日本経済を破壊したアメリカの謀略と同盟国にまでケンカを売るトランプの一国主義
トランプとゼレンスキーの会談を見て アメリカのじぶん勝手な大国主義を見せつけられた。
それが如実にあらわれたのがアメリカがふっかけた高関税の問題である。
関税は 保護主義政策の武器で 高関税で中国に圧力をかけようというわけであろうが ワリを食ったのがカナダやメキシコである。
70年〜80年の日本経済は順調だった。世界一の成長率でアメリカ経済に追いつく勢いだった。これに危機感をもったアメリカは繊維や半導体 飛行機などの産業分野で日本の難癖をつけてきた。
その関門をのりこえても アメリカの貿易赤字 財政赤字は解消されなかったばかりか 双子の赤字がふくれあがるばかりだった。
ドルは基軸通貨なのでほうっておけない。
そこで 先進5か国が集まって外国レートを安定させて ドル高を是正しようということになった。
それが1985年の「プラザ合意」だった。
当時 日本の円が235円という円安だった。これを円高に誘導して 日本の貿易黒字をおさえこもうという為替戦略で 5か国が集まってそういうとりきめをした。
その後 急激に円安がすすんだ。235円前後だったものが150円台にまでなって日本が窮地に追いこまれた。貿易が経済の中心だった円安で輸出ができなくなって 日本経済はお手上げ状態となった。
そこで企業の海外移転がはじまって 日本国内は産業の空洞化がすすんだ。
日本経済の「成長なき30年」はその後のバブル景気とバブル崩壊からはじまることになる。順調にのびていた日本経済は こうしてアメリカの為替戦略によってつぶされたのである。
一方 アメリカは製造部門を切り捨てて つくらざる経済〜金融経済にむかうのだが アメリカはすでに次の手を打っていた。
中国への接近である。72年 ニクソンとキッシンジャーが訪中して 中国の改革解放を煽る。自由主義や市場経済 工業化をすすめよ。アメリカは応援するというのである。当時 中国はWTO(世界貿易機関)に加盟する条件をそなえていなかったが アメリカが後押しして中国をWTOに加盟させた。
ニクソン訪中の72年 中国は 文化大革命のさなかだったが 1976年に文化大革命が終わるとケ小平が登場してきて 本格的な改革開放がはじまる。
アメリカの狙いは 中国をアメリカおよび世界の生産工場にして じぶんたちは 国際金融資本で世界を牛耳ろうというハラだった。
製品は中国につくらせて 安い製品をどんどん輸入すればよいというアメリカの政策は 一応の成功をおさめるが 事態は アメリカの思惑どおりにはすすまなかった。
中国では ケ小平が「先富論(先に裕福層を富ませ後から落伍した者たちを助ける)」にもとづいて改革開放をすすめた。だが、天安門事件の後 中国経済はアメリカが期待していた自由貿易 自由主義 民主主義の経済ではなく 統制経済に入ってゆく。
習近平の「共同富裕論(格差なく人民全員に富がゆきわたる)」である。
政策的には「一帯一路」という経済圏構想だが 実体は共産主義である。
改革開放後の中国は アメリカがもとめていたものとはちがう体制になってしまったが これは アメリカの国際金融支配と対立するものとなったばかりか 経済と軍事の両面で アメリカを抜きかねない勢いになった。
中国がアメリカ経済戦争の敵となったのである。
日本経済は かつてアメリカ経済を抜こうとして 円高という為替でイジメられた。平成6年 東京新聞の「こちら特報部」というコラムで「このままいくと円は80円にまで下がる」とわたしはコメントした。そのとき「そんなことになったら日本経済はめちゃくちゃになってしまう」という異論が寄せられた。
だがその5か月後 円はとうとう79円にまで下がった。
そして 日本経済は 生産拠点が海外に移ってがらんどうの惨状となった。
日本経済はアメリカの為替戦略でつぶされたが こんどのターゲットは中国で こんどは高関税でつぶそうというのである。
経済戦争はアメリカの十八番で 中国だけではなくカナダやメキシコも餌食になってしまった。高関税をかければアメリカの物価も上がってゆく。高関税にはメリットデメリットの両方があるのである。
そこでアメリカは投資をもとめる。アメリカの人口は世界第3位で成熟したマーケットをもっている。アメリカで商売したければアメリカに投資しなさい アメリカで工場をつくってアメリカで生産しなさいというのである。
かつてアメリカは 生産をやめて 金融経済に走った。そして日本を利用して 中国を利用して 世界金融資本を形成した。
そのアメリカがふたたび生産大国にもどろうとしている。
とくに経済安全保障法にかかわる自動車やIT 半導体などの生産をアメリカにもってこようとやっきなっている。日本や韓国 中国や台湾から生産拠点をアメリカに移せといっているのである。
そのための高関税で それがイヤならアメリカに投資しなさいという論法である。
石破がトランプに約束した対米20兆円に追加投資がそれである。
バカなことをいうものじゃない。
日本はすでに130兆円の対米投資残がある。
日本はアメリカの経済属国ではないのである。
アメリカが生産基地になればアメリカに失業がなくなる。
アメリカ・ファーストのトランプには都合のよい政策であろうが 経済戦争が大きな戦争の火種になることはすでに歴史の教えるところである。
トランプに任期4年間をガマンすればなんとかなるのではないかと考えるのは短絡で トランプがつくりあげた保護貿易を トランプが大統領をやめて廃止できるかといえばそうはいかない。
保護貿易をやめれば それまで保護貿易で育ってきたアメリカ企業は大きなダメージをうける。トランプが辞めて 高関税が廃止されると アメリカ企業は全滅する。したがって トランプがやめても高関税体制はつづくことになるのである。
いま日本にもとめられるのは アメリカ依存の体制から脱却して 独立自尊の道を歩むことであることはいうまでもない。
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