2017年06月01日

 中国・北朝鮮発「アジア・中東危機」@

 ●世界の安全保障を脅かす中国の真珠の首飾り
 中国による「アジア・アフリカの植民地化」が着々と進行している。
 やりくちは巧妙で、世界から融資トラップ(罠)≠ニ呼ばれるほどである。
 6〜7%の金利で巨額融資と巨大プロジェクトをもちかけ、中国側が工事を丸ごと請け負い、のちに施設全体を乗っ取るというもので、当事国が高利貸し並みの巨額債務を返済できなくなるのは、完成した施設が、現地の産業や雇用になんら貢献しない代物ばかりだからである。
 返済に窮すると、施設株式の80%譲渡や長期(99年)貸与を求め、やむなく応じると、施設を事前の計画どおり、軍港やレーダー基地に転用するのである。
 標的になったのは、インド洋のスリランカやモルディブ、アフリカ北東部のジブチから南大西洋のナミビアまでの国々で、ナミビアの新聞は、中国政府の非公式文書を引用して、中国が18の海洋国家に海軍の拠点(基地)を設ける計画と報じた。
 18か国のなかには、パキスタン、スリランカ、ミャンマー、ジブチ、イエメン、オマーン、ケニア、タンザニア、モザンビーク、セイシェル、マダガスカルがふくまれている。
 中国は、これらの18カ国のすべてで、港湾や空港、道路、鉄道、鉱山などの建設・開発に大規模な投資をおこなっている。
 その見返りとして、これらの施設を中国が軍事的に利用できるからくりになっているのはいうまでもない。

 中国はこの戦略を真珠の首飾り≠ニ称している。
 アラビア海からベンガル湾に至るインド洋海域にいつでも寄港できる外港を用意しておこうという戦略で、宿敵インドを封じ込め、制海権をもつ米海軍を牽制して、南シナ海への唯一のルートであるマラッカ海峡(マレーシアとインドネシア国境)が封鎖されても、原油を中国に運ぶ拠点港を確保しようというのである。
真珠の首飾り≠フ4大港湾が、@グワダル(パキスタン)、Aハンバントタ(スリランカ)、Bチッタゴン(バングラデシュ)、Cシットウェ(ミャンマー)である。
 @パキスタンのグワダルを外港化できれば、中国は、インド洋を航海することなく、パキスタン国内の鉄道や道路、パイプラインを使って、中国の内陸部に原油を輸送できる。
 Aスリランカのハンバントタ港は、タンカー航行が困難なポーク海峡を避けるシーラインの要衝で、ハンバントタを外港化できれば、中国軍はアラビア海とベンガル湾の両方ににらみがきかせることができる。
 Bバングラデシュの第二の都市チッタゴンの周辺に外港を確保できれば、中国は、マラッカ海峡を経由することなく、ミャンマーのマンダレー経由で中東やアフリカからの資源を内陸部に輸送することができる。
 Cミャンマーのシットウェ港は、軍事政権の時代から、武器輸出などで中国とつながりが深く、なかでも、1994年から借りている大ココ、小ココという2つの島には高性能の偵察・電子情報施設をもち、7つの海軍基地は、ミャンマーが持っていない大型艦艇が入港できるように整備されている。

真珠の首飾り≠フ手法は、徹底したマネー作戦で、ワイロから当事国の経済破壊まで、援助や経済協力とは遠くかけ離れた経済侵略、植民地化にほかならない。
 中国マネーによって、世界の最貧国から一変したのがエチオピアである。
 中国政府が工費をすべて負担した国内最大のアフリカ連合本部ビルを筆頭に中国資本による建築ラッシュがおき、首都・アジスアベバを走る新型の電車も中国の国有企業によって造られたものである。
 といっても、エチオピアの国力が増したのではない。
 中国資本といっしょにはいってきた中国人が、エチオピアを乗っ取ったのである。
 きっかけは、中国が、アデン湾(ソマリア沖)と紅海に接するジブチ共和国ですすめている海軍基地(武器庫や艦艇・ヘリの整備施設、海軍陸戦隊や特殊部隊の拠点)建設だった。
 米軍は、ジブチにレモニエ基地と港湾のオボック基地の2つを持っている。
 ところが、親米だったはずのゲレ大統領が、突如、米軍をオボック基地から追い出し、代わりに中国軍の駐留をみとめたのである。
 米軍はジブチに4千5百人が駐屯し、基地使用料として年間6300万ドルを支払っている。
 一方、中国軍は、1万人を駐屯させ、ジブチ政府に1億ドルの基地使用料を払うほか、ジブチの港湾改良事業に4億ドルを投資するという。
 ジブチは、古くから強国で、隣接する内陸のエチオピアに物資を運ぶ港湾として機能してきた。
 中国は、ジブチとエチオピアをむすぶ鉄道を高速化する事業に30億ドルを投資する予定で、エチオピアの繁栄はその恩恵だったのである。
 ジブチの米軍基地はアフリカ最大の反テロ戦争の拠点で、アルカイダや過激派組織ISの情報収集のほか、テロの拠点となっているイエメンやソマリアに無人偵察機飛ばしている基地である。
 アメリカは、やむなく、基地使用料を倍額にするというが、中国の真珠の首飾り$略は、世界の安全保障を破壊しながらやむことなく拡張しつづけている。
 次回以降、中国の暴走と身勝手が、北朝鮮やイラン、サウジアラビアやミャンマー、パキスタンをまきこんだアジア・中東危機へ発展しかねない危惧についてのべよう。
posted by office YM at 08:33| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年05月29日

 なぜ日本の政治は劣化したのかB

 ●三大ダメ政治家≠フアイドルだった小池百合子
 日本の政治をダメにした政治家を上げるなら、細川護熙(日本新党)と小沢一郎(新進党)、そして、小泉純一郎(第87・88・89代内閣総理大臣)の三人に尽きるだろう。
 細川内閣(8党派連立)の「小選挙区制」「政党助成金制度」は、政党と政治家を堕落させただけだったが、くわえて、細川は、日本の首相として初めて戦争謝罪≠おこなって、謝罪外交のレールを敷いた。
 小沢一郎は、自民党幹事長時代、アメリカにいわれるまま8年間に430兆円の赤字国債(公共投資)をだして日本の財政を悪化させ、自民党をとびだすと次々に新党を創設、政党助成金をすべて着服するという乱脈ぶりだった。
 媚中・親韓・反日に転じたのは、反日マスコミや左翼(労組・日教組・官公庁・言論界など)をとりこむためで、小沢一郎ほど狡猾にして無節操、悪辣な政治家は他に例が思い浮かばない。
 小泉純一郎は、加藤紘一や山崎拓らとともにYKKと呼ばれた自民党左派の一人で、改革主義者というよりもむしろ反伝統主義者だった。
 300兆円郵貯を自由化する郵政民営化に執着したのもアメリカ資本主義といべき新自由主義にのめりこんだのも、日本的制度や日本の伝統文化を嫌悪するアメリカかぶれだったからで、小泉の改革は、アメリカ化だったのである。
 皇室典範改悪は、秋篠宮妃・紀子さまのご懐妊によって、土壇場で先送りになったものの、悠仁さま誕生という神風が吹かなかったら、数千年間つづいてきた万世一系の伝統は、小泉の息のかかった有識者会議やらによって、紙くずのように捨てられていたはずである。

