエルは戦争をつづけたい。ところが同盟国のアメリカは、停戦決議に拒否権を発動することなく、棄権に回ってしまったので即時停戦がきまった。
識者のなかには、パレスチナ イスラエル戦争は、ラマダン停戦を契機に終結にむかうのではないかという意見もある。
国連にはそんな影響力も強制力もない。国連は 本来であれば「国際連合軍」をつくって紛争に介入すべきだった。
ところが、国連結成以来、国際連合軍が結成されたことはいちどもない。
アメリカ、ロシア、中国の利害が対立する情勢のなかで、つねに、拒否権が発動されるからである。
国連改革が叫ばれているが大きな効果はあがっていない。
加盟国も 当時 日本に宣戦布告した25か国、結成時の51か国から現在は193か国になっている。
常任理事国を10国にふやすべきなど多くの改革委案がでてきている。
拒否権についても批判があるが、拒否権は、戦勝国の既得権なので、5常任理事国は手放そうとしない。
国際連盟はわずか26年しかもたなかった。
国連はすでに70年近くもっている。国連が長持ちしているのは、拒否権をもっているせいといえる。
拒否権を行使すれば案件はつぶれる。
したがって、常任理事国は、国連を脱退する必要はない。
脱退せずに居残って 拒否権を発動したほうが自国の利害にむすびつく。
その政治的効果によって、国連は長持ちしているのである。
日本の政治家でいちばんの国連中心主義者は小沢一郎である。
小沢は 湾岸戦争当時 自民党幹事長として1兆数千億円のも戦費を支出した。
だが、日本は戦争祝賀会に招待されなかった。
アメリカは日本も兵を出せといってきた。
だが、日本は、自衛隊をだすわけにはゆかない。
小沢はそのかわりに戦費に相当する1兆5千億円をさしだした。
湾岸戦争はアメリカを中心とした国連有志軍によってあっさり片がついた。
戦後の国連連合軍の祝勝会に日本が招待されなかった。一方、カネは出さなかったが数百人の兵を送った国はパーティに招かれて感謝状を贈られた。
1兆5千億円をだした日本は無視されて兵を出した国が感謝される。
それが国際常識で、カネさえだせばよいという話ではなかったのである。
小沢さんはかつてこういったことがある。
敵が攻めてきたらまず自衛隊がたたかう。
そのあとから国連軍が援けにきてくれると。
だが、国連軍はいちども結成されたことがない。
じぶんの国はじぶんたちでまもるという原則を忘れては国防にならない。
日米安保条約があるのでアメリカは日本を援けてくれるでしょう。
その前に、日本はじぶんたちの力でじぶんたちをまもる気概を持たなければ一人前の国家にはなれない。
国連も今回の「ラマダン期間中の即時停戦」くらいのことはできるでしょう。
国連は、食糧問題から保健機構、貿易問題まで多くの問題を抱えている。
だが、基本は安全保障理事会にあって、紛争をやめさせるため 国連軍をつくって介入するのが国連の理想である。
それがいかにむずかしいかいまさらいうまでもないが。
下記のURLをクリックすると本ブログのYOU=TUBE版(山本峯章チャンネル20)へ移動します
https://www.youtube.com/watch?v=gJM5baVfAGo