2008年03月28日

五月にロシアが「北方四島」返還を示唆か?

 ロシアでは、五月から、メドベージェフ大統領(現第1副首相)とプーチン首相(現大統領)の二頭体制となる。プーチンの事実上の院政となり、大きな変化はないという見方もあるが、わたしは、そう思わない。
 メドベージェフとプーチンの二頭体制は、クレムリン(大統領府)とホワイトハウス(ロシア政府ビル=首相の執務場所)の合体で、権力の強化にほかならない。プーチンは、KGBの盟友メドベージェフをクレムリンへ送りこみ、みずからは、ホワイトハウスを制して、ロシアに、旧ソ連共産党のような絶対権力を打ちたてようというのである。
 メドベージェフは、コソボ問題や米国の東欧へのミサイル防衛拡大構想などについて、強硬姿勢を表明したが、これは、北大西洋条約機構(NATO)の東方拡大戦略に危機感を抱くプーチン大統領と同じスタンスである。
 1999年、ポーランド、チェコ、ハンガリーの3か国が、NATOに正式加盟したのにつづいて、2004年には、バルト3国、スロバキア、スロベニア、ブルガリア、ルーマニアの7か国が正式加盟して、26か国に拡大したNATO加盟国が、ロシアと国境を接することとなった。
 2006年、NATO首脳会合において、アルバニア、クロアチア、マケドニアの加盟が討議され、2007年には、ブッシュ米大統領が、これにくわえて、グルジアとウクライナのNATO加盟を支持する法案に署名している。
 ウクライナのNATO加盟が実現すれば「NATOの東方拡大阻止 」が完全に失敗したことになり、ロシアにとって、大きなダメージとなる。
 NATOは、軍事的意味合いより、欧米文化圏の形成やブロック化、対ロシアの線引きという要素が大きく、NATOの東方拡大は、ロシアが、欧州へでていく進路を妨げられたことを意味するからだ。
 南方面においては、チェチェン紛争が解決にいたらず、紛争は、周辺共和国に拡大しつつある。
 東方面においても、中国との関係に、それほどの展望はない。むしろ、国益とナショナリズムの摩擦がひきおこされる可能性が潜在しており、中国自体、将来にわたって、磐石な国家でありつづける保証もない。
 封じこめられたロシアにとって、よきパートナーとなりうるのは、じつは、極東の日本だけなのである。
 現在、ロシア経済が順調なのは、原油の値上げによるものだが、ソ連崩壊直後のロシアの経済計画では、資源の輸出は、将来、国家の衰退をまねくとして、戒められていた。資源の輸出は、反動として、製造技術や製造能力の低下をともない、長期的にみれば、国家経済にとって、かえって、マイナスになるものである。
 ロシアも、そのことは、十分、承知しており、産業構造を日本のレベルに高めつつ、地下資源を効率的にもちいたいハラである。
 北方領土を返還して、日本と平和条約をむすべば、それが、現実のものとなる。
 プーチンがメドベージェフをクレムリンへ送りこんだのは、今後、大胆な外交政策をとるにあたって、ドロをかぶる汚れ役を必要としたからではないか。
 日本とロシアは、多くの点で、非対称の関係にある。
 ロシアは、地下資源がゆたかな内陸国で、生産技術や市場経済の熟練度が低い。
 日本は、地下資源が乏しい海洋国家で、技術や製造、自由主義経済が円熟している。
 日本とロシアは、多くの面で、補完関係にあり、両国が交流すれば、相互の経済メリットが増幅されるが、国際戦略的にも、意味が小さくない。
 ロシアが極東へ活路をみいだすと同時に、日本も、ロシアを抱きこんで、南アジアから太平洋、インド洋、アラビア海へ「繁栄の弧」を描きだせる。
 アメリカが民主党政権になれば、日本の頭越しに、中国へ接近することは目に見えている。
 アジアの覇者・中国とむすべば、アメリカは、安全保障や経済面で、多くのメリットがあるからだが、そうなれば、日本は、対米従属と華夷秩序の二重拘束となる。その拘束から抜けだすにも、米・中・ロ・欧と等距離外交をとって、疎遠だった南アジアやインド、中東諸国に接近するのが、日本にとって、賢明なのである。
 日ロ間には、北方領土問題があり、平和条約もむすばれていない。
 これは、日本より、むしろ、ロシアにとって、憂うべきことで、四島を返還しないかぎり、日本によって、極東方面を封鎖されて、ロシアは、地下資源の輸出だけで食いつなぐ巨大な二流国になりさがる。
 メドベージェフとプーチンの二頭体制が、欧米へ強硬路線をとる一方、日本と平和条約をむすんで、北方四島を返還してきても、それほどの意外性はない。
 その場合、港湾や空港の共同使用といった特殊権限をもとめてくるだろうが、日本側も、原油の安定供給など相応の要求をつきつければよいのであって、そういう相互要求が高い効果をあげうるのが、非対称の関係にある日ロ関係の特殊性なのである。
 懸念されるのは、ソ連通の政治家がいないことと、媚中一本槍で無能力の福田康夫内閣やチャイナスクールの外務省が、中・米の利益を慮って、せっかくのシグナルを無視することだが、そのテーマについては、あらためて、別の機会にのべよう。

posted by office YM at 16:07 | TrackBack(1) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

この記事へのトラックバック

ブログ意見集: 領土/領海問題をどう解決するか by Good↑or Bad↓
Excerpt: 「領土/領海問題をどう解決するか」に関するブロガーの意見で、みんなの参考になりそうなブログ記事を集めています。自薦による投稿も受け付けているので、オリジナルな意見のブログ記事があったら、どしどし投稿し..
Weblog: ブログ意見集(投稿募集中)by Good↑or Bad↓
Tracked: 2008-03-29 23:33