 小池百合子は、この三大ダメ政治家のアイドル的な存在で、日本新党の細川から新進党・自由党の小沢、自民党の小泉と権力の中枢を渡り歩き、小沢には側近として仕え、小泉の秘蔵っ子となるや郵政民営化法案に反対の小林興起の当選を阻止する刺客(2005年衆議院議員総選挙)≠ニなって東京10区に選挙区替えするありさまだった。
 小池の政治的信条は不明瞭で、たとえば外国人参政権問題では、「(税金を払っている)在日の方々が参政権という形で意見をのべるのは当然(という意見もある)」「在日の皆さまと同時に日本を考える上で大きなモメンタム(時流)である」と肯定的な意見をのべたかと思えば、2016年東京都知事選挙では、風向きを見たのか、外国人地方参政権反対を表明した。
 一方、女性を「子どもを産む機械」にたとえた厚生労働大臣柳澤伯夫の発言(2007年)にたいしては「日本の男性の女性にたいする見方はイスラムの国よりも遅れている」という的外れな極論を吐いている。
 日本の男性が女性に弱く、甘いのは、みずからの体験から十分承知しているはずである。
 テレビキャスター出身の小池は、機を見て敏な臭覚だけで、政治が視聴率と同じレベルにある。
 本質論はどうでもよく、政治という舞台で、刺激的なことばを吐いて視聴率≠稼ぐことができればそれで大成功なのである。
 2009年の衆議院議員総選挙では、公明党の推薦をうける一方、幸福実現党に選挙協力をもとめ、同党の候補擁立(東京10区)を取り下げさせ、その構図が都知事選までひきつがれた。
 公明党はハト派で、幸福実現党はタカ派だが、無節操な小池には、そんなことはどうでもよく、宗教団体もギブアンドテークの集票マシーンでしかない。

 小池ほど政治をなめきった政治家は、政治史上、稀有で、事実、減らず口と女のカンだけで、防衛大臣(第1次安倍内閣/2007年)から東京都知事にまで登りつめた。
 メディアを動員して政治をコントロールする小泉型の劇場政治≠ヘ、大衆迎合の衆愚政治にほかならないが、この政治手法にもとめられるのは、テレビキャスターのセンスで、効果的に大衆の耳目を集めたほうが勝者となる。
 横山ノックや青島幸雄、美濃部美亮吉によって、都政や府政が十年の遅れをとったのは、タレント知事の人気取りのバラマキによって、巨額の財政赤字をつみあげたからだった。
 小池が大臣時代にやったのは、小泉首相から提案されたクール・ビズ(ノーネクタイ・ノージャケット)運動のキャンペーンガール役(環境大臣)と守屋武昌防衛省次官の電撃的解任だけで、守屋解任では、閣議人事検討会議を無視して一部の新聞(毎日)にリークするという非常識な手法をとっている。
 当時、一部から、小池が検察から「空自の次期輸送機CXの搭載エンジンの納入利権をめぐって東京地検特捜部が守屋次官を逮捕を視野にマーク」という情報を得ていたからとささやかれた。
 そうでなければ、就任早々、しかも、その二か月後、理由もなく防衛大臣を辞任する小池が、守屋の後任に警察庁出身の西川官房長をあてる人事を単独で決断できる根拠も必然性もなかったというのである。
 小池が、万が一、検察・警察の情報や助言をもとに防衛省人事をおこなっていたとすれば、政治家失格どころか、国家的犯罪である。
 小池知事は、都発注の入札不正疑惑について、伊豆大島(大島町)の4件の工事で、最大約560万円の積算ミスがあったとして、徹底調査を指示したという(5月11日産経新聞)が、同件を報じているのは同紙だけで、リークが あったのは疑いえない。
 都発注の入札不正疑惑が暴かれれば、都の旧執行部が大きなダメージをうけることになるが、それが、都知事選前なら、小池新党にとって絶好の追い風になるだろう。
 小池が、側近をつとめた小沢一郎から、狡猾さと無節操、悪辣さを学んだのか、それとも、カイロ大学を卒業、中東の狂犬カダフィ大佐と懇意(「日本リビア友好協会会長」)だった小池の独特の政治感覚なのか、いずれにしろ、日本には存在しなかった危険でしたたかな政治家なのである。

posted by office YM at 09:39| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年05月25日

 なぜ日本の政治は劣化したのかA

 ●反日マスコミと手をむすぶ日本の野党
 日本には、自民党以外、政党と呼べるような政党が存在しない。
 野党の源流は、もともと、日本共産党にあって、旧社会党は、日本共産党を除名された連中の溜り場だった。
 社会・共産が育てた労組や日教組をバックにしているのが旧民主党で、注目されている反自民の「民共共闘」は、戦術ではなく、共産党への先祖返り≠ネのである。
「自衛隊は人殺し集団」「防衛費は人を殺すための予算」(日本共産党)
「自衛隊は暴力装置」(旧民主党官房長官/仙石由人)
「自衛隊の装備を一部中国から調達したほうが低コスト」(民進党代表/蓮舫)
 などの発言の裏にあるのは、日本の武装解除で、日本共産党も、中国共産党と仲直りをした不破体制(1998年〜)以降、いまなお、連日、宣伝カーで「憲法9条をまもろう」と訴えている。
 日本の野党は、日本の国家防衛ではなく、中国がもとめてやまない防衛力の放棄を党是≠ニしているのである。
 これは、日本の野党が親中派であることの宣言にほかならない。
 親中派のきわめつきは民主党の小沢訪中団(2009年)だろう。
 民主党議員143名を率いた小沢一郎名誉団長(民主党幹事長)は、民主党を人民解放軍になぞらえて、胡錦濤国家主席に「日本では解放の戦いは済んでいない。わたし(小沢一郎)は(人民解放軍の)軍司令官として頑張っている」とへりくだり、「一人ひとりに握手までしていただいて」と胡主席にペコペコと頭を下げた。
 この朝貢外交によって、民主党は、以後、自壊へとつきすすんでいった。
 売国奴に政権をあたえつづけるほど日本人は愚かではなかったのである。

 野党の源流である日本共産党は、北方領土返還に全千島列島をふくめていることからもわかるように、ナショナリズムをそなえたマルクス主義政党で、宮本顕治体制(1958〜1997年)時代には、ソ連や中国、北朝鮮の工作員がすべて追放された。
 それが社会党のほか、過激派(反代々木系)や左翼・反日市民団体へ流れていったのが六全協(1955年)以降で、追放組の共通点は、中・ソ・朝の工作員政党(グループ)という点にある。
 共産党の国防政策が「非同盟中立」だったのにたいして、社会党が「非武装中立」を立てたのは、ソ連や中国の侵略に抵抗しないという意思表示で、日本の絶対平和主義は、工作員政党の隠れ蓑だったのである。
 ところが、ソ連が崩壊にむかった1980年代の末頃、日本共産党が護憲へ立場を変えた。
 いまでこそ日本共産党は「憲法9条は世界の宝」としているが、昭和21年の衆議院本会議で「戦力不保持・交戦権の否認」を謳った憲法9条に最後まで反対したのが日本共産党(野坂参三・徳田球一)だった。
 日本共産党の重鎮上田耕一郎も著書(『民主連合政府で日本はこうなる』1974年)で、憲法改正と軍隊(人民軍)の保持を明確に謳っている。
 共産党が9条護持に回ったのは、ソ連が消滅して、中国がまだ非力だった当時、駐留米軍+自衛隊が共産主義革命の最大の妨害になるからで、仙石ふうにいうなら「自衛隊は(反革命の)暴力装置」だったのである。
 共産党にとって、人民防衛軍は必要だが、自衛隊では都合がわるく、中国の属国になって、飼い犬の平和を享受しようという民進党や護憲派にとって、有事に中共軍と戦うことになる自衛隊がジャマなのである。

 日本の野党には、反日という工作員の思想≠ェ宿っている。
 そんな政党や集団が、日本の政治をうごかすことができたのは、マスコミと二人三脚を組んできたからである。
 権力批判のマスコミと野党が手をむすべば、そのパワーが二倍にも三倍にもなる。
 その仕組みを拝借したのが、今夏の都知事選で大勝を予想される小池百合子の「都民ファーストの会」だが、そのテーマは、次回にのべるとして、野党とマスコミの癒着構造について、もうすこしみていこう。
 衆愚政治の主役となるマスコミが、政変に加担したケースが、民主党政権の誕生や「自民党をぶっつぶす」の小泉改革だった。
 民主党政権の誕生前夜、マスコミ総がかりによる反自民キャンペーン≠ヘ凄まじいものがあり、麻生首相の漢字読み違え(未曾有)が、連日、テレビで延々と報じられた。
 小泉改革は、日本のアメリカ化で、新自由主義の導入から皇室典範の改悪まで、マスコミは無批判的に小泉流をPRしつづけた。
 マスコミの大衆操作には絶大なものがあり、かつて、朝日新聞は、ポーツマス講和条約に不満な民衆を煽って、日比谷焼打事件までひきおこしている。
「北朝鮮は天国」の記事に騙されて北朝鮮へ渡った10万人の人々が、極貧と差別、奴隷労働と強制収容所に苦しみ、日本への帰国が許されなかった悲劇はいまも語り草になっているが、教科書問題や従軍慰安婦、南京大虐殺の誤報も、朝日新聞が展開した革命運動の一つで、60年安保騒動では、安保反対のアジテーターとなった。
 都議選を前に、失言問題や森友学園を執拗に追求して、安倍首相や自民党の足をひっぱるマスコミの小池百合子礼賛には目に余るものがある。
 だが、その小池ブームに翳りがみえないでもない。
 マスコミに踊らされる一方だった国民(都民)がマスコミ報道に疑いの目をむけはじめたのである。
 都議選は、マスコミとタッグを組んだ小池新党と、地道に都政を築き上げてきた都連自民党の一騎打ちとなるのである。
posted by office YM at 11:43| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年05月22日

 なぜ日本の政治は劣化したのか@

 ●日本の政界から大人物が消えた悲劇
 昨今、政治家の劣化がいちじるしい。
 中川俊直衆院議員が愛人とトラブルの末、警察のストーカー・リストに登録されるなどの不祥事をひきおこして、経済産業大臣政務官を辞任した。
 同議員は、妻子がいながら同愛人と重婚ウエディング≠ワでやってのけたハレンチな男で、こんな人物が政務官の肩書きをひっさげて日本の経済産業の行政責任を担っていたこと自体、心胆を寒からしめるのに十分なものがある。
 中川と同じ二回当選の宮崎謙介前衆院議員も、昨年、妻(金子恵美衆院議員/自民)の出産直前に不倫をスクープされ、議員を辞職している。
 議員2回生のスキャンダルはそれだけではない。
 豪雨被害視察のため訪れた岩手県で、おんぶされて水たまりを渡り、批判をうけると長靴業界の宣伝になった≠ニ軽口を叩いて復興大臣政務官の要職を棒にふった務台俊介衆院議員、公開株の購入を持ちかけて金銭トラブルをひきおこして離党した武藤貴也衆院議員ら2回生議員には、政治家の資格が疑われる者が目白押しなのだ。
 自民党の衆院2回生は107人で、党全体の3分の1以上を占める。
 民主党崩壊の余波にのって当選してきただけに、次期選挙では、民進+共産統一候補の前に三分の一が当選おぼつかないという。
 政治家の資質を問われているのは新人ばかりではない。
 復興大臣だった今村雅弘衆院議員が「原発事故の避難者が帰郷できないのは本人の責任」と発言して被災者の怒りを買った3週間後、こんどは、東日本大地震が東北だったからよかった≠ニ口走って、安倍首相が陳謝、これが事実上の罷免となった。

 政治が劣化した原因は、自民党にかんしていえば、3つあるだろう。
 一つは、政治改革(1994年)で、二つ目が公明党との選挙協力、三つめが議員の人間的な未熟さである。
 小沢が主導した政治改革の目玉は「小選挙区(比例代表並立制)」への移行と政党交付金の新設で、この二つの改革によって自民党の派閥政治がほぼ完全に崩壊した。
 日本の保守政治家は、自民党の派閥が育ててきたといってよい。
 中選挙区制時代の自民党は、派閥組織で、選挙区において競合する自民党の候補者は、それぞれ派閥の領袖から支援を受けてきた。
 自民党の公認候補は、中選挙区制では最大で5人になるが、候補者は、5大派閥(三木武夫、田中角栄、大平正芳、福田赳夫、中曽根康弘)に属して、選挙をたたかった。
 一方、派閥の領袖は、自派候補者の公認を獲得して、選挙資金や役職の世話をする代わりに総裁選挙の支持をもとめた。
 同一選挙区で複数が競合する中選挙区では、自民党候補者は、選挙区でライバルとの戦いに勝たねばならず、議員になっても、一頭地を抜いて、領袖から信頼をえなければ大臣などの要職につくことができなかった。
 派閥は、親分子分の関係だが、この仕組みが議員の力量や人格を鍛えるのに役立っていたのである。
 ところが、政治改革によって導入された小選挙区比例代表並立制や政治資金規正法の改正、政党助成法の導入によって、自由民主党の組織や行動様式ががらりと変わった。
 1選挙区から3〜5人の議員を選出する中選挙区制度では、候補者の調整から選挙資金の調達まで、派閥が大きな役割をはたした。
 だが、党員同士の競合がない小選挙区や各党が得票に応じて議席を得る比例代表制では、選挙の中心が政治資金を集配する党本部や総裁に移って、派閥が形骸化してゆく。
 中選挙区制においては、党の公認が得られなかった保守系の無所属候補者でも、当選すれば、自民党に入ることを許された。
 ところが、小選挙区制では、公認を得ずに出馬すること自体が不可能になる。
 公認をえずに立候補することが党にたいする裏切り行為で、また、公認がなければ1人区での当選がおぼつかない。
 これを最大限に利用したのが小泉劇場≠セった。
 小泉は郵政国会で、郵政民営化法案を成立させると公言し、法案不成立の場合、衆議院を解散して総選挙をおこなうと明言した。
 それが現実のものとなったのが、自由・公明が圧勝した郵政選挙(2005年)だった。
 このとき、小泉は、郵政民営化法案に反対した自民党の衆院議員を自民党として公認せず、郵政民営化賛成派候補を擁立した。
 犠牲となった一人が郵政民営化に反対の小林興起で、小泉は、選挙区(東京10区)に自民党公認候補として小池百合子を刺客≠ニしてさしむけて小林を葬った。
 この郵政選挙で、自民党は大勝利を収め、党の公認から外された多くの有力議員が議席を失い、アマチュアの代議士が大挙して国会の赤絨毯をふんだ。
 これが選挙の大勝にともなってうまれるチルドレン議員≠フはじまりである。
 小泉チルドレンにつづいて出現したのが小沢チルドレン、前出の不祥事連発の安倍チルドレン、そして、7月2日投開票の都議選では「都民ファーストの会」の小池チルドレンの大躍進が予想されている。
 もっとも、小池百合子自身が勝ち馬にのったチルドレン議員の優等生ということができる。
 細川護熙(日本新党)や小沢一郎(新進党)に擦り寄り、小泉潤一郎の信頼をえて初入閣(環境大臣)し、谷垣総裁の下では、女性が初となる党三役(総務会長)に就任、第1次安倍内閣では内閣総理大臣補佐官(国家安全保障問題担当)に任命された。
 そして、都知事選では、小池ブームを演出して、自民党候補を一蹴した。
 小池は、夏の都議選で「小池新党」の候補を大量擁立して都議会のドン≠アと内田茂都議率いる都議会自民党を壊滅状態に追い込む決意だ。
 次回は権力操作だけでのしあがってきた小池パフォーマンスの危うさにふれよう

posted by office YM at 09:27| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年05月10日

 北朝鮮危機と米中の新時代C

 ●ビッグ4(日・米・中・ロ)の新時代が幕開け
 かつて、日本は、米・中・ロを相手に大東亜戦争をたたかった。
 このときの欧米とりわけアメリカの日本にたいする敵愾心は尋常なものではなかった。
 人類史上、最悪の大量虐殺である原爆投下が、ルーズベルト、トルーマンという二人の大統領によって計画され、実行に移されたことからも、アメリカの日本にたいする憎悪の深さが測れよう。
 その理由の一つに、アジアの東端、太平洋の西端に位置する日本の地政学的な特殊性をあげることができる。
 アメリカにとって、日本は、太平洋の権益を争うライバルで、中国進出への最大の妨害者だった。
 ロシアや中国にとっても、日本列島は、太平洋進出を妨げる障害である。
 一方、海洋国家である日本は、海を隔てて隣接する中・朝や海路をとおして東南アジアや西太平洋に大きな影響力をもちうる。
 それが大東亜・日米戦争の原因で、日本は、第一次大戦後、西太平洋を支配下におさめ、満州国を建国後、支那で主導権を握り、東南アジアからインドにまで手をのばしつつあった。
 これに猛烈な嫉妬心を燃やしたのがルーズベルトで、石油の禁輸を軸とする「ABCD包囲網」をつくりあげ、蒋介石やスターリンに接近して、日本壊滅戦争を画策する。
 真珠湾攻撃以前に中国から日本への都市を空襲しようとした「フライイングタイガー作戦」や日本から開戦以外の選択肢を奪った「ハルノート」はルーズベルトの謀略で、米議会は、戦後まで、この事実を知らされていなかった。

 日本は、中国を侵略したされるが、辛亥革命(1911年)で清朝を倒した孫文や後を継いだ袁世凱の死後、支那は、軍閥内戦、国民党内戦、国共内戦が熾烈をきわめる内乱状態にあった。
 北洋軍閥(北京政府)や南方革命派(広東政府)の攻防のほか各省で軍閥や匪賊が争うなか、台頭してきたのがコミンテルンの支援をうけた毛沢東らの共産勢力で、これが現在の北京政府にひきつがれた。
 日本は、孫文の二人の後継者のうち、親米派の蒋介石(重慶政府)ではなく親日派の汪兆銘(南京政府)を支援して、軍事介入する。
 その背景にあったのが、列強を排して、アジアの独立自営をめざす大東亜共栄思想だった。
 日本が石油の禁輸に苦しむのも、アジア全域の貧困も、列強の掠奪や圧力によるものだが、アジアには、日本をふくめて、アジア全体を豊かにする資源や生産能力、文明がそなわっている。
 この考え方がアジア主義で、のちのアジア独立運動につながっていく。
 植民地解放や独立には、武力闘争以外に方法がないが、武士の国だった日本には、アジア解放を実現できるゼロ戦や戦艦大和の技術力と神風特攻隊の戦意があった。
 東南アジアの人々は、日本人の勇気と智恵に学んで、独立を勝ち取ったのである。

 現在も、当時の地政学的、文明的な条件は、当時と変わってはいない。
 変わったのは、日・米・中・ロの力関係だけで、中国の躍進に貢献したアメリカが、中国革命と米ソ冷戦、朝鮮戦争ののち、手の平を返して、日本と同盟関係(日米安保条約)をむすんだ。
 この軍事同盟は、日米のみならず、アジアの安定にも有効で、日米安保がなかったら、アメリカは米ソ冷戦に勝つことができず、中国の覇権主義に歯止めをかけることができなかったろう。
 日本の地政学的ポジションと国家的なプレゼンスは、敵に回すと脅威である一方、味方にすれば大きな戦力になる性質のもので、日米安保は、アメリカにとって世界戦略の重要な要になっている。
 かといって、日米関係が、米英関係のような強固な盟友関係になりうるかといえば、かならずしもそうではない。
 ニクソン大統領の訪中準備のために訪中したキッシンジャー大統領特別補佐官は、中国の周恩来首相(1971年)との極秘会談で、「日米安保条約は日本の軍事大国化を防ぐためのものという瓶のふた論≠展開した。
 このときキッシンジャーは「日本が再軍備拡張計画をすすめるなら伝統的な米中関係が再びものをいうだろう」とも発言している。
 この発言の意味するところは、日米安保条約は便宜上のもので、アメリカにとって、中国こそがアジアの盟友だという宣言で、それが伝統というのである。
 公開されたキッシンジャーの発言は、日本に衝撃をあたえたが、大きな示唆をふくんでもいる。
 それは、アメリカを敵に回してはならないということである。
 中国やロシアにたいしても同様で、日本が戦争にふみきれば、米・ロ・中が一丸となって襲いかかってくる。
 日本を属国化することのメリットがはかりしれないからで、日米安保条約が失効したら、尖閣列島・沖縄海域の南シナ海化≠ェ目に見えている。
 日本にとって、アメリカを盟友にしてロシア・中国を牽制するのがもっともすぐれた戦略で、他の選択肢はない。
 安倍首相が、1項と2項を残したまま、憲法9条に自衛隊の存在を明記する提案(3項)をおこなったという。
「戦力不保持」「交戦権の否定」(二項)は自衛隊明記との整合性を欠き、国家主権の否定につながるので論外だが、「戦争放棄」(一項)については、残したままでよい。
 その代わりに「日本国政府は国民の生命と領土をまもる無制限の権利をもつ」という一項(4項で)を追加すべきだろう。
 無制限のなかに核報復≠ェふくまれるのはいうまでもない。
 日本には戦争という選択肢はないが、報復までを放棄したわけではない。
 戦争を放棄するが、報復戦力に制限がないとすれば、、平和主義と戦力保持のあいだに矛盾が生じない。
 日本が核をもったとき、ビッグ4(日・米・中・ロ)の新時代が幕開けするのである。

posted by office YM at 14:40| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年05月08日

 北朝鮮危機と米中関係B

 ●歴史が教える「朝鮮半島は疫病神」
 原子力空母カール・ビンソン率いる米海軍の攻撃空母群が朝鮮半島海域から離れるのがいまや時間の問題になりつつある。
 理由は三つある。
 一つは、北朝鮮攻撃に中国の同意がえられなかったことで、アメリカ主導で金正恩の打倒と朝鮮半島の再編という事態になれば、決定的に国益をそこねる中国が、米攻撃空母群出撃に待ったをかけたのである。
 二つ目は、ソウルを中心に数百万に被害が及ぶと予想される北朝鮮の反撃に韓国側が耐えられそうにないことで、従軍慰安婦問題を蒸し返すことしか頭にない韓国政府には、北朝鮮と事を構える士気も準備もそなわっていない。
 三つ目はロシアの圧力で、プーチンと電話会談したのち、トランプの口から威勢のよいことばが聞かれなくなった。
 トランプは、プーチンとの電話会談の直前、安倍首相と綿密な打ち合わせをおこなっている。安倍首相とプーチンは意志の疎通ができている。シリア攻撃で溝ができたトランプとプーチンのあいだに安倍首相が入って落としどころをさぐったというのが事実に近いだろう。
 習近平もジレンマに陥っている。
 中朝関係は、中国寄りだった北朝鮮の張成沢(国防委員会副委員長)の処刑以来、急速に悪化、習近平・トランプ会談以降、無煙炭の輸入や石油の輸出が制限されたほか、現在、経済支援が完全にストップしている。
 北朝鮮の国営メディアは、これまで数回、中国を名指しで批判している。
 これにたいして、人民日報系のメディアも「中国が(北朝鮮のために)戦う必要はない(王洪光/元南京軍区の副司令官)」と報じるなど、中国と北朝鮮の同盟関係は、いまや、崩壊の危機にある。

 中国は、北朝鮮という同盟国の造反と朝鮮半島へのアメリカの介入、北朝鮮へのロシアの接近という三つの難問に直面している。
 いちばん頭を悩ませているのはロシアの北朝鮮への接近だろう。
 ロ朝間では、すでに総事業費約250億ドル(約2兆9000億円)規模の鉄道整備・改修計画が合意済みで、ウラジオストクと羅先(北朝鮮北東部)をむすぶ定期航路も開設された。
 北朝鮮は、国内の金やレアメタル(希少金属)などの開発権益をロシア側に提供して、これを工事代金に充てるという。
 その先にあるのは租借地(港)の獲得と国家の死命を制する石油をもちいたロシアの飼い殺し外交≠ナ、羅先港は、租借化を視野に入れたロシアが建設したようなものである。
 朝鮮は、昔から支那にくっつきロシアにくっついて生きのびてきた事大主義の国で、日本が日清戦争で清国から独立させても、こんどはロシアになびいて日露戦争の原因をつくるという厄介きわまりない国である。
 併合して、アジアの最貧国から日本並みに豊かにしてやると「侵略された」「怨み千年」などとたわ言を並べ、米韓従軍慰安婦やベトナム戦争の組織的な強姦略奪を棚に上げ、日本へのいやがらせのため、従軍慰安婦像を建てまくるというクレージーな民族でもある。
 ロシアもそのクレージーさに手を焼いて一時疎遠になったが、最近、距離を縮めたのは、米・中接近にくさびを打ちこみ、地政学的な得点をえようという腹積もりからである。

 北朝鮮が原爆の小型化と大陸間弾道弾(ICBM)を完成させると米大陸のほか、北京やモスクワまでが射程内にはいって、一存で世界を震え上がらせてみせるという金正恩の妄想が実現することになる。
 米・中・ロが小競り合いをしている北朝鮮情勢のなかで、カギを握っているのがロシアである。
 中国が石油をとめても、ロシアがタンカーを羅先港に送り込めば、北朝鮮はかんたんに寝返る。
 事大主義の朝鮮人は、国家的権益や租借地の提供に抵抗をかんじない民族なので、北朝鮮がロシアの手の内に落ちるのは、時間の問題だろう。
 中国とロシアは蜜月関係にあるかのように見える。
 ところが、国境問題は例外で、かつてのダマンスキー島事件や新疆ウイグル自治区の軍事衝突(1969年)は、一時、全面戦争の危機に発展した。
 そして、現在は、中央アジアが火種で、最近、中国が提案した中央アジアの「反テロ協調体制」から外されたロシアの反発には根深いものがある。
 米・ロ・中が朝鮮半島情勢をめぐってそれぞれ微妙な立場に立っているわけだが、かつての宗主国日本は、静観の構えである。
 朝鮮民族の狂気を知っているからで、巨大な空母で威嚇すれば震え上がると読んだトランプは単細胞すぎたのである。
 懸念されるのは、中ロ紛争で、原因となりうる一つに北朝鮮がロシアに譲渡した鉱産資源の開発権益がある。
 北朝鮮には、中国との国境付近に、埋蔵量が東アジア最大級の茂山鉄鉱山や世界一のタングステン鉱脈のほか、亜鉛や銅、金鉱山までがうなっている。
 これまで中国は、電力や食料などの経済援助の見返りに同地帯の鉱産資源の権益を一手に握ってきた。
 北朝鮮がこの鉱産権益をロシアに譲渡すれば、どういう事態になるか。
 ロシア軍と中国軍が国境付近で悶着をおこす可能性すら生じかねない。
 朝鮮半島に首をつっこむとろくなことにならないのである。

posted by office YM at 10:29| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年04月26日

 北朝鮮危機と米中の新時代A

 ●金正恩が日・米・中・韓に対抗できる理由
 フィリピン海でおこなわれていた海上自衛隊(護衛艦「あしがら」と「さみだれ」)との日米共同訓練を終えた原子力空母カール・ビンソンが、朝鮮半島に向けて北上を開始、先立って、戦略ミサイル原潜ミシガンが韓国の釜山に入港した。
 一方、北朝鮮は、同国東岸の元山市近郊で大規模な実弾演習をおこなった。
 北朝鮮人民軍総参謀部の「ソウルの火の海にする」という脅しを裏打ちする軍事デモストレーションで、ソウルを射程に収める旧ソ連製の改造型70ミリ自走砲などのロケット砲を千門近く所有する北朝鮮砲兵部隊は、最近、新たに1万発の砲弾を追加配備したという。
 これが金正恩の強気の根拠で、ソウル壊滅のリスクを冒して、米韓が攻めてくることはないと踏んでいるのである。
 事実、アメリカ歴代大統領が北朝鮮への軍事攻撃を控えてきたのは、中国にたいする配慮のほか「ソウルの火の海に」という恫喝に屈してのことで、韓国軍には、平譲まで到達するロケット砲が一門もないばかりか、地下壕で固めた北の重要拠点に手も足も出ない。
 韓国が、親北派の大統領候補(文在寅/ムン・ジェイン)を立てたのは難を逃れようという魂胆からで、北の脅威どころか、矛先を日本に転じて、従軍慰安婦問題をむしかえそうとしている。
 日本総領事館(釜山)の前に新たに建てられた慰安婦像にひざまずく文在寅の事実上の公約は「平譲訪問」と「THAAD(超高高度防衛ミサイル)配備の撤回」で、中国は、反日・親北派の文候補を熱烈に支持している。
 米・韓の足並みが揃わないなか、カール・ビンソンを中心とする第1打撃群が朝鮮半島や中・韓・朝がむきあう黄海へ接近するには中国の了解がなければならないが、万が一、トランプが独断で出撃を命じれば、中・朝関係が決定的に断裂する。

 都内で6者協議の代表者(日・米・韓)会合が開かれたほか、日本と中国の代表者(外務省金杉局長/武大偉・朝鮮半島問題特別代表)が北朝鮮への石油の禁輸措置を協議した。
 中国が石油供給を中止すれば、北朝鮮経済は短期間のうちに破綻するといわれているが、おおいに疑問である。
 国連安保理決議にもとづく経済制裁がつよまるほど、北朝鮮政府の資金力が高まって、一発で数十億円(中距離弾道ミサイル・ムスダンの国際的相場3000万ドル/約33億円)かかるサイルの発射実験をくり返し、ミサイルとは桁ちがいにカネがかかる核開発も順調にすすめられている。
 最近では、非政府系の経済活動が目に見えて向上し、飢餓死が絶えたどころか、トンジュ(金の主)と呼ばれる富裕層まで出現している。
 理由は「密輸と闇経済」で、中朝・中ロ貿易の大半が密輸である。
 北朝鮮は、国連加盟国192国のうち166国と国交をむすび、交易関係をもっているが、数字にあらわれるのは数パーセントで、大半が密輸や闇取引である。
 ちなみに北朝鮮の無煙炭の輸出は公的資料(年間1000万t)の同程度以上が密輸出され、同規模のスケールで密輸入がおこなわれている。
 ドル箱は、中国とロシア、日本で、ロシア(ウラジオストク)から北朝鮮の羅先港にもちこまれる原油(M100)は北朝鮮にとって原油にひとしい。
 ロシアのM100からガソリンや航空機のジェット燃料を抽出できる技術が完成しているからだが、黄海を往来する中朝の密輸貿易船と同様、これも経済制裁外である。
 偽ドルや麻薬の国外持ち出しや不法送金もおおっぴらで、日本からのパチンコ送金や朝銀を救済した公的資金導入(1兆3千億円)も金王朝の金庫に納まって、核開発の資金に化けた。

 1991年のソ連崩壊後、社会主義諸国からの支援が途絶して、配給制度をとっていた北朝鮮経済が崩壊した。
 97年に韓国に亡命した金正日の側近、黄長Y(ファン・ジャンヨプ)元朝鮮労働党書記によると配給停止によって「200万人以上の住民が餓死した」という。
 このとき、脱北した北朝鮮人の一部が、中国で食糧や物資を調達して、中朝国境で商売をはじめた。
 これが北朝鮮の闇市場で、現在、国内の経済活動の8割以上を占める規模にまでふくれあがっている。
 取り締まるどころか、金正恩体制が自力更生が奨励しているのは、国民を豊かにする政策を放棄できるからで、そうなれば、金正恩が国家予算をすべてすきなように使える。
 韓国から流れ込む資金(経済特別区収益や市民団体の支援など)や出稼ぎの上納金、在外北朝鮮公館から献納される「忠誠資金」、武器密輸などでえられた利益に加え、無煙炭などを輸出した代金がそっくり金正恩の金庫に入る。
 北朝鮮王朝を支えているのは、金日成時代は労働党員300万人といわれたが、現在は、軍や秘密警察などの権力機構を牛耳る中枢部とその周囲を固める数万人の幹部、平壌の高級住宅地に住むエリート集団ら合わせて十万人ほどといわれる。
 ミサイルを実験をくり返し、核開発をすすめているのは、約十万人の狂信的王国で、オウム真理教が国家になったようなものである。
 王国外にはじきだされた国民は、強制収容所と残虐な公開死刑に脅え、餓死を免れるため必死に経済活動をおこなっている。
 ちなみに亡命した黄長Yの一族3000人は強制収容所に収監され、多くが餓死したという。
 金正恩委員長は、後見人とされた張成沢(国防委員会副委員長)ら100人以上を側近や親族ともども公開処刑で粛清しているが、張成沢の場合、飢えた百匹の猟犬に食い殺させるという凄惨なものだった。
 北朝鮮では、公開処刑の見物が国民の義務で、残虐な公開処刑を見た国民のなかから善政をもとめる声などでてくるはずがない。
 原子力空母カール・ビンソンに随伴する巡洋艦や駆逐艦、攻撃型潜水艦からトマホークが発射された瞬間、米中関係に想定外の変化がおこる。
 逆にいえば、中国のOKがでなければ、カール・ビンソンは張子の虎なのである
posted by office YM at 23:54| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年04月20日

 北朝鮮危機と米中の新時代@

 ●ありえない米の北朝鮮攻撃
 朝日新聞が米の北朝鮮攻撃は「核戦争勃発」の危険性をはらむと報じた。
 北朝鮮国連代表部のキム・インリョン次席大使の「米国の北朝鮮侵略という無謀な動きが深刻な局面にたっした」「北朝鮮はどんな形態の戦闘にも応戦する準備ができている」という会見(国連本部)を引用したもので、北朝鮮の対米非難を借りて、原子力空母カール・ビンソンを派遣したトランプ米政権が危険な賭けにでたかのようにいうのである。
 テレビも、連日、原爆実験や大陸間弾道弾(ICBM)の発射を機に米軍が出撃するかのごとくつたえ、その日をXディ≠ニ称している。
 北朝鮮攻撃がトランプの決断いかんにかかっているかのようにつたえるのは誤りで、アメリカが、朝鮮戦争という爆弾の導火線に火をつけかねない北朝鮮攻撃にふみきることはありえない。
 朝鮮戦争は、現在、休戦中で、米・韓と中・朝は、それぞれ軍事同盟をむすんでいる。
 経済人のトランプが、米・韓と中・朝による全面戦争のリスクを冒すはずがないように、中国が、手に余した北朝鮮をアメリカにゆだねる可能性もゼロである。
 チベット・ウイグル・内モンゴルなど内陸部を征服した中国が、海洋進出の絶好の基地となる朝鮮半島を手放す選択肢はありえないからである。
 朝鮮半島は、日清・日露戦争という二つの前例があるように、日・中・ロにとって地政学上、きわめて重要な要衝である。
 とくに、海洋進出を狙う中国にとって、朝鮮半島を支配下におくかアメリカに奪われるかでは、死命を制する大問題となる。

 中国のテレビ局(CCTV)などによると、中国の王毅外交部長(外相)は北朝鮮情勢をめぐって、ロシアのラブロフ外相と電話会談をおこなったという。
 ロシアと対話の姿勢をみせたのは、3強国(米・中・ロ)のバランスをとるためとアメリカを牽制するためで、北朝鮮問題へアメリカの介入が一線をこえると中国にとってきわめて不都合なことになる。
 最悪のシナリオは、米軍による北朝鮮の軍事制圧で、その上、米・韓主導で南北統一がおこなわれるようなことになれば、朝鮮半島は、中国の海洋進出の要衝どころか、咽喉元につきつけられたナイフになる。
 南北統一をタテマエとする韓国も米軍による軍事制圧を望んでいない。
 北朝鮮へ軍事攻撃をおこなえば、韓国にむけられた大砲・ミサイルが一斉に火を噴き、ソウルが火の海になるどころか、射程内の約2000万人に被害がおよぶ可能性がある。
 南北の統一も、ドイツ統一後、西ドイツが東ドイツの負の遺産を抱え込んで十年以上、経済の停滞に苦しんだ前例もあり、現在の韓国には荷が重過ぎる。
 金正恩は、国民の犠牲とひきかえに、アメリカに軍事威嚇をおこなっている。
 挑発にのったアメリカの攻撃で北朝鮮が壊滅すれば、1000万人以上の難民がでるばかりか、飢餓や内乱で、同規模の死者がでる可能性がある。
 そうなれば、国際的批判が一斉にトランプ米政権にむけられる。

 トランプと習近平が接近した理由がそこにある。
 中国の力で、金正恩に政策転換をおこなわせ、北朝鮮を六カ国協議のルールに従わせようというのである。
 ところが、金正恩は、習近平主席にいちども会っておらず、中国側が会談を申し入れても黙殺している。
 金正恩は、北朝鮮の強硬路線にたいして、中国に打つ手がないことを知っているのである。
 中国には、金正恩を亡命させ、保護していた兄の金正男を送り込み、北朝鮮に親中政権を立てる構想があったはずだが、金正男が北の工作員に暗殺されたばかりか、とりこみかけていた韓国に、北京までがレーダー網にかかるTHAAD(高高度弾道弾迎撃)ミサイルの配備がきまり、朝鮮半島戦略が根底から崩れ去った。
 中国もまた、北朝鮮危機にからめて、アメリカに足並みを揃えざるをえない事情があったのである。

 中国は、北朝鮮にたいして石炭輸入や石油輸出の制限をきめ、中国国際航空が北京発平壌行きの運航を一時停止した。
 北朝鮮の交易は約90%が対中国で、これまで、経済制裁が効果なかったのは、中国が抜け道になっていたからだった。
 もっとも、中国が経済制裁にくわわっても、国民がますます飢えるだけで、北朝鮮情勢に大きな変化が生じるとはかぎらない。
 朝鮮民族は妄想の民族で、金正恩は、北朝鮮がアメリカや中国と肩を並べる軍事大国と思い込んでいる可能性が高い。
 北朝鮮の軍事費は75億ドルで、米国(5960億ドル)の1・3%、韓国(364億ドル)の20%にすぎない。
 ところが、GDP対軍事費の比率は一位(23.3%)で、兵力数は米国と並ぶ138万人(世界3位)である。
 北朝鮮(人口2500万人)では男子の十人に一人が軍人なのである。
 その軍人も、エリート以外、大半が栄養失調で、体重が50キロにみたない兵士も少なくないという。
 アメリカも中国も、こんな狂気の国に有効な戦略が立てられるはずがない。

 それでは、なぜ、アメリカは、北朝鮮の戦略拠点を狙う「精密照準爆撃」や戦略核兵器を導入した大規模な米韓軍事演習をおこない、原子力空母カール・ビンソンを派遣したのか。
 トランプは習近平に『アメリカは空母だけでなく、原子力潜水艦を派遣する用意があることを金正恩に知らせるべき』とつたえている。
 北朝鮮にたいする有効な手段が、アメリカの軍事的デモストレーションだけで、それが、米・中の共通の利益になっていたのである。
 中国のテレビ局(CCTV)などによると、トランプ大統領は「為替報告書(米財務省)」に中国を為替操作国に指定しないとのべたという。
 トランプは大統領選中から、中国政府が人民元の対ドルレートを低く操作していると非難してきた。
 それをひっこめたのは、北朝鮮問題の解決には、習金平との協力関係が不可欠だからで、米中首脳会議でも、中国が南沙諸島海域に建設した人工島などの南シナ海をめぐる領有権問題が、事実上、棚上げされている。
 米・中は北朝鮮危機に共通の認識をもち、金正恩を倒した後、韓国を外した米・中・ロ3国による信託統治のプランをもっている可能性が高い。
 グーバリズムに代わる米・中・ロの3大強国による世界支配が、北朝鮮危機から浮上してきたのである。
posted by office YM at 07:03| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年04月10日

 伝統と民主主義C

 ●右翼は「君民一体」の守護者たれ
 政治思想上の最大のテーマは「個と全体」の矛盾解消にある。
 個は、一人ひとりの国民のことで、全体は、国家にあたる。
 西洋では「社会契約説」で、ホッブスやルソー、ロックがこのテーマを論じた。
 ホッブスは両者の二元化(「国家は怪物(リバイアサン)」「万人の戦争」論)で、一応、片をつけたが、ルソーとロックは、両者の一元化(「人民代表による国家運営」)をもとめた。
 問題なのは人民代表≠ニいう考え方で、暴力革命や独立戦争、選挙にもとづく独裁(ファシズム・大統領制)も、人民が主役となる民主主義である。
 日本は、中世以降、権威と権力の二元化をもって「個と全体」の矛盾を解消してきた。
 それがわが国の伝統で、歴史という時間軸のなかでは、文化と政治、権威と権力が融合する。
「個と全体」の矛盾を解消するカギは、一過性の現在ではなく、歴史の連続性や永続性のなかにあったのである。
 日本は、政体(権力)と国体(権威)の二元論の国家で、民は、天皇とともにある。
 それが「君民一体」である。
 権力は民を支配するが、民は、権力に正統性を授ける権威と同位(三位一体)にある。
 日本で独裁や恐怖政治がうまれなかった理由がそれで、ルソーも「君民一体」が理想の政治とみとめている。

 玄洋社(頭山満)や黒龍会(内田良平)の流れを汲む大日本生産党の政綱に次のようにある。
 一、欽定憲法に遵い、「君民一致」の善政を徹底せしむること
 二、国體と国家の進運に適合せざる制度法律の改廃を行い政治機関を簡素化せしむること
 三、自給自足立国の基礎を確立せしむること
 大日本生産党は、血盟団事件(井上日召)、五・一五事件の流儀をうけついだ神兵隊事件の中心的な役割をはたした右翼団体である。
 中村武彦や白井為雄らの理論家をうんだ戦後右翼の一つの原点で、両先達の研究テーマが「個と全体」の調和だったことは、自著にあるとおりである。
 民主主義で「個と全体」の矛盾を解消することはできない。
 むしろ、その矛盾を広げるのが民主主義といってよい。
 個の集合(大衆)を一つの実体とみなして、その代表を元首とするのは暴力革命や全体主義(独裁)を正当化するためのこじつけで、民から委任されたとする全権が民の意思を反映するとはかぎらない。
 民主主義(国民主権)の最大の欠陥は、主である民が国民一般におきかえられて、実体をともなっていないところにある。

 憲法第一条に「天皇の地位は主権の存する日本国民の総意に基づく」とある。
 主権をもつのが国民全体で、その総意が存在するというのは、御伽噺である。
 それが民主主義や国民主権の正体で、どこにも実体がないのである。
 第一条がうけいれられているのは、日本国民がこれを「天皇はわが国の伝統である」と読み解いているからで、天皇が憲法上の存在などは思っていない。
 ところが、自民党改憲案では、象徴を元首にさしかえ、以下、一条の全文をほぼ全面的に踏襲している。
 明治憲法の欠陥は、ドイツ憲法を模倣して、権威の座にあった天皇を権力の座(=元首)にすえたことで、一方、GHQ憲法の過ちは、日本の君民一体を西洋の民主主義(主権在民)にすりかえたところにある。
 自民党の改憲案は、明治憲法とGHQ憲法の悪いところ取りで、これを改憲案として堂々と掲げるところに自民党の保守党としての限界がある。

 民主主義は、歴史の連続性を断ち切った一過性の決定で、過去の事跡や歴史の智恵が切り捨てられている。
 国家も国民も歴史的存在で、歴史を失ったら、国土は不動産に、国民は住民にすぎないものになってしまう。
 民主主義では、日本人が日本人で、日本の国土や民族の文化・文明が日本のものであることが明らかにならないのである。
 それができるのは、理屈をこえた伝統だけで、歴史の連続性や歴史との一体感は、理屈ではなく、精神文化なのである。
 伝統を多数決でひっくり返そうとしたのが、小泉政権下の「皇室典範に関する有識者会議」で、同じことが、将来、おきないという保証どこにもないどころか、自民党幹事長が歴史破壊を堂々と口にしている。

 天皇が憲法上の存在となっているかぎり、歴史の証である天皇が、道路交通法のように、法手続きによって廃絶させられる危機から免れえない。
 天皇退位問題にたいして、安倍内閣は特例法(「皇室典範の付則に記述」)で処置するという。
 これは、天皇が歴史上の存在で、伝統の象徴であることの否定で、GHQが憲法の形でおしつけた民主主義への屈服である。
 わが国の数千年の歴史は、GHQがわずか一週間で書き上げた占領基本法と比較するべくもなく、まして、これに屈すべき理由はケシ粒ほどもない。
 同様に11宮家の臣籍降下も皇室典範の憲法への組み入れも、戦勝国の時限的な戦時占領政策で、いつまでもこれをまもらなければならない理由はどこにもない。

 日本が、戦後70年以上にわたって、アメリカの占領政策をひきずっているのは、護憲・民主主義・国民主権を武器にしている左翼を中心とした反日勢力の口車にのせられたのである。
 内部から国家体制を切り崩すのが敗戦革命のメカニズムである。
 レーニンが編み出した敗戦革命は、敗戦国内に祖国にたいする絶望と憎悪を高めさせ、一方で反逆者を育成することによって、革命前夜の危機的な情況をつくりだせるという革命理論である。
 戦後、日本の政界は、親米(自民党ら)と親ソ・親中(旧社会党ら)が憲法をめぐって激しく対立した。
 敗戦革命の機関紙となったのが朝・毎などの大新聞で、広告塔となったのがNHKなどの放送メディアだった。

 戦後、日本で革命がおきなかったのは、歴史と伝統の証としての皇室が存在したからである。
 日本人は、空想の民主主義ではなく、実在する伝統をとったのである。
 反日勢力が民主主義(憲法)をふりまわすのは、伝統(国体)が敗戦革命の最大の妨害となっているからで、国民投票によって、万世一系から皇室の存続までを否定しようという魂胆である。
 戦争に負けた日本に伝統をまもる政党も大組織も存在しない。
 日本を世界に誇る伝統国家たらしめているのは、民を思う天皇と天皇を慕う国民だけである。
 右翼の使命は、国体の伝統をまもることで、「君民一体」の守護者でなければならないのである。

posted by office YM at 08:12| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年04月06日

 伝統と民主主義B

 ●日本の皇室とヨーロッパの王室
 ヨーロッパの王室は、ローマ帝国における皇帝の末裔で、現在、その血族がハプスブルク家やブルボン家、ウィンザー家(旧ゴータ家)などの名家として残っている。
 したがって、ヨーロッパの王族はみな親類で、オランダやノルウェー、スウェーデンの王家はイギリス国王の継承権をもっている。
 デンマーク、ベルギー、ルクセンブルク、スペイン、かつて王室が存在したフランス、ギリシア、ルーマニア、ドイツ、ロシア、オーストリアの旧王室も血縁をとおしてイギリス国王(ウィンザー家)や旧フランク王国(ハプスブルク家)とつながっている。
 中世のヨーロッパで一番格式が高かったのは西ローマ帝国を継承したとする神聖ローマ帝国皇帝で、当時のイングランド王やフランス王は、皇帝の格下とされた。

 紀元前8世紀に建国された王制ローマ帝国は、紀元前5世紀に共和政へ移行して、500年後の紀元前27年から帝政時代に入る。
 帝政ローマは、4世紀に東西に分裂したのち、東ローマ帝国は15世紀までつづくものの、西ローマ帝国は5世紀になってゲルマン族に滅ぼされる。
 神聖ローマ帝国は、10世紀に西ヨーロッパ大陸部のほぼ全域におよぶフランク王国のカール大帝をへて東フランクのオットー大帝(ドイツ王) がローマ教皇から皇帝位を授かった国家で、西ローマ帝国の事実上の継承であった。
 皇帝は、帝国の軍総司令官・最高行政長官・元老院議長・最高神祇官などを兼ねる絶対権力者で、領地や部族の長にすぎない王をしのぐ権力をもち、王の中の王と呼ばれた。
 神聖ローマ帝国(第一帝国)の後継を名乗ったのが第一次大戦をひきおこすヴィルヘルム1世(ドイツ皇帝)のドイツ帝国(第二帝国)で、その後、ヒトラーのナチス政権は第三帝国を名乗った。
 明治憲法は、第二帝国のドイツ(プロイセン)帝国憲法をモデルにしている。
 ヨーロッパは、革命の時代となる19世紀まで、ローマ帝国と皇帝の威光のもとにあったのである。

 紀元前のヨーロッパは多神教で、同時代の日本の邪馬台国・大和朝廷と同じような祭祀国家だった。
 ヨーロッパが権力闘争の修羅場となったのは、ローマ教皇(法王)とローマ皇帝という二人の権力者が出現して、権力に正統性をあたえるべき権威の座が空位になったからだった。
 パンテオン宮殿が象徴する多神教を追い出したキリスト教は、神の代理人であるローマ法王庁をとおして権力化され、俗化してゆく。
 権威が不在とあって、皇帝は、権力の正統性を元老院・軍隊・市民の推戴と軍事力にもとめるほかなかった。
 ローマ帝国は民主化された軍事政権だったのである。
 皇帝の地位には、世襲と血統、格式が重んじられたが、ギリシア民主主義の流れを汲む市民集会の決議が必要で、西ローマ帝国の威光を借りた神聖ローマ帝国皇帝も、有力諸侯らの選挙でえらばれるにすぎなかった。
 手続き上の存在だったローマ皇帝に、神の血を受け継ぐ天皇や天命を受ける支那の皇帝のような世俗を超越した権威がそなわらなかったのは当然だった。

 フランス革命によって共和政が成立した後、1804年にナポレオン・ボナパルトが議会の議決と国民投票によって、フランス人の皇帝ナポレオン1世となった。
 このとき、皇帝は、ローマ帝国の後継者としての正統性を失い、皇位を支える基盤は、権威でも、元老院・軍隊・市民の推戴でもなく、ドイツ諸邦を支配下に組み入れるための軍事同盟(ライン同盟)だけとなった。
 ナポレオンの皇帝即位を承認した神聖ローマ皇帝フランツ2世は神聖ローマ皇帝位から退位して、オーストリア皇帝の地位へ下がり、千年近くもつづいた神聖ローマ帝国はここで崩壊する。
 第一次世界大戦後、敗戦国のドイツ帝国・オーストリア=ハンガリー帝国では革命がおきて帝政が倒れた。
 オスマン帝国やロシア帝国でも、革命によって帝政が崩壊して、ヨーロッパには皇帝が1人もいなくなり、ローマ帝国以来の皇帝の歴史は完全に幕を閉じた。

 天皇と皇帝の決定的なちがいは、皇帝が権力者だったのにたいして、天皇が権力から離れた権威だったところにある。
 日本で、権威と権力の二元性が維持されてきた理由は、仏教やキリスト教が入ってきても、神話=神道が日本精神として、ゆるがなかったことだろう。
 それが伝統の力で、合議や多数決、決議や承認などの一過性の決定は、不安定なばかりか、巨大化した国家のなかではなかなかゆきわたらない。
 皇帝の専制政治がおこなわれた東ローマ帝国が1千年の命脈をたもったのにたいして、西ローマ帝国が早々に滅びたのは、元老院の承認や市民集会の決議などの手続きが巨大化した国家全体に浸透する前にゲルマン人の侵略をゆるしたからである。
 江戸三百年の平和は、幕府(権力)が天皇(権威)から預かった土地や民を御宝として扱い、民が天皇を慕い、天皇が民の幸と国家の安泰を祈るという三位一体の国体が成立していたからである。
 国家の三要素(領土・国民・主権)をまもるには、権力や法、民主主義などの手続きではなく、伝統という心に刻まれた永遠の規範が必要なのである。
posted by office YM at 14:32| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする